オーケストラが生演奏をするミュージカルやオペラで、指揮者と楽団員がどこにいるのか気になったことはありませんか?今回は、オーケストラの演奏場所である「オーケストラピット」について詳しく解説します。
「オーケストラピット」とは?どこにあるの?
ミュージカルやオペラにおいて、音楽は欠かせないもの。役者の歌声はもちろん、オーケストラやバンドによる生演奏を楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。
しかし、クラシックコンサートのようにオーケストラを舞台上に配置すると、役者の動けるスペースが制限されてしまいます。観客にとっても、オーケストラが気になって肝心の物語に集中できなくなるかもしれませんよね。
そこで、オーケストラやバンドが演奏するために設けられるのが「オーケストラピット」です。
オーケストラピットとは、舞台と客席の間にあるくぼみのようなスペースのこと。「オケピ」と略され、「オーケストラ・ボックス」とも呼ばれます。
オケピの位置は客席よりも低く、実際にオーケストラが入っても観客からは見えにくいように設計されています。さらに、役者の声がオーケストラの大音量に分断されないようにする目的もあるんです。
劇場によっては普段客席として使っている座席を取り外し、拡張した床面を下げてオケピを作ります。オケピ設営時には、オーケストラの編成や規模、指揮者の希望に応じて、下げる深さを調整するんだそう。
また、このように床が昇降する仕様をオーケストラ迫り(オケ迫り)といい、舞台面まで床を上げれば「前舞台」として使えるようになります。
ちなみに、オケピは舞台の前方にある場合が多いのですが、例外として知られるのがドイツにあるバイロイト祝祭劇場。ワーグナーが自身の作品の上演を目的に建てた同劇場では、オケピが舞台の下に掘り入れられています。観客に音楽に没入してほしい、というワーグナーのこだわりを実現した構造です。
オケピがないとき、オーケストラはどこにいる?
日本でオケピを持つ劇場といえば、帝国劇場や梅田芸術劇場などが代表的です。また、宝塚歌劇団の専用劇場である宝塚大劇場と東京宝塚劇場には、舞台と銀橋の間にオケピが常設されています。
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とはいえ、全ての劇場にオケピがあるとは限らないわけで。筆者が「オケピがない場合はどうするんだろう?」と疑問に感じていたところ、ミュージカル俳優の石井一孝さんがYouTubeチャンネルにて解説動画を投稿されていました。
こちらの動画によると、オケピがない劇場では、舞台の一番後ろの幕裏で演奏しているケースもよく見られるそうです。また、オーケストラが上手や下手の袖、あるいは2階のセットの奥にいるケースもあるんだとか。
限られたスペースを上手く使い、生演奏を届けようとする舞台裏での工夫が、観客の感動につながっているんですね。
今回、筆者が視聴した動画はこちら。数々のミュージカル作品に出演されている石井一孝さんが、リアルな経験をもとにお話されているので、ぜひご覧ください。
オーケストラがオケピで演奏してくれるおかげで、音楽と演技のどちらも存分に楽しめるんだなと、改めてありがたみを感じました。カーテンコールでは、オケピに向かって盛大に拍手を送りましょう!