2026年10月、12年ぶりの上演を迎える『THE ALUCARD SHOW』。ヴァンパイアをモチーフに、カリスマボーカリスト・ブラドと謎のダンサーたちのグループ「アルカード」と、彼らに人生を狂わされていく人々を描いた本作は、“アルカドニア”を自称する熱狂的なファンを生み出した伝説の作品です。2013年の初演、2014年の再演に引き続き、本作にブラド役で出演する松下優也さん、「アルカード」のメンバー・オルロックを演じる平間壮一さんにお話を伺いました。

徹底した世界観作りで話題に、熱狂を感じた初演

−12年ぶりに本作のお稽古をしていて、作品の魅力をどのように感じていますか。
松下「稽古序盤では僕らは振り稽古しかないくらい、踊る作品なんですけれど、坂田聡さん・野口かおるさん・彩風咲奈さんが中心となる芝居の稽古を見ていて感じるのは、お客様に語りかけるところから始まる冒頭からインパクトがあるなと。ワクワクゾクゾクしています。稽古でもそう感じられるから、本番を観るお客様はすぐに作品に惹き込まれるだろうなと感じますね。今観ても新鮮で斬新な作品だなと思いますし、色褪せているものを一切感じなかったです」

平間「今まではダンスをメインにかっこいいショーを見せるという意識が強かったですが、坂田さん・野口さん・彩風さんのお芝居を見て、この作品はちゃんとしたお芝居でもあるし、3人の芝居のかっこよさがあるなと改めて感じました。これだから、みんな好きになるんだよなと。芝居をしっかり見せてくださって、ダンスのかっこよさもあって、さきさん(彩風さん)は芝居も歌もダンスも出来るので、間を取り持ってくださっていて。全方面でのかっこよさがあって、それらが1つの作品になっているから魅力的なのだなと感じています」

−初演時には新作から話題作へ、熱狂度が増していく様子を実感されていましたか?
松下「感じましたね。最初は新作ですし、どんなものなのか分からない状態だったのが、幕が開けてから口コミで広がっていき、客席がどんどん埋まっていくのを目の当たりにしました。最初から来ていただいていた方にはすごく感謝しています。僕らは一回一回を演じているだけで、何かを変えたわけではないのに、周りが変わっていくというのはとても不思議な感覚がしました」

平間「熱狂的なファンの方が増えていったので、今までとは違う何かがあるんだなと感じました。自分はキャーって言われる存在なのかな?って勘違いしましたね(笑)。アルカードを1つのグループとして応援してくださったのだとしたら、12年ぶりの復活も喜んでくださっているんじゃないかと思います」

松下「(原作・構成・演出の)河原雅彦さんが凄くブランディングを作り込んでくださったのが良かったのだと思います。カーテンコールがなかったり、役として作品以外で喋ることは一切なかったり。役者と役との線引きが曖昧な部分を無くしたことで、お客様もより『THE ALUCARD SHOW』の世界に入り込んで、アルカードとして応援してくださったのかなと思います」

12年培った実力と経験から生まれる新たなカリスマ性

−同じ役を12年ぶりにやるというのもなかなかないことですよね。12年ぶりに役に向き合ってみて、変化は感じられますか。
松下「12年前はまだお芝居の経験も浅かったので、とにかくかっこいいパフォーマンスをするということに集中していたように思います。今回久しぶりに作品と向き合ってみると、こういう物語だったのかと、物語が染み込んでくるように分かる感覚がありました。それはこの12年間、自分がお芝居に向き合ってきた結果なのだと感じます。
これは壮ちゃんにも言えることで、やっぱり今回の再演に壮ちゃんがいるというのが僕にとって凄く大きなことです。壮ちゃんが僕とアルカードのメンバー、作品を繋いでくれる存在だと思っていますし、12年間に様々な変化があった中、2人ともこの世界で頑張っていたからまた一緒にやれる。思い入れのある作品をまた一緒にできるというのは、凄く意味のあることだと思っています」

平間「12年前とは居方(いかた)から変わったなと、優也を見ていても、自分にも感じます。2人ともショーに集中していたこの作品を、12年という時を経て演劇としてより深められるようになりました。お芝居の稽古が行われている時、優也は裏でスタンバイするはずなのに、横から空気や流れを読んでいる姿を見て、かっこいいなと思いました。優也がそうやって頑張ってきた姿をずっと見てきたので、この人と一緒にやれて良かったなと改めて実感しましたし、僕らのそういう変化で再演として作品の魅力が増えていると良いなと思います」

−言葉の少ない役柄で物語を表現するという、非常に難しい役どころですよね。
松下「僕が演じるブラドでさえ言葉は少ないですし、アルカードのメンバーは一言も喋りません。壮ちゃんが演じるオルロックも台詞がなく、表面的にはパフォーマーのように見えますけれど、芝居の本質は台詞を喋る事ではないと思います。これだけお芝居の経験を積み上げてきた壮ちゃんがアルカードのメンバーをまとめるオルロックを演じることは、とても重要なことだと思います。心の動きを含めて、芝居をしてきた人でなければ作れない雰囲気があると思うので、そこを壮ちゃんが担ってくれることに安心感があります」

平間「台詞のない役というのは非常に難しく、苦しんでいますし、不安もあります。アルカードのメンバーに、板の上での感覚というのをどのように伝えていけば良いか、模索している部分もあるんですけれど、自分の中で忘れちゃいけないなと考えているのは、ブラドとの繋がりです。ブラドが現れた瞬間に、アルカードが一気に繋がる、バチっと決まる姿を見せられると良いなと想像しています。初演から携わってきたからこそ、自分がみんなを引っ張っていかなければいけないと覚悟しています」

