井上ひさしさんが24歳で執筆した未上演戯曲が、2026年に待望の初演を果たします。演出は藤田俊太郎さん、主演は小瀧望さんです。閉鎖的なムラ社会を舞台に、その極悪ぶりで人々を翻弄する主人公と、振り回される村人たちの人間模様が描き出されます。
『うま-馬に乗ってこの世の外へ-』とは?
2022年3月、テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」(テレビ東京系列)にて、『うま-馬に乗ってこの世の外へ-』が発見されました。『ひょっこりひょうたん島』『父と暮せば』『組曲虐殺』などで知られ、2010年に死去した井上ひさしさんの戯曲です。
まだ「井上ひさし」を名乗る前、1959年に執筆された本作。それでも、数々の名作にもつながる創意工夫が詰め込まれ、若々しい筆の勢いと生命力に溢れています。
本戯曲は東北の民話「馬喰八十八(ばくろうやそはち)」がベースになっています。アンデルセン『小クラウスと大クラウス』を、1891年に尾崎紅葉が『二人椋助(むくすけ)』として日本語訳したものが、さらに口伝されたものと考えられています。
【あらすじ】
時は1560年代。舞台は羽前の国、小松郷。太郎(小瀧望)は、病気の母(梅沢昌代)を連れて馬一頭と村にやってきた。村の馬地主で横暴な松佐エ門(安井順平)は、太郎の「この馬は黄金の糞をする」という口車に載せられ馬を買い取る。しかし当然ながら馬は黄金の糞などしない。太郎は「金を食わせなきゃ黄金の糞はしない」とうそぶき、松左エ門を激怒させる。そして松左エ門の手下の権ず(小松利昌)の女せつ(小林きな子)も、松左エ門の養女ちか(加藤梨里香)も手玉に取る。
茶屋を切り盛りするお京(音月桂)は、頼りない和尚の宝珍(大鶴佐助)と逢引き中。急に夫の五助(小柳心)が帰ってきてしまい、宝珍を天井裏に隠す。そこへ通りかかった太郎は事情を察し、一儲けしようと茶屋に乗り込むと、巧みな弁舌で宝珍らから大金を巻き上げ、お京をものにする。太郎に煮え湯を飲まされた男たちは、警戒するものの、ついには身ぐるみはがれ、今度太郎を見かけたら彼の魔法のような言葉を聞かないように、耳をふさぎ、観音経を唱えながら殺してしまおう、と相談するが・・・
翻弄する者と振り回される者が繰り広げる人間模様
戯曲の完成度の高さから、日本を代表する劇作家として評価され続けてきた井上ひさしさん。その原点ともいえる未上演戯曲を、いったいどんなスタッフ・キャストが初演するのでしょうか?
演出は、『ジャージー・ボーイズ』(2017年)や『天保十二年のシェイクスピア』(2021年)でも知られる藤田俊太郎さんが手掛けます。パルコ・プロデュース『ラビット・ホール』、東宝ミュージカル『ラグタイム』(どちらも2024年)で、第31回読売演劇大賞の最優秀演出家賞と大賞を受賞しました。
戯曲の構造と核心を精密に捉えながらも、俳優の意見を作品に盛り込み、あらゆる角度から作品の可能性を俯瞰して演出する。藤田さんにはこんな印象があります。「懐かしく愛おしくあたらしい趣向を凝らした演劇を大切なお客様にお届け致します」ともコメントしており、現代的視点での大胆な創作に期待が高まりますね!
主人公の太郎は、7人組男性アイドルグループ「WEST.」として活動する小瀧望さんが演じます。『エレファント・マン』(2020年)で第28回読売演劇大賞の杉村春子賞と優秀男優賞をW受賞し、『梨泰院クラス』(2025年)でも高い評価を得ました。
愛嬌たっぷりでマイペース。落ち着いた雰囲気で、頭の回転が早い。あふれ出す情熱で人々を虜にする。小瀧さんといえば、こんな魅力が思い浮かびます。
今回演じるのは「徹底的に強情で薄情で、気持ちいいくらい自分中心に生きているひどい人」ですが、「その迷いのない生き方に、最後にはなぜか憧れすら感じてしまいました」と述べており、井上戯曲への初挑戦から目が離せません!
そして太郎に翻弄される村人たちにも、豪華なキャストが集結します。
峠の茶屋のおかみ・お京には、凛とした佇まいと繊細な感情表現が観客を魅了してきた音月桂さん。太郎に言い寄られ、いつしか慕うようになってしまう世間知らずの村娘・ちかには、ミュージカルやストレートプレイでしなやかな存在感を見せる加藤梨里香さん。
ちかの養父であり、太郎を目の敵にする村の権力者・松左エ門は、名バイプレイヤーとして知られ、人間の悲哀をにじませる演技で活躍する、安井順平さんが演じます。なんと今回がPARCO劇場初登場とのこと!
太郎の盲目の母役には、井上ひさし作品に数多く出演し、作品世界に奥行きをもたらしてきた梅沢昌代さん。さらに、大鶴佐助さん、小松利昌さん、小林きな子さん、小柳心さん、尾倉ケントさん、森加織さんが、可笑しくも哀しい人間模様を届けます。
PARCO PRODUCE 2026『うま-馬に乗ってこの世の外へ-』は、2026年7月8日(水)〜28日(火)まで東京・PARCO劇場にて上演されます。8月6日(木)〜12日(水)には、大阪・SkyシアターMBSでも実施予定です。公式サイトから詳しい情報をチェックしてみてくださいね。
憧れすら感じてしまう太郎の極悪ぶりは、閉鎖的なコミュニティに風穴を開けるような爽快さも予感させます。また、残酷なシーンも多いそうですが、見終わった後にどんな感情が湧いてくるのか、とても気になりますね。



















