“恋愛の神様”と称される漫画家・柴門ふみさんが1988年に発表した漫画「東京ラブストーリー」。1991年のドラマ化の際は、坂本裕二さんが脚本を担当し、平均視聴率22.9%という人気作品になりました。2020年には、伊藤健太郎さん、石橋静香さんらの出演で配信ドラマとしてリメイク。そんな大人気作品の『東京ラブストーリー』が今年、30年の時を超えてミュージカルへと生まれ変わります。

ミュージカル版の舞台は2018年。いつの時代の若者も抱えている、漠然とした不安や、アイデンティティを探し求める姿を描く

『東京ラブストーリー』は、サラリーマンの永尾完治と同僚の赤名リカの関係を中心に、東京に生きる若者たちの姿を描いた作品です。「東京では誰もがラブストーリーの主人公になる」というキャッチコピーで親しまれました。1991年には、フジテレビがテレビドラマ化し、「月9」という言葉を生み出すきっかけとなった作品です。

ミュージカル『東京ラブストーリー』の舞台となっている時代は、2018年。原作やドラマの舞台がバブル期だったのとは異なります。

また、ドラマ版ではなく、柴門ふみさんによる原作漫画をもとに作られています。ドラマ版では、赤名リカ視点でストーリーが描かれていたり、リカと完治の務める会社が「ハートスポーツ」というスポーツ用品店になっていました。原作では完治視点で、広告代理店勤務という違いがあります。

学校を卒業し、上京してきた4人の若者たち。彼らは、人生に対する漠然とした不安のようなものを感じながら生活しています。東京で必死に自分の居場所を探し、自分は何になりたいのか、どういう人になりたいのかという、アイデンティティを探し求める姿が描かれた群像劇です。

パワフルなリカの魅力や、完治の悩める青年像、三上のモテ男ぶりなどは原作そのままに、ミュージカル版オリジナルのエピソードも加えられているんだとか!

また、ミュージカル『東京ラブストーリー』は一部ダブルキャストでの上演となっています。熟達者が揃う空キャストは、永尾完治役に柿澤勇人さん。『デスノート THE MUSICAL』でも日本初演に出演していた柿澤さん。本作も海外に進出するミュージカルになるかもしれません。

赤名リカ役に、2023年3月に上演の『ジキルとハイド』でも柿澤さんと共演が決まっている、笹本玲奈さん。三上健一役は、高い歌唱力を持ち、歌手活動も積極的に行っている廣瀬友祐さん、関口さとみ役を2023年に『ファインディング・ネバーランド』への出演が決まっている夢咲ねねさんが演じます。

フレッシュな海キャストは、永尾完治役に濱田龍臣さん。大河ドラマ『龍馬伝』で坂本龍馬の幼少役や、ドラマ『怪物くん』への出演など子役時代から活躍しています。本作は濱田さんの貴重なミュージカル出演姿が観られる機会になっています。
赤名リカ役は、2023年に『SPY×FAMILY』にヨル・フォージャー役で出演が決定している唯月ふうかさん。

三上健一役に、ミュージカル『テニスの王子様』の白石蔵ノ介役や特撮のドラマ・舞台で人気を集めている増子敦貴さん。関口さとみ役に幼い頃から培ってきた歌唱力で、ミュージカル『レ・ミゼラブル』や『リトル・ゾンビガール』に出演している、熊谷彩春さんという顔ぶれです。

空キャスト海キャストで、セリフや動きが違うところもあるそうで、本作の見どころとなっています。

不安定さと若さのパワーをポップスに乗せて表現 

ミュージカル化にあたり、音楽を担当するのは、ジェイソン・ハウランドさん。2018年に日本で初演されたオリジナル・ミュージカル『生きる』の作曲家で、今年『パラダイス・スクエア』でトニー賞オリジナル楽曲賞にノミネートされました。

音楽は、青春時代を感じるような爽やかなポップス。『東京ラブストーリー』の登場人物たちには不安定さと若いエネルギーがあり、「早いビートが刻まれるようなポップスと非常に相性がいい」とハラウンドさんは話します。

完治が、ある会社で自分たちの商品を使ってもらうことをプレゼンする場面で歌う「プライド」という曲。地元から離れた東京で成果を出す、人生の決断をする、ということを音楽面でも表現するために、コード展開を不思議に変化させているそう。

登場人物たちの成長につれ、音楽も壮大になっていきます。例えば、一幕ラストのリカのソロナンバー「24時間の愛」。
リカは、完治が初恋の相手・さとみへの思いがまだ残っていることを感じていました。完治の誕生日の夜に、彼の家に向かうと2人が一緒にいるところを目撃してしまいます。「自分は何に傷付いているのか」に気づいたリカが、自分の思いを切々と歌い上げるミュージカルらしい大曲になっています。

また、ミュージカル版では男らしさが溢れるキャラクターになっている、“モテ男”三上。初登場シーンで、これまで何人の女性と付き合ってきたのかと聞かれて「56人の女たち」というセクシーで格好いい楽曲を歌います。そんな三上も、「この人と結婚する」という決意を歌う曲は、ポップソングではなくミュージカルらしい楽曲へと変化します。

ハラウンドさんによる全編書き下ろしの素晴らしい楽曲たちは、物語に寄り添いながら、より表現の幅を広げてくれるものとなっています。

ミュージカル『東京ラブストーリー』は、11月27日(日)〜12月18日(日)池袋・東京建物Brillia HALLで上演。その後、12月23日(金)~25日(日)大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、2023年1月14日(土)愛知・刈谷市総合文化センターアイリス大ホール、1月21日(土)~22日(日)広島・JMSアステールプラザ大ホールでの上演が予定されています。公式HPはこちら

ミワ

『四月は君の嘘』や、来年には『のだめカンタービレ』など現代の日本がミュージカル作品として上演されることが増えている実感があります。ミュージカル版の『東京ラブストーリー』はやはり、空と海という世代の違うダブルキャストを組んでいることにあると思います。ぜひどちらも観劇して、見比べて楽しむことをお勧めします!