4月25日(火)にKAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉で開幕する、劇団四季ミュージカル『クレイジー・フォー・ユー』。ガーシュウィンの音楽と華麗なタップが織りなす名作が、劇団四季創立70周年を記念して再演されます。

ブロードウェイ発の、誰もが知る王道ラブ・コメディ。

1992年にブロードウェイで初演された本作は、トニー賞で最優秀作品賞を含めた3部門を受賞しました。劇団四季では翌1993年に初演を迎え、ファンからの絶え間ない支持を受け、上演回数1900回以上となっています。

そんな『クレイジー・フォー・ユー』は、1930年代のアメリカを舞台にした、典型的な”ボーイ・ミーツ・ガール”(男女2人が出会って恋に落ちる物語)といえます。

主人公ボビー・チャイルドは、ニューヨークにある銀行の跡取り息子。仕事も婚約者もそっちのけで踊ることに夢中なボビーは、母親の命令で仕方なく、さびれたデッドロックの町へ向かうことに。差し押さえにやってきた劇場で、彼はポリーという女性に一目惚れしますが、彼女はその劇場のオーナーの一人娘だったのです。

フラれてしまったボビーは、大物プロデューサーのザングラーに変装。本物と思い込んだポリーは、これぞ劇場を復活させるチャンスだと町の人々と共にショーの準備を進め、デッドロックは活気を取り戻します。そんな中、偽物のザングラーはポリーをボビー側に振り向かせようとしますが、ポリーはなんと偽物のザングラーの方に恋してしまいます。そこへ本物のザングラーが現れ…

撮影:荒井 健

ガーシュウィン兄弟による、心躍る音楽。

まず『クレイジー・フォー・ユー』を語るうえで欠かせないのが、ガーシュウィン・メロディです。一度聴いたら耳から離れない、思わず口ずさんでしまう、聴いていると心が弾む。そんな魅力を持つこの作品の楽曲はすべて、ガーシュウィン兄弟の2人によってつくられたものです。

アイラ・ガーシュウィンとジョージ・ガーシュウィンの兄弟は、「ス・ワンダフル」をはじめとする数々の名曲を生み出し、今もなおアメリカ音楽の魂として愛されています。一度この作品を観たら、ガーシュウィン・メロディの虜になってしまうこと間違いなしです。

目に残る斬新な振付、傑出した演出。

『クレイジー・フォー・ユー』といえば、迫力あるタップダンスやキャッチーな振付。振付家のスーザン・ストローマンは、今やブロードウェイの大御所ですが、彼女の名が世に知れ渡るきっかけとなったのがこの作品といえます。トニー賞振付賞やドラマデスク賞などを受賞し一気に脚光を浴びた彼女は、その後『クリスマス・キャロル』『コンタクト』『ブロードウェイと銃弾』といったヒット作を生み出しました。本作では、小道具を存分に生かしたダンスシーンが見所の一つとなっています。

また演出を手掛けたのは、コメディ演出の天才と言われるマイク・オクレントです。彼はそれ以前に『ミー・アンド・マイ・ガール』で成功を収めています。トニー賞13部門にノミネートされ、批評家協会からは最優秀演出家賞を受賞、そして3年半に及ぶロングラン公演を達成しました。『クレイジー・フォー・ユー』でもトニー賞ベスト・ミュージカル賞を受賞しており、この作品の素晴らしさが窺えます。

至高の楽曲、振付、演出、そして笑い。

このように、楽曲、振付、演出のどれをとっても申し分ないのはお分かりいただけたと思います。そのうえで更に、とにかく笑えるのが『クレイジー・フォー・ユー』の魅力です。この作品は、KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉にて2023年4月25日(火)~7月22日(土)まで上演し、8月26日(土)からは全国ツアー公演もはじまります。

近年はコロナ渦などで気持ちが塞ぎ込んでいた方もいらっしゃると思います。そんなモヤモヤを、劇場に行って笑い飛ばしてみてはいかがでしょうか。チケットの詳細は劇団四季オフィシャルウェブサイトをご確認ください。

L

私がこの作品を初めて観たとき、「こんなに笑いっぱなしのミュージカルってあるんだ!」と驚いたのを覚えています。その中でも、希望を捨てず前を向いて懸命に生きる登場人物のパワーや、作品が持つシンプルで明るいメッセージが強く響いてきたのが印象的です。楽しいけれど、楽しいだけではない、『クレイジー・フォー・ユー』が持つ奥深さをぜひ堪能してください。