舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』、ラストイヤーにハリー・ポッター役として出演する小野賢章さん。映画『ハリー・ポッター』シリーズの吹き替えでハリー役を12歳から務めた小野さんが、再び魔法の世界に戻ってきます。人生の多くを共にしたハリーという役について、本作の魅力について、お話を伺いました。

これを逃したらもうハリーを演じる機会はないかも

−小野さんは2022年に舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』を観劇されたそうですね。作品への印象はいかがでしたか。
「人が消えたり、炎が出てきたり、本当に目の前で魔法を目撃している感覚に陥りました。『ハリー・ポッター』の世界を生で観ているという感覚になったことをよく覚えています。父親になったハリーと息子のアルバスを中心に、親子の絆、繋がりについて描かれていることも印象的でした」

−客観的に作品を観られましたか?
「そうですね。自分が吹き替えをやっていた時からかなり時間も経っているので、いち観客として、作品を楽しみました」

−ハリー役としての出演は以前からオファーがあったものの、お断りされていたと伺いました。今回決断した理由は何でしたか。
「観劇させていただいた時、自分の年齢がハリーに追いついていないと思いましたし、子どものいる父親の気持ちを表現していくのは難しいと感じました。だからお断りさせていただいたのですが、今回出演を決めたのは、やはりラストイヤーであるということが大きかったです。もしここを逃したら、ハリー・ポッターを演じる機会はもう訪れないかもしれない。そう思ったことと、自分も日本初演から年齢を重ねたので、今ならできるかもしれないという気持ちがありました。それでも不安な気持ちはあったんですけど、挑戦してみようと決めました」

−ハリー役が決まって大きな反響があったと思いますが、どのように受け止められましたか。
「すごくありがたかったです。でもその期待に応えられるかどうか、プレッシャーに感じている部分もあります。舞台は映画・小説の世界から19年後というところで、当時演じていたハリーそのままというわけではないですし、自分も演じてから15年くらい時間が経っているので、当時の感覚でやるというよりも、舞台として新しく感じることを表現していけたらと思っています」

率先して問題に立ち向かっていけるハリーの強さ

−これほどまでに長く同じ役をやり続けるという経験もなかなかないと思います。小野さんにとってハリー・ポッターとはどんな存在だったのでしょうか。
「10代の頃は、1年〜1年半に1度は映画の吹き替えの仕事があったので、夏休みにおばあちゃんの家に行くような感覚でした。すごく身近な存在でしたね。作品の大きさを実感するようになったのは、大人になってからかもしれません。“小さい頃から観ていました”“ハリーが大好きです”と言っていただく機会がすごく多いですし、USJやスタジオツアー東京、そして舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』と、いまだにハリー・ポッター関連のお仕事が続いているのは本当に凄いことだと思います」

−小説・映画の世界から19年の時が経ったハリーを観て、どう感じられましたか。
「すごく新鮮ですね。息子のアルバスのことで悩んでいるけれども、仕事もしなければならないし、常にフラストレーションを抱えていて。ハリーも1人のサラリーマンなんだなと感じました。
今脚本をじっくりと読み解いている最中なんですが、ハリーは父親ではあるけれども、子どもとの接し方が分からず、試行錯誤しながら、時に失敗しながら、だんだんと父親になっていきます。そう思うと、これまで僕の中では“父親”というキーワードが大きすぎてどう表現したら良いんだろうと悩んでいたのですが、変に父親になろうとしすぎなくても良いのかなと感じています。
これまで様々な人がハリーを演じてきましたが、役へのアプローチの仕方、台詞の言い方もそれぞれ違って良いと言っていただけているので、色々と考える余地があるのがありがたいです」

−本作を通してハリーらしさを感じた部分はありますか。
「率先して自分が動いて、問題に立ち向かっていく姿はすごくハリーらしさを感じますね。ハリーはそうせざるを得なかっただけかもしれませんが、やはり逃げ出さず、解決のために行動できるのはハリーの凄さだと思います」

−ダンブルドアやスネイプなど、今回の舞台で対面するのが楽しみなキャラクターはいますか。
「マクゴナガル先生ですかね。舞台でも先生に怒られるシーンがありますが、そこは映画の時のハリーを思い出せるシーンです。大人になっても、マクゴナガル先生の前ではハリーもロンもハーマイオニーも生徒なんですよね。それを感じられるのがすごく好きです」

−魔法を習得するという点についてはいかがですか。
「それが一番楽しみにしていることです(笑)。本読みをしていて感じるのは、ハリーとしては辛いシーンが多いということなんです。常に何かに悩んでいたり、問題に直面したりしているので、ハリーを演じる心情としては辛いこと、疲れることが多いと思います。なので、魔法を教えてもらえるのが楽しみなことですね。魔法省に行く時に消えていくシーンとか、早くやってみたいです」

命の大切さ、尊さが描かれた『ハリー・ポッター』シリーズ

−『ハリー・ポッター』シリーズが世界中から愛される理由は何だと思われますか。
「子どもにとって魔法はとてもワクワクしますし、想像力を豊かにしてくれるものだと思います。でもそれだけであれば、ここまで長い間、子どもにも大人にも愛される作品にはならなかっただろうと思います。
『ハリー・ポッター』シリーズを通して、いつもハリーのそばには誰かの死が身近にあります。大切な人を亡くすという経験をしているからこそ、今生きている自分のこと、家族、人との繋がりを大切にしていると感じます。命の大切さ、尊さが描かれている作品であることが長く愛される魅力なのかなと、大人になった今、感じています」

−ハリポタ世代の方で、まだ舞台を観られていない方にメッセージをお願いします。
「人と人との繋がりを大事にしている作品だと思うので、ぜひ舞台で目に見えない繋がりを感じていただけたらと思います。映画からは時間が経っていますし、ハリーの年齢も違うので映画そのままということにはならないと思いますが、吹き替えで見てくださっていた方なら感じ取れるような語尾の癖や言い方を節々に出せたら、僕がやる意味があるのかなと思うので、そういうところも楽しんでもらえたら良いなと思っています」

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は東京・TBS赤坂ACTシアターで上演中。小野賢章さんは2026年8月〜10月に出演予定です。公式HPはこちら

撮影:山本春花、ヘアメイク:齋藤将志、スタイリスト:DAN(kelemmi)
Yurika

『ハリー・ポッター』シリーズファンにとってたまらないキャスティング!ということで、大きなプレッシャーを抱えていらっしゃいながらも、新鮮に作品に取り組もうとされている姿が印象的でした。