新国立劇場の「こつこつプロジェクト」から今までにない画期的なギリシア悲劇が誕生します。『オイディプス王』『コロノスのオイディプス』『アンティゴネ』3つのギリシア悲劇を再構成し、「一つの国が没落していく姿」を描きます。
1年間を通してより豊かに作品を育てていく「こつこつプロジェクト」から『テーバイ』を上演
新国立劇場で演劇芸術監督を務める小川絵理子さんの「作り手が通常の一か月の稽古ではできないことを試し、作り、壊して、また作る場にしたい。」という意を受け、1年間を通してより豊かに作品を育てていく「こつこつプロジェクト」。
3〜4か月ごとに試演を実施し、その都度、演出家と芸術監督、制作スタッフが協議を重ね、上演作品がどの方向に育っていくのか、またその方向性が妥当なのか、そしてその先の展望にどのような可能性が待っているのかを見極めていきます。
時間に追われない稽古のなかで、作り手の全員が問題意識を共有し、作品への理解を深めることで、舞台芸術の奥深い豊かさを一人でも多くの観客の方々に伝えられる公演となることを目標とします。
2021/2022シーズンには、西沢栄治さん演出の『あーぶくたった、にいたった』が上演されました。
今回、2024/2025シーズンの演劇公演として船岩祐太さんが構成、上演台本、演出を進めた『テーバイ』を上演します。
古典戯曲を原典とした作品を中心に発表する演劇集団 砂地の主宰の船岩さん。主な作品に演劇集団 砂地『Disk』(世田谷ネクストジェネレーション)『アトレウス』、『楡の木陰の欲望』『胎内』などがあります。
古典と現代社会との接点を見つめ、「国家と個人」を巡る人間ドラマへと進化
ソポクレスは、アイスキュロス、エウリピデスと並ぶ、古代ギリシアの三大悲劇詩人の一人。
生涯で120編以上もの戯曲を創作したと言われていますが、完全な形で残っているのは『アイアス』『アンティゴネ』『トラキスの女たち』『オイディプス王』『エレクトラ』『ピロクテテス』『コロノスのオイディプス』の7作品のみです。
船岩さんは、「こつこつプロジェクト」の中で、同じ時系列の神話をモチーフとしながらも独立した『オイディプス』『コロノスのオイディプス』『アンティゴネ』の3作品を、一つの戯曲として再構成し、現代における等身大の対話劇として創り上げました。
知らないのうちに近親相姦と父親の殺害に手を染めたテーバイの王オイディプスの物語『オイディプス王』、テーバイを追放され放浪の途にあるオイディプスの神々との和解とその生の終幕を描いた『コロノスのオイディプス』、そしてオイディプスの娘であるアンティゴネが兄弟の埋葬をめぐり、テーバイの王・クレオンと激しく対立する『アンティゴネ』。
『テーバイ』では古典と現代社会との接点を見つめ、単なるギリシア悲劇三作品のダイジェストではなく、3作に共通して登場するクレオンにフォーカスすることで「国家と個人」を巡る人間ドラマへと進化させました。
3作の作中では一介の脇役に過ぎなかったクレオンが、なぜ王座に座り、国を亡ぼすことになったのか…。法と平和を理想に掲げる統治者が、恐怖と防衛心にさいなまれるさまを描きだします。
<あらすじ>
テーバイの王オイディプスは国を災いから救うべく、后イオカステの弟クレオンに頼り「先王ライオスを殺害した犯人を追放すること」という神託を得る。しかし、そこで明かされていく真実は、オイディプス自身がライオス王を殺した張本人であること、そして実の母親とは知らずにイオカステを后とし、子をもうけているという恐ろしい運命であった。絶望のなかでオイディプスは自らの目を突いて盲目となり、放浪の旅に出る。
オイディプス追放後、クレオンが統治するテーバイではオイディプスの息子であるエテオクレスとポリュネイケスが王権をめぐり対立、戦いへと発展してしまう。さらにポリュネイケスの埋葬をめぐりオイディプスの娘アンティゴネとクレオンは激しく対立。法と平和を司る統治者としてクレオンは厳しい決断を迫られる…。
出演者には、植本純米さん、加藤理恵さん、今井朋彦さん、久保酎吉さん、池田有希子さん、木戸邑弥さん、高川裕也さん、藤波瞬平さん、國松 卓さん、小山あずささんが名を連ねました。
令和6年度(第79回)文化庁芸術祭主催公演 新国立劇場 2024/2025シーズン 演劇『テーバイ』は、11月7日(木)~11月24日(日)に東京・新国立劇場 小劇場にて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。
ストーリーは知っているけれど、なかなか観ることにハードルが高く感じてしまうギリシャ悲劇ですが、「現代の等身大の会話劇」になることで触れてみたい気持ちがとても増します!