−ブラドやアルカードはカリスマ的存在として人々の心を掴む役どころです。どのように役柄を作り込んでいこうと思われていますか。
松下「ブラドはカリスマという言葉の上に君臨するような存在だから、本来はカリスマという言葉では言い表せないものなんだと思います。今思うと、12年前の僕はアーティストとしての活動が多く、芝居のことを分かっていなかったからこそ怖いもの知らずな雰囲気があったと思うんです。もちろん今より実力はないし、理解していないこともあったと思うけれど、逆に掴みどころのない雰囲気に繋がっていたように思います。
今は色々と分かってしまうし、見えてしまう。やれることは増えたけれど、無知ゆえに怖いもの知らずだった、ある意味天然で出来ていた自分を超えなければいけないと感じています。実力と経験で、カリスマというものを1から再構築しなければいけません。でもカリスマというのはこちらからアピールするものではないですから、とてつもない練習量と、そこから来る自信からかっこよさや色気が出て、カリスマ的になっていくんじゃないかなと思います。雰囲気で押し通すようなキャリアの年齢でもないですし。圧倒的な練習量と研究に尽きると思いますね」

平間「お芝居と一緒で、例えばアクションで殴るのが強く見えるのは、殴る方が強いのではなく、殴られる方がいかに受けて飛んでくれるかだと思います。だからカリスマ性というのもお芝居として見せたいなと思っていて、やはりアルカードを目撃する坂田さん・野口さん・彩風さんにいかにカリスマだと思っていただくかということでもあると思うんです。ということは稽古中にも手を抜かず、完璧な姿を見せて、“この人たちは凄い、素敵だ”と心の底から思っていただかなければいけないと思います。疲れているからこのくらいでいいや、という姿を見せたら、“その程度なんだな”と思われてしまう。それはもったいないなと思って、頑張っています」

「簡単なものじゃない」演劇だから届けられるメッセージ

−篤志さんが手がける音楽、MIKIKOさん(原案)、SHINGO OKAMOTOさん、SAYAさんが手がける振付の魅力についてもお聞かせください。
松下「篤志さんの楽曲は、アルカードの世界を一気に創り上げてくださいました。キャッチーだし、かっこいいし、今聴いても古く感じない。それはアルカードという作品自体もそうだと思います。流行りに乗っているわけではなく、アルカードの楽曲・振付が独自のものとして確立されているのは、本当に凄いことです。振付も12年ぶりに踊っていますが、全く古く感じないんです。MIKIKOさんやSHINGOさん、自分のスタイルを作り上げている人がクリエイターとして加わっているから、アルカードだけのスタイルが生まれたのだと思います。
12年前と比べるとダンスボーカルグループが圧倒的に増えましたし、たくさんのミュージカルが上演されてきましたけれども、今見ても、ロックなテイスト、ゴシックな世界観とアート的な要素のあるアルカードは唯一無二ですね。お芝居・音楽・ダンス・ファッション、色々な要素が掛け合わさったカンパニー全体が“エンターテイメント集団”だと思います」

平間「今回、SHINGOさんと振付助手のASUPIさんが新曲の振付を作ってくれているのですが、ASUPIさんという今をときめく若い世代のアーティストが加わってくれていることも、12年ぶりに再演をやる意味だと感じます。アルカードメンバーも若いメンバーになって、次に繋ぐような作品になっていると思います」

−本作は情報社会や妄信的な人間へのアンチテーゼなど、今観るべき深いメッセージも持った作品です。
松下「僕も最初はアルカードをエンターテイメントショーとして捉えていたのですが、今回再び作品に向き合ってみて、本当に今の時代に合った作品だと感じました。もしかしたら聴いていてどきっとする方もいらっしゃるんじゃないかと思います。ブラドは台詞が多くありませんが、数少ない台詞は非常に本質的です。それをエンターテイメントとして魅せるというのが面白いし、もしかしたら12年前より今の方が、皆さんに浸透しやすい物語になっているかもしれません。ブラドが“自分の目や耳で感じて、自分の頭で判断して良いと思うか”を問いかけますが、今、そういう人ってそう多くはないんじゃないかなと思います」

平間「今はみんなが良いと言うもの、可愛いと言われるものがすぐに広まってしまうので、愛情を注ぐものが多すぎて、1つ1つへの愛情が薄っぺらくなっているような気がします。本当に好きなもの、愛せるものって何なのか。僕は大事にしなければいけないものに大きな愛情を持っていたいと思うタイプなので、作品にもそんな意味を込めたいですね。みんなに人気だから好きなのか、好きな人が集まるから人気になるのか…そんなことを考えてハッとする方が多い作品じゃないかと思います」

松下「それを舞台でやるのが良いなと思います。舞台ってお客様も本当に好きな人たちが集まっていると思うんです。簡単なものじゃないじゃないですか。サブスクで数百円払えばパッと見られるものでも、聞けるものでもない。忙しい中スケジュールをわざわざ空けて、自分でチケットを買って、数時間そこに座っていなきゃいけない。僕もこの仕事をしていて舞台を観にいきますけれど、簡単なことじゃないと思いますし、それを皆さんはしてくださっているんだなと思います。そういう舞台、演劇の世界で、アルカードをやるというのが面白いことなのだと思います」

撮影:長谷川明

『THE ALUCARD SHOW』は、2026年10月6日(火)から10月22日(木)まで日本青年館ホール、10月29日(木)から11月1日(日)まで梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演されます。公式HPはこちら

Yurika

どのようにアルカードのカリスマ性を魅せていくかお伺いした時のお答えが、ストイックなお二人ならではだと感じました。そしてストイックに演劇に向き合い続けてきたお二人だからこそ、本作での再会があったのだと思います。役者としての経験を重ねたお二人が新たに見せるアルカードが楽しみです。