イギリス・ルネサンス演劇を代表する数多くの作品を手掛けた劇作家、ウィリアム・シェイクスピア。知らない人はいないほど有名な人物ですよね。そんな彼の代表的喜劇『夏の夜の夢』が、2024年12月に、「彩の国さいたま芸術劇場」開館30周年を記念して、日本で上演されます。若い観客から大人まで、幅広い世代に気軽にシェイクスピアを楽しんでもらいたい、という思いで始まった本企画では、18歳以下の子供(対象公演のみ・各10名)の無料招待も!今回は、『夏の夜の夢』のあらすじ、多彩なキャスト陣について、たっぷりご紹介します。

森で繰り広げられる一夜の恋の大騒動

1564年、ウィリアム・シェイクスピアは、イングランド中部のストラトフォード=アポン=エイヴォンで生まれました。21歳前後で、エリザベス朝演劇の繁栄に伴って劇場や劇団が次々と立ち上がるロンドンへ進出し、俳優として活動するうち、脚本を書くようになります。その後、28歳の頃には新進の劇作家として活躍していたとされています。

シェイクスピアは四大悲劇として知られる『ハムレット』『マクベス』『オセロ』『リア王』や、『ロミオとジュリエット』『ヴェニスの商人』『ジュリアス・シーザー』など多くの作品を残しました。今回上演される『夏の夜の夢』も、そうした傑作の1つです。

明確な記録は残っていないものの、『夏の夜の夢』は、1594年から1596年の間頃に執筆されたと考えられているようです(四折版での出版は1600年)。これは、シェイクスピアが『ロミオとジュリエット』を完成させ、『ヴェニスの商人』を構想中だった頃で、物事や風景、感情などを美しく繊細に描き出すことに重きを置いていた時期とされています。

作品のあらすじは次の通りです。

公爵シーシュースとアマゾンの女王ヒポリタの婚礼を4日後に控えたアテネ。ハーミアは、父親イージーアスの決めた結婚相手ディミートリアスではなく、ライサンダーとの駆け落ちを決心し、ともに森へ向かう。ハーミアの友人ヘレナは、好意を寄せるディミートリアスに駆け落ちのことを告げ口し、2人でハーミアを追って森の中へ。

森では、妖精の王オーベロンと女王タイテーニアが小姓(身分の高い人に仕える少年)をめぐって喧嘩の最中。オーベロンはいたずらな妖精パックを使い、タイテーニアに一泡吹かせることを思いつく。

森の別の場所では、公爵の婚礼に向けて、職人たちが芝居の稽古をしていたものの、パックのいたずらで職人ボトムはロバの頭に変わってしまう。そこに「恋の三色スミレ」の汁をパックに塗られたタイテーニアが現われ、ロバ頭のボトムに一目惚れ。さらにパックの手違いからディミートリアスとライサンダーの両方に「恋の三色スミレ」の汁が塗られ、居合わせたヘレナはふたりから求愛されることに!

果たしてアテネの森で繰り広げられる一夜の恋の大騒動の行く末は?

シェイクスピア作品と聞くと「古典作品はとっつきにくそう…」と思われるかもしれません。でも大丈夫。『夏の夜の夢』は恋をめぐる喜劇なので、シェイクスピア初心者の方でも楽しめる作品となっています!

日本を代表するシェイクスピア俳優・吉田鋼太郎が演出を担当

今回の『夏の夜の夢』は注目ポイントが様々あります。その1つが、舞台やドラマ、映画に引っ張りだこの大人気俳優、吉田鋼太郎さんが演出・上演台本を担当されること。実は吉田さん、シェイクスピアと深い縁をお持ちの方なんですよ。

吉田さんは、高校在学中に橋爪功さんらが出演していた劇団雲のシェイクスピア喜劇『十二夜』を見て役者を志し、大学在学中にはシェイクスピア研究会公演『十二夜』で初舞台を踏まれたそうです。その経験から、シェイクスピアやギリシア悲劇など、海外古典作品に要求される難易度の高い演技ができる役者として重宝され、蜷川幸雄さんが手掛けた作品の常連となりました。

2016年には、今回の会場である彩の国さいたま芸術劇場でシェイクスピア全37作を上演する企画、「彩の国シェイクスピア・シリーズ」の2代目芸術監督に就任。2024年に新シリーズ【彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd】を始動させ、第一作目として『ハムレット』を上演しました。

吉田さんは『夏の夜の夢』について、このようにコメントされています。

「『夏の夜の夢』は、迸(ほとばし)る生命力と抑制不能な若いエネルギーに満ちた芝居であり、その若いエネルギーが人知の及ばない世界の住人達の介入によって、とんでもない混乱と争いを引き起こしてしまう事を美しく饒舌な言葉で書き綴ったシェイクスピア初期の傑作喜劇です。今まさに迸るエネルギーと抑制不能な生命力の真っ只中にいる若い観客の皆様とこの『夏の夜の夢』を共に楽しめれば幸いです。どうぞご期待下さい!」

日本を代表するシェイクスピア俳優がタクトを振る『夏の夜の夢』、一体どんな作品に仕上がるのでしょうか?

多彩な顔触れが揃った祝祭的喜劇

最後に、『夏の夜の夢』に出演されるキャストの方々をご紹介したいと思います。

まず、妖精の王オーベロン、アテネの公爵シーシュース役を鍛治直人さん。妖精の女王タイテーニア、アマゾンの女王ヒポリ役を太田緑ロランスさんが演じられます。

また、「恋の三色スミレ」の魔法で大騒動を起こすディミートリアス役に窪塚俊介さん。ハーミア役に美山加恋さん、ライサンダー役に深澤嵐さん、ヘレナ役に竹内カンナさん、妖精のいたずらでロバの頭に変えられる職人ボトム役に塚本幸男さんと、多彩な顔触れが揃いました!

彩の国さいたま芸術劇場の開館30周年を飾る祝祭的喜劇『夏の夜の夢』は12月10日(火)から彩の国さいたま芸術劇場 大ホールにて上演。

12/10(火)14:00開演、12/14(土)13:00開演、12/15(日)13:00開演の3公演で、小学生以上 18歳以下の方の無料招待が行われます。各回10名限定で、同伴する保護者はS席一般価格の半額の3,500円に(子供1名につき同伴者1名まで)。10月31日まで応募が可能です。詳細は公式HPをご確認ください。

さよ

私はシェイクスピア初心者なのですが、作品について調べるうち、古典と呼ばれるものに気軽に飛び込めるのが舞台の魅力だなと感じるようになりました。ぜひ皆さんも一緒にシェイクスピアの門を叩きませんか?