夏休みが始まる7月〜8月にKAAT神奈川芸術劇場で上演される「KAATキッズ・プログラム2023」。今年はダンス作品、演劇作品、音楽劇とバラエティーに富んだ3作品がラインナップ!3作品通してみられるお得なチケットの発売も!

「人間のイマジネーションの力を体感して」

神奈川県横浜市にあるKAAT神奈川芸術劇場では、2011年の開館以来、大人も子どもも楽しめるキッズ・プログラムを上演してきました。 今年の「KAATキッズ・プログラム2023」は、7月~8月に、ダンス・演劇・音楽劇という、バラエティー豊かな3作品が上演されます。

KAAT神奈川芸術劇場の芸術監督を務める長塚圭史さんは本プログラム開催にあたって「YouTubeなど気軽に楽しめる娯楽が溢れる中、何もない空間で生身の人間が、観ているあなたと共にあらゆる世界を生み出せるという、その原始的な人間のイマジネーションの力を体感して欲しいと願います」とコメントしました。

子どもの“ひみつ話”が世界をひっくり返す!?ダンス公演『さかさまの世界』

KAATキッズ・プログラム2023のスタートを飾っているのは、ダンス作品『さかさまの世界』。欧州を中心に活躍し高い評価を得ており、1月からフランス東部のストラスブール・グランテスト国立演劇センターTJPのディレクター(総芸術監督)に就任した、ダンサーで振付家の伊藤郁女さんによる作品です。

©Anaïs Baseilhac

『さかさまの世界』は、伊藤さんが2021年にフランスで創作した『LE MONDE À L’ENVERS』というこどものためのダンス作品を日本版として新たにクリエーションします。

物語の舞台は、異常な気候変動により、さかさまになってしまった世界。とあるダンサー・俳優たちは、思いがけない依頼から世界を救うことに。もとに戻すには、こどもたちの声やイマジネーションが必要で…。

自作の紙芝居を通じて、こどもたちの想像力を集めるリサーチ活動を行っている伊藤さん。本作は、その活動で集めたこどもたちの様々な“ひみつ話”を素材に創られています。今回の上演にあたっては、昨年の12月に伊藤さんと出演者でKAAT近くの熊猫幼稚園と横濱中華幼保園でリサーチ活動を行ったそう。どのように作品に織り込まれるのか楽しみですね。

伊藤さんは本作について「こどもの秘密や発想力が世界を逆さまに変えることができるのではないかという思いでこの作品を創っています。こどもの力を借りることで、アーティストや観客の“こどもごころ”を揺さぶり、観た方が笑って帰ることのできる作品になると思います」とコメントしています。

出演者には、日本国内を中心にダンサーとして活動している川合ロンさん、Aokidさん、岡本優さん、そして俳優の石川朝日さん。フランス版とは異なり、ダンサーの中に俳優が入ることでどのような変化が起こるのか注目です。

日本での滞在制作は滅多にないという伊藤さん。貴重な機会を見逃せません!『さかさまの世界』は7月1日(土)~7月9日(日)にKAAT 神奈川芸術劇場・大スタジオにて上演です。公式サイトはこちら

“すてきな地獄”に“人気のない天国”!?観客も一体となって作り上げる舞台『さいごの1つ前』

キッズ・プログラム2作目として7 月21日から開幕するのは『さいごの1つ前』。昨年8月に初演された、劇作家・演出家 松井周さん×俳優 白石加代子さんという、キッズ・プログラムとしては異色の顔合わせが話題になった本作が待望の再演です。

白石加代子さん、久保井研さん、薬丸翔さん、湯川ひなさんの4人の個性的なキャストたちは、今年も続投!舞台美術や照明にも新たに手を加え、初演とはひと味異なる劇空間を創出し、単なる再演に留まらず、魅力を増しています。

作・演出を務めるのは、本作で初めてキッズ・プログラムを手がけたという松井周さん。劇団サンプルの主宰で、作家・演出家として活動しています。2011年に『自慢の息子』で第55回岸田國士戯曲賞を受賞、2018年には同作品でフランスのフェスティバル・ドートンヌ・パリに参加。

近作ではKAAT 神奈川芸術劇場プロデュース『ビビを見た!』の上演台本・演出、inseparable『変半身(かわりみ)』の原案・脚本・演出、彩の国さいたま芸術劇場ジャンル・クロスII 『導かれるように間違う』で彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督を務める近藤良平さんとのコラボレーションするなど、演劇界を牽引する存在です。

「こどもたちと一緒に楽しめる、遊べる作品を創りたい」という松井さんの想いから、劇中、出演者が舞台上から客席へ様々な問いを投げかけ、拍手や足踏みで答えてもらい、観客の反応からヒントを得て物語が進む演出など、こどもたち、観客とともに、作品を創り上げていくのが本作の特徴です。

また、上演に先駆けて、松井さんと美術・衣裳の長峰麻貴さんがファシリテーターを務め、地域の小学生を対象とした創作ワークショップを行いました。物語に登場する「すてきな地獄」「人気のない天国」を、各々が絵やコラージュ等で表現し、大きな 1 枚の絵に。完成した作品は、劇中、舞台上に登場するとのことです!

