2024年3月7日に日本初上演となるブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』。2001年9月11日、同時多発テロが発生したあの日、カナダにある小さな町で起こった実話を元にした希望溢れるミュージカルです。本作の魅力と見どころをご紹介していきます。
実話をもとに描かれた傑作ミュージカル『カム フロム アウェイ』
2013年に初演を迎え、2017年からはブロードウェイで幕を開けたミュージカル『カム フロム アウェイ』(Come From Away)。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロが発生した際、他国からアメリカへと向かっていた航空機38機が緊急着陸を要請され、総勢7000人の乗客がカナダのニューファンドランド島にあるガンダーという小さな町に着陸したという実話を元に描かれたミュージカルです。
脚本・音楽・歌詞は、カナダ出身のアイリーン・サンコフさんとデイヴィット・ヘインさん夫婦。2人はガンダーの町に数週間滞在し、町の人々から直接話を聞きながら作品を作っていったと言います。登場人物の多くは実在のモデルがおり、名前もそのまま使用されています。
演出は『メンフィス』『ダイアナ:ザ・ミュージカル』などで知られるクリストファー・アシュリーさん。100分間ノンストップのミュージカル、12人の出演者が100人近くの役を次々に演じるのに、大きなセット転換や衣装チェンジはなし。役者の演技と音楽だけで魅せていく演出は、多くの観客を魅了しました。音楽は8名編成のバンドが舞台上で演奏し、ケルト民謡や英国諸島色の濃いカントリーミュージックがガンダーの町の魅力を表現しています。
ミュージカル『カム フロム アウェイ』は2017年の第71回トニー賞にて、ミュージカル作品賞・脚本賞・楽曲賞・助演女優賞・照明デザイン賞・演出賞・振付賞の7部門にノミネート。ミュージカル演出賞を受賞しています。ブロードウェイで上演された本作の映像は、日本でもApple TV+で観ることができますよ。
ミュージカル『カム フロム アウェイ』のあらすじ&主要登場人物まとめ
2001年9月11日、ニューヨークで同時多発テロ事件が発生。急遽アメリカの領空が閉鎖され、目的地を失った38機の飛行機と7,000人の乗客・乗員たち(と17匹の動物たち)。行き場のない38機の飛行機は、カナダのニューファンドランド島のガンダー国際空港に降り立ちます。
ガンダーはわずか1万人の小さな町。人口は一夜にして約2倍に。地元のTVの新人記者ジャニスや、動物愛護団体に所属するボニー、小学校で働くビューラ、町長らはそれぞれのやり方で、彼らに食事や寝場所を提供し、人種も出身も異なる人たちを温かく歓迎します。
イギリス人で仕事のためにアメリカに向かっていたニック、アメリカ人女性のダイアン、ロサンゼルスで環境エネルギー会社を経営するゲイカップルのケビン(2人とも同じ名前)、イスラム教徒のアリ、ニューヨークで消防員として働く息子の安否を心配するハンナなど、それぞれの人物が不安を抱きながら、見知らぬ土地での日々を過ごしていきます。
言語や宗教の異なる人々が助け合う姿にグッときながらも、コメディシーンも多々。ボニーは航空機に取り残された動物たちを救うために奮闘し、ニューヨーカーのボブは優しすぎる町の人々に対し、騙されてお金を取られるのでは?と警戒心を見せます。お酒を飲んでいないとやっていられない!と乗客たちが飲んだくれる場面も楽しいシーンです。
そして本作の中で見どころの1つである楽曲が、女性機長のビバリーが歌う「Me and the Sky」。彼女は実在の人物で、1986年にアメリカ人初の女性機長になりました。そして2011年9月11日、パリからダラスへと飛行中に緊急着陸の要請を受け、ガンダーへ。差別を乗り越えて夢を掴んだ機長の仕事への誇りと、飛行機が人の命を奪う手段に使われたことへの痛烈な悲しみを歌った「Me and the Sky」は印象的な楽曲です。
2024年3月に日生劇場にて日本初上演!
そして2024年3月、日生劇場にて『カム フロム アウェイ』は日本初上演を迎えます。日生劇場60周年イヤーの締めくくりとなる本作。キャストには本作に相応しい実力と存在感のある俳優たちが集結しました。
ダイアン&その他:安蘭けいさん
ニック&その他:石川 禅さん
ケビンT&その他:浦井健治さん
ボブ&その他:加藤和樹さん
ジャニス&その他:咲妃みゆさん
ボニー&その他、ビバリー&その他カバー:シルビア・グラブさん
ケビンJ&その他:田代万里生さん
クロード&その他:橋本さとしさん
ビバリー&その他:濱田めぐみさん
ハンナ&その他:森 公美子さん
ビューラ&その他:柚希礼音さん
オズ&その他:吉原光夫さん
スタンバイ:上條 駿さん、栗山絵美さん、湊 陽奈さん、安福 毅さん
3月7日(木)から29日(金)まで日生劇場にて上演後、4月4日(木)から14日(日)まで大阪・SkyシアターMBS、4月19日(金)から21日(日)まで愛知・知県芸術劇場 大ホール、4月26日(金)から28日(日)まで福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホールにて上演が行われます。チケットの詳細は公式HPをご確認ください。
人々は分断をすることも、人種や宗教を超えて繋がることもできるのだと教えてくれる作品。コロナ禍に初めてApple TV+で観た時は、人の温かさを感じて涙が止まりませんでした。今の時代にも大きなメッセージを投げかけてくれると思います。美しい音楽の生演奏も楽しみです!