12月26日(月)にBunkamuraシアターコクーンで幕を開ける彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』。今回は、本作のモデルであるイングランド王ジョンと、彼が生きた時代について知っていきましょう!作品について詳しくはこちら

イギリス史上最も悪評高き王・ジョン

領地の大部分を失ったり、諸侯の反乱にあったり、重税を課したりと失政続きだったことから、イギリス史上最も悪評の高い王と言われるイングランド王ジョン(在位1199~1216年)。末っ子だったジョン王は継承できる土地がなく、出生時に父・ヘンリー2世から領地を与えられなかったため、「失地王」や「欠地王」と呼ばれました。

1185年、ジョンはヘンリー2世からアイルランドの統治権を与えられます。兄リチャード獅子心王が第三回十字軍に参加してイングランドから離れていた際、ジョンは1189年から実質的に国王として振る舞うようになっていました。映画『ロビン・フッドの冒険』はこの時代が舞台となっています。

そして、1199年、兄リチャード獅子心王がフランスで死亡した年に、正式に王に即位します。フランスにある広大な領土も相続しましたが、フランス国王フィリップ2世がジョンが相続した領土に侵攻したため、ジョンの治世は、フランス国王との戦争に明け暮れることになりました。

ジョンはフランス国王フィリップ2世に破れ、1214年には、先祖代々の領土であるノルマンディをはじめ、その他フランスにあった領土のほとんどを失いました。

ジョンは、ローマ教皇(カトリック教会の最高位聖職者)とも揉めていました。1205年、教皇イノケンティウス3世は、カンタベリー大司教に旧友のスティーブン・ラングトンを推しましたが、ジョンはこれを拒みました。そして、ジョンは、ローマ教皇庁を支持する司教たちを追放して教会領(※1)を没収したため、1209年に教会から破門(※2)を宣言されてしまいます。ジョンは、教会領が徴収できなくなったため、領土の喪失によって収入が減ってしまったことを別の方法でカバーせざるを得なくなりました。
※1教会領:ローマ・カトリック教会が所有する土地財産
※2破門:宗派から追放されること。

イギリスが強国になったのはジョン王のおかげ!?

大陸側領土の回復を狙ったジョン王は、神聖ローマ皇帝、フランドル伯、ブローニュ伯と結んで、フランス王フィリップ2世に攻撃を仕掛けます。しかし、1214年ブーヴィーヌの戦いはフランス側の勝利に終わり、フランスの優位が決定的なものとなりました。

ジョン王は何度も大陸領土の回復のための戦争をしたため、巨額の戦費がかかりました。費用を賄うため、彼は諸侯の同意なく、彼らへの厳しい増税を強行。結果、イングランド国民は重税に苦しむことになり、また、軍事力を強化するため、国民全員に軍役を課すことになってしまったのでした。
これに反発した諸侯たちがジョン王に突き付けたのが「大憲章」(マグナ=カルタ)です。

マグナ=カルタは、国王の徴税権の制限、法による支配などを明文化したもの。国王の権力に制限を設け、封建貴族の特権や教会の自由を再確認し、自由農民の権利を保証する旨が書かれており、ジョンは強制的にこれを認めることとなりました。マグナ=カルタはその後、イギリス立憲制の支柱となっていく大切な存在となっていきます。

また、ジョンの治世に、イングランドは多くの海外領土を喪失し、領土は島国のみとなってしまいます。しかし、これがなんと、後のイギリスにとっては好都合に働きました。その後の戦争はすべてヨーロッパ大陸で行われたため、島国のイギリスは戦乱に巻き込まれずに済んだのです!

立憲制の確立と島国ということが、イギリスがヨーロッパでもっとも豊かな国になった要因とも言えます。そして、そのきっかけはどちらもジョン王の時代に隠されていたのでした。

彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』は、12月26日(月)〜2023年1月22日(日)東京・Bunkamuraシアターコクーンで上演です。※1月3日から8日まで上演中止。最新の上演スケジュールは公式HPをご確認ください

その後、2023年1月26日(木)~29日(日)愛知・御園座、2月3日(金)~12日(日)大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、2月17日(金)〜24日(金)埼玉・埼玉会館 大ホールが行われる予定です。詳しくはこちら

ミワ

悪評高き王と言われていますが、彼の失敗が結果的にイギリスを強国へと導いたと考えることもできるのですね!舞台でのジョンはどのように描かれるのでしょうか。