2025年は、日本の演劇作品やパフォーマーたちが、世界各国で数々の栄光に輝いた1年でした。ミュージカルの聖地ブロードウェイで快進撃を続ける日本人俳優の存在や、世界各地での日本作品の相次ぐ成功など、枚挙にいとまがありません。本記事では、そうした2025年の成果から、特に話題となった日本作品と日本人俳優の活躍をご紹介します。

本場ロンドンからラブコール!ミュージカル『SIX』

16世紀の英国王・ヘンリー8世の6人の妻が現代によみがえり、バンドを組んで熱唱するというユニークな設定が大ヒットを巻き起こしたミュージカル『SIX』。6人の元王妃たちは、処刑されたり離婚されたりと、暴君ヘンリー8世によって散々な目に遭わされます。そんな彼女らが「誰がいちばん悲惨な目にあったのか」と競い合うエネルギッシュな作品です。

本作は日本でも大人気で、2025年1月から3月にかけて、英国からの来日キャスト版および日本キャスト版によって、東京、愛知、大阪の三都市で上演されました。

そして、2025年11月4日(火)から9日(日)には、日本キャスト版によるロンドン公演が行われ、大きな話題に。ロンドン公演が決定した背景には、6人の王妃をダブルキャストで演じた計12名の日本キャストのパフォーマンスの素晴らしさが関係していました。

『SIX』のオリジナルプロデューサー陣は彼女らに魅了され、ロンドン公演をオファーしたのです。日本のパフォーマーたちの魅力が世界に届いたという、素晴らしいエピソードです。

トニー賞授賞式に出演!ブロードウェイで大活躍の上林龍

子役時代から、劇団四季のミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』に出演経験を持つ上林龍(かみばやし りょう)さん。大学卒業からわずか1ヶ月半という前代未聞のスピードで、『アウトサイダー(The Outsiders)』という作品によってブロードウェイデビューを果たしました。

驚くべきことに、デビュー作品で準主役のアンダーステディ、およびスウィングという重要なポジションに任命されたのです。

そして2025年、キャストとして参加していた『パイレーツ!ザ・ペンザンス・ミュージカル』が第78トニー賞にノミネートされ、授賞式では主演のラミン・カリムルーさんらと共にパフォーマンスに出演しました。

本作品には、上林さんの影響で、元々スペイン語だったセリフが日本語に変更される場面がありました。世界的に有名な日本のマンガ『ONE PIECE』のセリフの中から「海賊王」という単語が採用されたということです。

日本人俳優として、異例の快進撃を続ける上林さん。これからも、その活躍から目が離せません。

上海やロンドンで偉業を達成した舞台『千と千尋の神隠し』

2022年に日本で初上演された舞台『千と千尋の神隠し』。原作は、日本を代表するアニメーション映画監督・宮崎駿さんの不朽の名作です。

10歳の少女・千尋が、とあるトンネルから不思議な世界に迷い込み、八百万の神々と出会って成長するこの物語は、ジョン・ケアードさんによる翻案・演出によって大きな反響を巻き起こしました。本作の関係者一同が同年の菊田一夫演劇賞を受賞するなど、近年の演劇界においても屈指の名作と言えるでしょう。

2024年、舞台『千と千尋の神隠し』のカンパニーは日本を飛び出し、ロンドンで好演しました。イギリスの栄誉ある演劇賞「WHATSONSTAGE AWARDS」で“Award for BEST NEW PLAY”(最優秀新作演劇賞)を受賞するなど、高い評価を受けたのです。

さらに本作は、2025年7月14日(月)~8月3日(日) にかけて、上海公演を行いました。上演会場となったのは合計1,949席を有する大型劇場・上海文化広場(上海文化广场)です。これは、日本人キャストによる日本語での中国上演として、演劇史上最大規模となる偉業を達成しました。

さらに、2026年には韓国公演も決定しており、今後ますますワールドワイドな名作として愛されることが期待されます。

オリヴィエ賞6冠!ロンドンの観客を魅了する『となりのトトロ』

同じく宮崎駿監督の作品から、ロンドンでロングラン公演を続けているのが『となりのトトロ(My Neighbour Totoro)』です。

2022年にロンドンのバービカン劇場で初演され、2023年11月から2024年3月まで同じ劇場で再演された本作品。現在は同じくロンドンのジリアン・リン・シアターにて、2026年8月30日までのロングラン公演が決定しています。

原作映画で音楽を手掛けた久石譲さんがエグゼクティブプロデューサーを務め、日本テレビとイギリスのロイヤル・シェイクスピア・カンパニーが共同製作する一大プロジェクトです。

本作は、イギリスの演劇界で最も権威のあるオリヴィエ賞で演出賞など6冠に輝くなど、現地の観客たちを魅了しています。日本の作品でこれほどまでのロングラン公演が行われるのは、本作が初めてのことです。

韓国、ロンドン、台湾など、世界進出が続く『デスノート THE MUSICAL』

2025年に初演から10年を迎えたミュージカル『デスノート THE MUSICAL』は、映画やドラマ、アニメなどさまざまなジャンルで人気を博した漫画「DEATH NOTE」を原作とした作品です。

日本での初演が行われた2015年から、韓国でも現地キャストによる上演が開始され、大きな反響を呼びました。韓国公演のチケットは即日完売となり、2022年には年間ベストミュージカル作品賞を授賞、2023年に4ヶ月にわたるロングラン公演が成功しています。

同じく2023年には、ロンドンでコンサートバージョンが上演され、アジア各国だけではなくヨーロッパにもヒットの波が広がりました。

音楽を担当するのは、『ジキル&ハイド』や『ボニー&クライド』などで知られるフランク・ワイルドホーン氏。演出を務めるのは、数々の演劇賞受賞歴のある栗山民也さんです。

まさに気鋭のミュージカルである今作。2025年にも、世界進出は止まりません。2025年11月29日(土)、30日(日)には、『デスノート THE MUSICAL シンフォニーコンサート』が台湾の台北ミュージックセンターで上演されました。

台湾では、2017年に日本人キャストによるミュージカルが上演されており、今回のシンフォニーコンサートでは、当時の公演にも出演した柿澤勇人さん(夜神月 役)、小池徹平さん(L役)も再出演しました。

糸崎 舞

ブロードウェイやロンドンといった演劇・ミュージカルの聖地で、日本人の俳優さんたちが活躍され、高い評価を得ていることに胸が熱くなります! また、子どもの頃から親しんできたスタジオジブリの作品が、舞台芸術として世界で愛されているのも誇らしい気持ちです。これからも日本の作品やパフォーマーの皆さんが世界で活躍されることを願っています。