子供の頃に憧れ、大人になってから諦めてしまった夢は、誰しもあるものです。そんな昔の夢が、人生の最後を目前にして心の中に再び宿ったら…。韓国発のミュージカル『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』は、少年時代に抱いたバレエの夢を叶えようとする老人と、一流バレリーノを目指す若者の深い絆を描いた作品です。2024年5月18日(土)より、日本初演版が開幕。年齢差のある2人の主役を、三浦宏規さんと川平慈英さんが演じます。

原作は、世界的に人気の韓国漫画

原作『ナビレラ』は、縦読み漫画とも呼ばれるWEBTOONの大ヒット作です。2016年に韓国独自のポータルサイト「Daum」で連載され、その人気は海外にも及び、アメリカで最も権威のある漫画賞、アイズナー賞にノミネート。日本では「ピッコマ」で日本語版を読むことができ、全5冊の単行本コミックスも出版されています。

ⓒ HUN,JIMMY/SUPERCOMIX STUDIO Corp.

主人公は、70歳のシム・ドクチュルと23歳のイ・チェロク。
家族と仕事一筋で生きてきた郵便局員のドクチュルは、同年代の友人の死をきっかけに、定年後は人生の最後にこれまで諦めてきた夢を叶えることを決意します。

その夢とは、幼い頃に感動したバレエに挑戦すること。偶然ダンススタジオで見かけた青年のバレエに心を奪われたドクチュルは、そのスタジオを訪ねてバレエを習いたいと伝えます。

ドクチュルが見た青年は、19歳で才能を開花させた遅咲きのダンサー、チェロクでした。バレエ団の団長はドクチュルの熱意に負け、チェロクにドクチュルの指導を、ドクチュルにチェロクのマネージャーをするように言います。

スランプ状態で家族とも疎遠なチェロクは、最初はドクチュルに反発するものの、次第にバレエを純粋に楽しむドクチュルに感化され、人生経験豊富な彼の言葉に心を開き…。

「ナビ」は、韓国語で「蝶」のこと。『ナビレラ』は「蝶のように羽ばたく」という意味で、バレエの美しい舞を蝶に見立て、ドクチュルとチェロクがバレエという同じ夢を追いかけて羽ばたく様子を描いています。

韓国では、2019年に 『ダーウィン・ヤング 悪の起源』をはじめとした小説・漫画原作のミュージカルに定評があるソウル芸術団がミュージカル化。待望の再演が実施された2021年には、ドラマ『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』が放送され、現在はNetflixにてドラマ全12話が配信されています。

ドラマ版はドクチュル役を韓国ドラマのレジェンド俳優パク・イナン、チェロクを数多くのNetflixドラマに主演し、「Netflixの息子」と親しまれている若手俳優ソン・ガンが演じており、韓ドラファンの間でも人気の高い作品です。

原作そのもの?!三浦宏規と川平慈英の初共演に注目

日本版『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』の台本と演出を手掛けるのは劇団KAKUTAを旗揚げし、2018年に舞台『荒れ野』でリアルな人間ドラマを描き、第70回読売文学賞を受賞した桑原裕子さん。

そしてイ・チェロク役は三浦宏規さん、シム・ドクチュル役は川平慈英さんです。

三浦宏規さんといえば舞台『キングダム』の信、ミュージカル『のだめカンタービレ』の千秋真一など、最近では漫画・映画原作の舞台作品での好演が記憶に新しいですが、実は5歳からクラシックバレエを習っているバレエの実力者でもあります。

数々のコンクールに入賞し、ハクを演じた舞台『千と千尋の神隠し』では、オーディションで演出のジョン・ケアードからダンスの振り付けを自ら考えるように言われたそう。一流のバレリーノを目指すチェロクに、三浦さんはまさに適役なのではないでしょうか?バレエシーンに期待が高まりますね。

川平慈英さんは、ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』の茶目っ気と愛に溢れたエドワード役で、第45回菊田一夫演劇賞を受賞しています。川平さんが演じるドクチュルのハラボジ(韓国語でおじいちゃんの意)ならではの優しい言葉と思いやりは、本作の魅力の一つ。今回の舞台でも、川平さんのドクチュルが私たち観客の心に響く言葉や歌を届けてくれることでしょう。

三浦さんと川平さんが共演するのは、今回が初めて。三浦さんは『ビッグ・フィッシュ』を見て川平さんに憧れていたそうで、お二人の初共演にも注目したいところです。

ミュージカル『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』は、2024年5月18日(土)から6月8日(土)まで東京・日比谷シアタークリエにて上演。一般チケットの発売は、各社プレイガイドにて3月23日(土)からです。チケットの詳細は作品公式HPよりご確認いただけます。

さきこ

作品ポスターには、蝶のように軽やかに舞う三浦さんのチェロクとその姿に少年のようなキラキラとした眼差しを向ける川平さんのドクチュルが写っています。 このビジュアルを見ただけでも、作品が持つ温かさが胸にジーンと伝わってきました。 新年度が明けてからの開幕ですので、新しいことを始める人、始めようと思っている人の背中を押してくれるような作品になるかもしれませんね。