2009年にブロードウェイで初演、ドラマ・デスク・アワードでミュージカル部門作品賞を含む4つの賞にノミネートされたミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』。日本では3度目の上演となり、これまで田代万里生さん×平方元基さん、太田基裕さん×牧島 輝さんによって演じられてきました。そして2024年11月、太田基裕さん×牧島 輝さんペア、山崎大輝さん×小野塚勇人さんペアで待望の再々演を迎えます。本作に新たに加わる小野塚勇人さんに本作の魅力を伺いました。

やる側からすると大変だなと思いました(笑)

−過去の映像を観て、印象はいかがでしたか。
「素敵なストーリーで、音楽も1曲1曲が素晴らしくて、構成も良いなと思ったのですが、やる側からすると大変だなと思いました(笑)」

−どのような部分が大変そうだと感じられましたか?
「2人芝居というのもそうですし、海外の戯曲なので、それを日本語で歌う難しさがあるなと。今は歌稽古が始まっている段階ですが、どうしても翻訳して日本語のイントネーションとは異なる部分があるので、そこに慣れて体に入れ込むまでは大変だと思います」

−物語の魅力についてはいかがでしょうか。
「一見真面目に見えるトーマスと自由なアルヴィン、対照的な2人だからこそ引き寄せ合い、親友という関係になると思うのですが、トーマスは、本当はアルヴィンの自由さが羨ましいんだと思うんです。トーマスはアルヴィンに“普通にいろ”と言いますが、それは自分に言い聞かせているように思えて。アルヴィンに嫉妬している人間味のある部分と、核心的な部分が見えないアルヴィンに踊らされるトーマスというのが面白いなと感じました」

−高橋正徳さんの演出についてはどのような印象を持たれましたか?
「2人芝居で現在と過去を行き来する作品なので、現在と過去のスイッチングを同じようにしていたら飽きると思うんです。でも飽きずに観ていられたのは、照明や動きなど細かいこだわりがあるからだと思います。また楽曲数が多い中で、曲が多いなと感じることがなかったのは、会話の中で聞けたということだと思うので、流動的に物語が動いているなという印象でした」

自分にないものを無理やり演じようとしない

−トーマスとご自身との共通点や、共感できる部分はありますか?
「トーマスは“天才に憧れた凡人”という感じがして、それは俺の中にも共通点があるなと思いますね。芸術の世界にいると、アーティストで歌が上手くて、絵も出来て、ファッションセンスもあって…というような感性の豊かな天才に出会うことがあります。そういう人を見ると芸能人っぽくて良いなぁと思うけれど、自分はなんでも勉強してコツコツやってきたタイプなので、そこはトーマスに共感できますね。トーマスはベストセラーを出した作家ですが、それは書き続けたからこそ掴んだ功績だし、アルヴィンという存在がなければ物語は生まれなかった。自分の経験からしか出てこない部分が、俺と似ていると思っています」

−役作りを行う時、小野塚さんもご自身の経験から作っていくことが多いのでしょうか。
「そうですね。こういう部分が共通点あるな、と思ったところから役を理解して、そこを広げていくことが多いです」

−小野塚さんはミュージカル『MEAN GIRLS』でのアーロン役から『この世界の片隅に』の水原哲役まで、幅広い役柄を自然体に演じているように感じます。役作りをする上で大事にされていることはありますか?
「自分にないものを無理やり演じようとしない、ということは意識しています。例えば『MEAN GIRLS』のアーロン役はクラス1のモテ男ですが、イケイケなキラキラ感というのは持って生まれたものだから、それを無理に作ろうとするのは難しいなと思ったんです。だからモテる要素を分析しました。アフリカで生まれ育った主人公ケイディが都会に染まる前の姿を良いと思ったわけだから、内面を見ていて、アーロンの前ではみんなが自然体でいられるから女の子が好きになるんだろうな、とか。だからなるべく女の子たちを引き立てるような役回りを心がけていました。一貫しているのは、嘘をつかない、無理をしないということです」

−トーマスはベストセラー作家で、本作でもあらゆる場面で本がモチーフとなっていますが、小野塚さんは幼少期によく読んでいた本はありますか?
「ラモス瑠偉さんのサッカー本ですかね(笑)。それを見てリフティングの練習をしていたので。ずっとアウトドア派で、学生時代はずっと校庭で遊んでいたタイプなので、図書館で本を読んだことがないんです(笑)。そこはトーマスとは違う部分ですね。台本もいつも読むのに時間がかかって…だからこそ、根本的なトーマスという人物像を捕まえてからセリフを覚えるようにしています」

−どのようにして人物像を捕まえるのでしょうか。
「台本を読んだ時に、この人物が一番大事に思っていることは何だろう、何が原動力で動いているんだろう、ということを考えますね。トーマスで言えば、アルヴィンの自由さが羨ましい反面、彼に“普通になれ”というのは、一緒にいる時に恥ずかしいという小心者っぽい人間らしい部分もあるんだと思うんです。
きっと周囲からすると懐に入りにくい人物だけど、それをぶち壊してくるのがアルヴィンで、だからこそ腹立つ部分もあるし、特別な関係性になってもいくんじゃないかな、とか。内向的ではあるけれど、自分の作品を知られたいという人間らしい承認欲求もあって、そういう根本的な部分はきっと自分と似ているんだろうな、とか。そういうことを今考えていますね」

−トーマスがとても愛らしく見えてきました。最後にお客様へのメッセージをお願いします。
「3回目の上演で、自分たちは初めての出演となるので、芯は外れずに、自分たちがやる個性を出せると良いなと思っています。作品のファンの方にも、ぜひ山崎大輝さんと僕のペアを観にきて頂きたいです」

宣伝美術:野寺尚子、宣伝写真:金井尭子、宣伝衣裳:ゴウダアツコ、宣伝ヘアメイク:エムドルフィン

ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』は11月5日(火)から11月15日(金)まで東京・よみうり大手町ホール、11月22日(金)から23日(土)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演されます。公式HPはこちら

Yurika

いつも役が自然に馴染んでいるように感じられる小野塚さん。「嘘をつかない、無理をしない」からこそ、私たち観客も自然と小野塚さんが演じる役柄に共感できるのかもしれません。