松尾スズキさんの小説『クワイエットルームにようこそ』が、原作者自ら作・演出を手掛ける形でミュージカル化。『クワイエットルームにようこそ The Musical』として、2026年1月より東京と京都、岡山で上演されます。

小説から映画、そしてついにミュージカルに!

『クワイエットルームにようこそ』は、2005年に出版された松尾スズキさんによる小説です。精神病院の閉鎖病棟を舞台に、主人公をはじめ、さまざまな事情を抱える入院患者たちが織りなす人間ドラマをリアルに描き、2006年の第134回芥川賞にノミネート。翌年には松尾さん自身が脚本と監督を務めて映画化し、大きな話題となりました。

シビアなテーマを取り上げる一方で喜劇とファンタジーの要素も持ち合わせた物語であることから、「いつかミュージカルに!」と長い時間をかけて構想を温めてきたという松尾さん。その念願が叶い、2026年に新作ミュージカル『クワイエットルームにようこそ The Musical』が開幕します。ちなみに、メインビジュアルで主人公が履いている銀の靴は、原作小説でたびたび言及される『オズの魔法使い』に関する要素のひとつ。ドロシーは冒険の末にオズの国から自分の家へと帰りましたが、はたして本作の登場人物たちはどんな道を選ぶのでしょうか。

<あらすじ>
バツイチで28歳のフリーライター・佐倉明日香(咲妃みゆ)は、パートナーでバラエティ番組の放送作家・焼畑鉄雄(松下優也)と同居。
売れっ子ライターとして大物芸人・墨田(皆川猿時)への取材や、原稿の締切に追われ、ストレスフルな日常に飲み込まれていく。
ある日、目覚めると見知らぬ白い部屋にいた。
そこは「クワイエットルーム」と呼ばれる、女子専用の精神病院の閉鎖病棟。
ストレスの捌け口として大量摂取した睡眠薬が原因で意識を失い、オーバードーズをした自殺志願者とされてしまったのだ。
突如として放り込まれた異質な環境に戸惑いながら、厳格な看護師・江口(りょう)や、新人看護師の山岸(桜井玲香)、入院初日に出会った少女・ミキ(昆 夏美)、元ぽっちゃり専門デリヘル嬢の久米(皆川猿時)、元AV女優の西野(秋山菜津子)ら個性的な患者達と接し、次第に閉鎖病棟に馴染んでいく。
同時に日常から離れた明日香は、自身とその人生、鉄雄との関係も見つめ直し始める。
退院に向けて、奇妙な仲間たちと過ごす14日間が始まった。

多才なクリエイターたちでミュージカル化

作・演出を手掛ける松尾スズキさんは、作家や演出家、俳優、映画監督など多彩な顔を持つ人物。主宰する劇団「大人計画」では数々の作品で作・演出から出演まで担当し、1996年の舞台『ファンキー!~宇宙は見える所までしかない〜』で第41回岸田國士戯曲賞を受賞しました。また、2008年の映画『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』の脚本により第31回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を獲得。さらに、2019年には「東京成人演劇部」を立ち上げ、2人芝居『命、ギガ長ス』で第71回読売文学賞戯曲・シナリオ賞に輝きました。近年では、2020年にBunkamura シアターコクーン芸術監督、2023年に京都芸術大学舞台芸術研究センター教授に就任し、2024年4月より「コクーン アクターズ スタジオ」の主任を務めるなど、舞台芸術の発展にも注力。2025年のミュージカル『アンサンブルデイズ―彼らにも名前はある―』にて作・音楽を担った経験を糧とし、今回のミュージカル化に挑みます。

音楽を担当するのは、日本の音楽シーンをけん引する作曲家の宮川彬良さんです。これまで数多くのミュージカル・舞台作品で音楽に携わり、2021年の祝祭音楽劇『天保十二年のシェイクスピア』では第28回読売演劇大賞の優秀スタッフ賞を受賞。ほかにもコンサートの主催や映像作品の楽曲制作など、幅広く音楽活動を続けています。

