ブロードウェイで初演を迎え、アメリカ作品として歴代1位のロングランを誇る、メガヒットミュージカル『シカゴ』。初演から25周年という記念すべき年を迎えた今年、ブロードウェイで公演中のCHICAGOオールスターズ・カンパニーが「25周年記念ジャパン・ツアー」で来日!こんなにも『シカゴ』が世界中を魅了する理由とは一体何なのでしょうか?
セクシーでスキャンダラスな実話に基づくシンデレラストーリー
1920年代、ジャズ全盛期のイリノイ州・シカゴ。浮気相手を殺した人妻ロキシー・ハートは、絞首刑を逃れるために弁護士ビリー・フリンとともに架空のストーリーを作り上げてマスコミに報道させます。
ロキシーの愛くるしい容姿と殺人犯というギャップ、加えてお涙頂戴のストーリーにマスコミは食いつき、彼女はすっかりセレブ扱い。ロキシーが来るまではマスコミの話題をかっさらっていた同じく殺人犯として収容中のショービズ界のダンサー、ヴェルマ・ケリーはそれを見て歯噛みします。果たして彼女たちは絞首刑を逃れ、無事に釈放されるのでしょうか?
超一流ダンサーが躍る、名曲揃いのミュージカルナンバー
『シカゴ』の魅力の一つは、なんといっても全編を彩るダンスナンバー。冒頭、ヴェルマが躍る「All That Jazz」に始まり、マスコミにちやほやされてすっかりスターになった自分を夢見るロキシーのメインナンバー「Roxie」など、そのすべてがあまりにセクシーで彼女たちの虜になってしまいそうです。
特に女性殺人囚たちが、タンゴのリズムに乗せて踊り、無実を訴える「Cellblock Tango」は、彼女たちのあまりにインモラルな自らの罪の「解釈」に我々とは違う殺人囚らしさを感じつつ、そのスタイリッシュなナンバーには引き込まれてしまいます。
主人公のロキシーやヴェルマだけでなく、女看守長ママ、弁護士ビリー、ロキシーの夫エイモスと、登場人物それぞれが主役となるダンスナンバーがあります。歌詞と振り付けが主人公以外のキャラクターにも深みを与え、物語の厚みを出してくれています。
今も昔も変わらないメディアへの皮肉
『シカゴ』の魅力はもちろんダンスナンバー以外にもその振り付けや音楽、舞台装置など様々あるのですが、ここでは25年前の初演時も今も変わらない「メディアに対する皮肉」が、私たちの共感を呼んでいるという点を取り上げます。
マスコミが必要なのは「話題性」です。当時のシカゴでは、女性が夫や恋人を殺害することはかなりセンセーショナルに扱われており、新聞の一面を飾るような出来事でした。ロキシーのように、女性死刑囚は「悲劇のヒロイン」のように描かれることも。劇中、ロキシーばかりを取り上げていたマスコミが、もっと名のある女性が夫や恋人を殺害したことで、一瞬でロキシーへの注目度が下がるというようなシーンも描かれています。
この現象は、今も変わらないはずです。スキャンダラスなニュースは大きく取り上げられ、別のニュースが出れば新聞の一面はとたんにすり替わる。そんなマスコミにどこか思うところが私たちもあるのかもしれません。
『シカゴ』の日本公演は、2022年12月14日(水)~31日(土)まで、東京国際フォーラムにて上演予定。しかも今回は全編生演奏での上演です。本場アメリカのCHICAGOオールスターズ・カンパニーの来日公演ということもあり上演は英語ですが、もちろん日本語字幕がついていますので安心です。
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なお、ブロードウェイでも主人公ロキシー・ハート役を演じた米倉涼子さんが出演予定でしたが、残念ながらドクターストップにより降板が決定しています。ブロードウェイに響いたその歌声を聞けないのは残念ではありますが、「話題性」が欲しいマスコミ、「注目」が欲しいロキシー、「金」と「名声」が欲しい弁護士フリン、あらゆる人の欲望が渦巻く『シカゴ』をぜひ一度ご覧あれ。