2022年上演の舞台『わが友ヒットラー』が第30回読売演劇大賞作品賞上半期ベスト5に選出された注目の演劇ユニットCEDAR。7月26日(水)から上演するのは、天安門事件に着想を得て創作された中国人初のノーベル文学賞作家高行健(ガオ・シンジェン)の代表作『逃亡』。客席との距離の近い下北沢 OFF・OFFシアターで繰り広げられる、3名の濃密な人間ドラマに注目です。

第30回読売演劇大賞作品賞上半期ベスト5選出!注目の演劇ユニットCEDARの新作公演『逃亡』

CEDARは2017年に結成された演出家・松森望宏さん、俳優・桧山征翔さん、演出家・石川大輔さんによる演劇ユニット。世界中の隠れた名戯曲にスポットをあて、戯曲が持っている人間ならではの本質や哲学を丁寧に描き出すのが特徴です。2022年には三島由紀夫の晩年の問題作と言われる『わが友ヒットラー』を上演、第30回読売演劇大賞作品賞上半期ベスト5に選出されました。

そんなCEDARの新作公演は、ノーベル文学賞作家の高行健(ガオ・シンジェン)さんの代表作『逃亡』。1989年6月に起こった、中国・北京での天安門事件に着想を得て執筆された作品です。

天安門事件は、民主化を求める学生のデモ隊を、軍隊が武力を行使し鎮圧した凄惨な事件として、世界中を震撼させました。『逃亡』はこれまでに世界15か国24の劇団が上演しており、日本では3度目の上演となります。

高行健さんは今回の上演にあたって、「この劇の生命力がまだ衰えていない証でしょう。この劇が人類の生存の苦境に目をそむけていないからこそ、観客の共鳴を喚起し、深い自省を促すのです。この劇を観に来てくださったみなさんに感謝すると同時に、上演の成功を祈ります」とコメントしています。

死に直面して考える“生きている実感”とは…。アフタートークには多彩なゲストが登壇

『逃亡』の舞台となるのは、とある共産国家。人々に慕われていたある1人の政治家が亡くなり、追悼に若者たちが広場に集まっていました。しかし追悼集会は、徐々に民主化を求める若者たちのデモへと変化していきます。ある夜、デモ鎮圧のために広場を包囲していた軍がデモ隊に向かって発砲。銃弾は若者を貫きました…。

青年と娘は銃弾を逃れ、必死で逃走し、倉庫へと逃げ込みます。そこに自称作家の中年がやってきて、3人は死に直面しながら“生きている実感”について考え求め続けていきます。

登場人物は中年・娘・青年の3人。
作家であり当局から目をつけられている中年役に、和田琢磨さん。近年では『テニスの王子様』『刀剣乱舞』などの2.5次元舞台から『UNDERSTUDY』『首切り王子と愚かな女』などのストレートプレイまで幅広く活躍しています。
11月には、COCOON PRODUCTION 2023『ガラスの動物園』『消えなさいローラ』の世界初二本立て上演への出演が決まっています。

デモ隊で演説をしていた女優志望の娘役に、ミスiD2017で「ファンタジスタさくらだ賞」を受賞し、映画『JKエレジー』で主演を務めた注目の若手女優の希代彩さん。

理想の革命と現実の狭間で葛藤する青年役にCEDARの桧山征翔さん。桧山さんは、CEDARの本公演全てに出演し、第5回公演からはプロデューサーも務めています。近年の主な出演作に、一人芝居『ブリキの太鼓』、舞台『わが友ヒットラー』、舞台『料理昇降機』などがあります。


演出はCEDARの松森望宏さんが務めます。松森さんは2012年英国シェフィールドの国際演劇祭において、三好十郎の『胎内』で最優秀演出家賞を受賞しています。

そして、本公演では、アフタートークに多彩なゲストが登壇するのも魅力。
7月27日(木)19:00公演後には、本作の翻訳を担当している、摂南大学名誉教授の瀬戸宏さんが“『逃亡』の背景”と題して、演出の松森さんと作品について語ります。
7月28日(金)の14:00公演後には『わが友ヒットラー』でヒットラー役を演じた谷佳樹さんが、桧山さんとCEDARの演劇について語る回。

7月28日(金)19:00公演後、29日(土)18:00公演後には出演者3名によるクロストーク。
7月30日(日)13:00公演後には映画監督で演出家の堤幸彦さんと松森さんが、1960年代から70年代の激動の時代について語る回。
聞きたいアフタートークから観劇回を選択するのも面白いですね!

舞台『逃亡』は、7月26日(水)〜7月30日(日)に東京・下北沢 OFF・OFFシアターにて上演です。上演時間は約90分を予定しています。公式HPはこちら

ミワ

本作を上演するにあたってこだわって選んだ劇場だというOFF・OFFシアター。目の前で繰り広げられる濃密なドラマに目が離せません!