スペインを代表する劇作家フェデリコ・ガルシーア・ロルカ。ロルカが実際の事件をもとに執筆し、ロルカの三大悲劇のひとつと呼ばれる本作を、2023年に旭日小綬章を受章した日本演劇界の巨匠・栗山民也さんが演出。主演は舞台のみならずテレビドラマやバラエティ等、ジャンルの垣根を超えて活躍されている中山優馬さん。抑えきれない熱情と、愛への衝動を秘めた舞台『血の婚礼』をご紹介します。
世界中で愛されるスペインを代表する劇作家フェデリコ・ガルシーア・ロルカ
『ドン・キホーテ』を生んだセルバンテスと並び、世界で最も愛読されているスペイン人作家のひとりといわれている、劇作家フェデリコ・ガルシーア・ロルカ。
そんな彼が1933年に初演したのが『血の婚礼』です。1928年にロルカさんが新聞で読んだ、アンダルシア州の県・アルメリア県で起きた殺人事件をもとに書いたといわれています。
ロルカの代表作であり、『イェルマ』や『ベルナルダ・アルバの家』とまとめて、「ロルカの三大悲劇」と呼ばれています。
花嫁とかつての恋人が婚礼の日に……。入り乱れる愛が起こす悲劇
本作の舞台も、太陽が照りつける灼熱の大地スペイン。その最南部にあり、フラメンコの本場としても知られるアンダルシア。
母親と二人暮らしの花婿は、働き者の花嫁との婚礼を間近に控えていました。ただ、花婿を愛する母は二人を歓迎できずにいます。なぜなら花嫁は過去に、フェリクス一族のレオナルドと恋人関係だったという噂がありました。
遡ること20年前、花婿の父と兄はフェリクス一族に殺されており、花婿の母は暴力への憎しみを全身に宿し続けながら、女手ひとつで残った息子を育て上げました。そのため、二人の婚礼にいまも心が晴れずにいます。
一方、レオナルドは既に結婚しており、妻は花嫁の従姉妹。二人の間には子どもがいました。それにも関わらず、レオナルドは今もなお、花嫁への熱情を抱き続けているといいます。
ついに迎えた婚礼の朝。レオナルドは花嫁を尋ね、燃え続ける思いを告げます。花嫁は動揺を隠して婚礼の一日を過ごしますが、祝宴の真っ最中、レオナルドとともに姿を消してしまいます。婚礼の宴は大騒ぎになり、花婿は花嫁とレオナルドを追いかけますが……。
ロルカ屈指の傑作を栗山民也演出で舞台化
本作の演出を手掛けるのは、今年も舞台『夢の泪』『オーランド』『母と暮せば』、ミュージカル『ファンレター』と多くの演出を担当。日本の舞台演出家の第一人者である、栗山民也さん。
そして花嫁のかつての恋人・レオナルドを演じるのは、舞台『大誘拐~四人で大スペクタクル~』『星降る夜に出掛けよう』、栗山さんの作品では舞台『ゲルニカ』に出演し、テレビドラマ、バラエティなどジャンルを超えて活躍中。来年も『いただきます!~歌舞伎町伝説~』で主演が決まっている、中山優馬さん。
共演には、花婿役には、今期ドラマである『嘘解きレトリック』や『あのクズを殴ってやりたいんだ』にも出演し、8月に上演された舞台『彼方からのうた』では主人公を演じた、宮崎秋人さん。
レオナルドと花婿の間で揺れる花嫁役には、映画「世界の終わりから」では主演を務め、NHKドラマ『宙わたる教室』でも好演し、日々存在感を強めている伊東蒼さん。
レオナルドの妻には、主演映画「茶飲友達」で高崎映画祭・最優秀主演俳優賞を受賞。舞台も『デカローグ』『Come Blow Your Horn~ボクの独立宣言~』と続けて出演し、活動の幅を広げる岡本玲さん。
花婿の父役は、『フェードル』『ロスメルスホルム』『オーランド』など栗山演出作品に欠かせない存在である谷田歩さんが出演。
花婿の母には、こまつ座『夢の泪』をはじめとする栗山演出作品も多く出演し、来年には、舞台『きたやじ オン・ザ・ロード〜いざ、出⽴!!篇〜』も決まっている、秋山菜津子さん。
東京公演は、水道橋にあるIMM THEATERにて、2024年12月7日(土)〜12月18日(水) まで。兵庫公演は、西宮北口にある兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで、2024年12月28日(土)・12月29日(日) にて上演されます。公式HPはこちら
舞台になっている「アンダルシア」はよく楽曲でも見かける地域なので、筆者的に情熱的な愛のモチーフになっている印象があります。また実際の事件をもとにしていると聞くと、なかなかリアリティを感じますね……。公表されている栗山さんのコメントでは実際のアンダルシアを訪れた際のことが書かれていますので、ぜひ観劇前に一読してみては。