そして、振付担当としてダンスカンパニー「CHAiroiPLIN(チャイロイプリン)」を率いるスズキ拓朗さんが参加。台詞や歌、オノマトペをふんだんに取り入れながらダンスと演劇の新しい可能性を模索し、大人から子どもまで楽しめる新しい舞台の実現を目指しています。2024年に上演したおどるシェイクスピアシリーズ第4弾の『PLAY!!!!!〜夏の夜の夢〜』では、第75回芸術選奨の舞踊部門で文部科学大臣新人賞を受賞しました。

ミュージカルの要といえる音楽とダンスが原作小説の世界観をどのように彩るのか、実際に目と耳で確かめたくなります。

実力と個性を併せ持つ俳優陣が勢ぞろい

閉鎖病棟に入院する佐倉明日香を演じるのは、元宝塚歌劇団雪組のトップ娘役である咲妃みゆさん。退団後はミュージカルや舞台を中心に映像作品にも出演し、活躍の場を広げています。ミュージカル『NINE』『ゴースト』での演技に対して第46回菊田一夫演劇大賞を、また初のストレートプレイに挑戦した『少女都市からの呼び声』で第31回読売演劇大賞の優秀女優賞を受賞。かねてより松尾作品への参加を熱望していたという咲妃さんが自らの役と向き合い、その人物像をどう表現するのか目が離せません。

主人公のパートナー・焼畑鉄雄役は、歌手であり俳優としても躍進する松下優也さん。とりわけ近年はミュージカルや舞台で主要な役を演じ、注目を集めています。2025年はミュージカル『ケイン&アベル』『キンキーブーツ』『マリー・キュリー』といった話題作に出演し、存在感を発揮しました。

明日香が病院で出会うミステリアスな少女のミキ役は、卓越した歌唱力を武器に大作への出演が相次ぐ昆 夏美さんです。2026年4月には話題のミュージカル『奇跡を呼ぶ男』に出演。咲妃さんとは2023年のミュージカル『マチルダ』でダブルキャストを務めた間柄で、今回初めて舞台上での共演が実現します。

同じく入院患者の1人で元AV女優である西野役を、秋山菜津子さんが演じます。松尾スズキさんをはじめ、日本を代表する演出家たちの作品に出演。その演技力に対する評価は、数々の演劇賞を受賞してきた実績が物語っています。

また、映像作品から舞台まで出演作が多岐にわたるりょうさんが、映画版から引き続き厳格な看護師の江口役にキャスティング。

対して新人看護師の山岸役は、桜井玲香さんが演じます。元乃木坂46のキャプテンで、卒業後はミュージカル『ダンス・オブ・ヴァンパイア』や『この世界の片隅に』などに出演しており、俳優としての活躍が光ります。

さらに劇団四季出身の笠松はるさんもカンパニー入り。ミュージカルだけでなくストレートプレイやオペラなど、ジャンルを問わず精力的に活動しています。

そして、皆川猿時さん、池津祥子さん、宍戸美和公さん、近藤公園さんと、「大人計画」所属の個性溢れる俳優陣が集結。築き上げてきた信頼関係をベースに、松尾さんの作品世界をしっかり支えます。

ミュージカル『クワイエットルームにようこそ The Musical』は2026年1月12日(月・祝)から2月1日(日)まで、東京・THEATER MILANO-Zaにて上演。その後、2月7日(土)から11日(水・祝)まで京都・ロームシアター京都 メインホール、22日(日)・23日(月・祝)に岡山・岡山芸術創造劇場ハレノワ 大劇場で上演されます。チケットの一般販売に関しては、東京公演が11月29日(土)、大阪・岡山公演が12月14日(日)よりスタート。詳細は公式HPをご確認ください。

もこ

松尾さんの長年の想いが結実したミュージカル版『クワイエットルームにようこそ』に、原作ファンや以前映画を観た方はもちろん、初めて作品に触れる方も引き込まれるのではないでしょうか。