例えば、皆さんが「よし!舞台を上演しよう!」と思い立ったとします。どんな職業の方々を集めればよいでしょうか。当然「俳優」だけで舞台は成り立ちません。作品全体の組み立てを考える「演出家」も必要ですし、ストーリーそのものを考える「脚本家」も必要です。その他にも無くてはならない存在が沢山います。ほんの一部ですが演劇の裏側にどんな職業があるのかご紹介します。
01 音楽だけではなく、効果音も担当する「音響」
演劇にとって欠かせない物の一つが「音」ですよね。シーンに合わせた音楽や効果音をセリフの邪魔にならない絶妙な音量・タイミングで流してくれるのが音響さんの仕事です。
そして、当たり前のように見ていますが、俳優の動きに合わせて効果音を重ねるのはプロの技です。あまり効果音のタイミングなんて意識したこと無かったんじゃないでしょうか?観ている人が気にならないというのはそれだけ絶妙なタイミングになっているということなんです。
そして演劇には「音きっかけ」という言葉があって、「ラジオのノイズ音が2回鳴ったらセリフを言う」「雷の音と同時に舞台上に飛び出していく」などストーリーを進行する上でも重要な役割を担っているんです。
02 光のチカラで世界観を作り出す「照明
そしてもうひとつ、舞台に忘れてはいけないのが「光」。たとえ舞台に大掛かりなセットが無かったとしても、シーンの情景や環境を光で作り上げてくれます。
実は俳優として舞台に立つ僕も、照明さんのおかげで不思議な経験をさせてもらったことがあります。
僕が演じていたのは、過去に起こした事件が原因で人とのつながりを持てず、やっと心を許せる女性と出会い結婚を考えている男性。しかしある問題が起き、大好きな彼女に別れを伝えなければいけないシーンでした。
薄暗い舞台上で座っている彼女にスポットライトが当たっていました。
衣装は普段着だったんですが、照明の白い光を纏った彼女がまるでウェディングドレスを着ているように見えたんです。嘘だと思うでしょ?自分でも本当に不思議でした。
稽古場では起こらなかった「ああ、自分は本当にこの人が好きなんだ。でもこの人に俺はウェディングドレス着せてあげる事が出来ないんだ…」という感情が湧いてきて、声が全然出なくなってしまいました。それでも別れを告げなければいけないので、無理して声を出そうとする演技になります。心の苦しさが表現できたのかは分かりませんが、見ていた他の役者さんからも「すごく良かった」と言われました。
あの瞬間の演技を引き出してくれたのは完全に照明さんのおかげです、観る人だけじゃなく演じる人にも影響を与える「光のチカラ」。きっと色々な舞台上でそういった相乗効果が生まれているんだと思います。
いかがでしたか?今回は音響・照明についてお話しさせて頂きました。その他にも「舞台監督」や「美術」、「メイク」など演劇を支える職業はまだまだ沢山あります。観客席からでは見えない部分について、今後もご紹介していきますので、お楽しみに。