2022 年初演より 撮影:宮川舞子

『さいごの1つ前』は主人公のカオルが、天国と地獄の分かれ道で、なくした記憶を探す物語。天国に行くには「生きていた頃の記憶」が必要なのですが、カオルはその記憶を忘れてしまっています。集まった人間たちはカオルのためにあれこれ考えますが、そこに怪しい人物が現れ…。カオルは無事に天国へ旅立つことができるのでしょうか?

主人公のカオルを演じるのは日本演劇界を代表する俳優・白石加代子さん。舞台『フェイクスピア』や、映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』、ドラマ『だが、情熱はある』とジャンルを超えた話題作に多数出演しています。また、令和4年度日本芸術院の新会員にも選出され、芸歴50年を超えてもなお、活躍の場を広げています。

白石さんは再演にあたり「本作に登場する“地獄”などという禍々しい言葉はもちろん、年齢と共に輪郭がなくなっていく記憶や近づいてくる死というものは、やはり深刻で、暗くて、恐ろしいものとして目を背けたくなるものですが、私個人としては、根っからの楽観主義者ということもありますので、楽しく演じ、松井さんの優しい世界観に再び身を委ねるつもりでいます」とコメント。

2022 年初演より 撮影:宮川舞子

そして、地獄の案内人アキオ役を久保井研さん、ミチロウ役を薬丸翔さん、陰のある少女マリン役を湯川ひなさんが演じます。

舞台『さいごの1つ前』は7月21日(金)~7月24日(月) にKAAT神奈川芸術劇場・大スタジオにて上演。7月30日(日)に神奈川・ハーモニーホール座間 小ホール、8月6日(日) に神奈川・逗子文化プラザ なぎさホールの神奈川県内ツアーが行われます。

その後、全国ツアーを実施。8月13日(日)に福岡・久留米シティプラザ 久留米座、8月19日(土)・20日(日)に長野・まつもと市民芸術館 小ホール、8月26日(土)に岐阜・美濃加茂市文化会館(かも~る) ホールでの上演です。詳細は公式サイトをご確認ください。

内気な少女が繰り広げる一夜の大冒険 音楽劇『くるみ割り人形外伝』

キッズ・プログラム3作目は、劇作家・演出家として活躍している根本宗子さんが演出を手掛ける音楽劇『くるみ割り人形外伝』。引っ込み思案な少女が、大好きな人形とともに一夜の冒険をくり広げ、大切なものを見つける“根本版”の『くるみ割り人形』となっています。

作・演出を務めるのは根本宗子さん。19歳で劇団・月刊「根本宗子」を旗揚げし、全作品の脚本・演出を務めている根本さん。2015年上演の『夏果て幸せの果て』は、第60回岸田國士戯曲賞最終候補作品に選出、2020年上演の『もっとも大いなる愛へ』は第65回岸田國士戯曲賞の最終候補作に選出されました。

近年では、WEBドラマ『女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。』や、ショートムービー『Heavy Shabby Girl』の脚本を手がけるなど、演劇以外でも精力的に活動中。2022年には、原作・脚本を手がけた映画『もっと超越した所へ。』が公開。2023年1月には根本さんが脚本・演出を務め、高畑充希さんが主演の舞台『宝飾時計』が上演されました。

根本さんは今回初めてキッズ・プログラムを手掛けるにあたり「お芝居も・踊りも歌も取り入れて舞台の面白さを味わい尽くす、そして自分の意思で自分の道を切り開くことの大事さを伝える、そんな作品が創りたい」と意気込みました。

音楽・演奏を務めるのは姉妹ユニット「チャラン・ポ・ランタン」の小春さん。映画やドラマ、舞台への楽曲提供・イラスト・執筆、動画編集など多岐に渡って活動しています。KAATで2020年に上演した、別冊「根本宗子」 第8号「『THE MODERN PLAY FOR GIRLS』女の子のための現代演劇」などで、これまでにも根本さんとのコラボレーションを重ねてきています。
「チャラン・ポ・ランタン」のももさんは歌い手として出演します。

そして衣装には、刺繍をベースに、ロマンチックで幻想的なコレクションで注目されている若手ファッションデザイナー・タナカダイスケ(tanakadaisuke)さんが参加。初めて手掛けるという舞台衣装にも注目です!

いつも自分の世界にこもって、幼い頃から大切にしている“ウサギの人形 キャロル”とだけ会話している引っ込み思案な少女・クララ。ある日両親から「もっと人と会話をして、自分の意見をもちなさい。」とキャロルを取り上げられてしまいます。

その夜、クララはこっそりキャロルを見つけ出しますが、魔法使いが現れ「世界中からクリスマスを奪い取った」と告げられます。クララは、キャロルを連れて、クリスマスを取り戻すために冒険の旅に出かけるのでした…。

主人公の少女クララ役を演じるのは、オーディションで選ばれた大橋凜乃さんと澤田杏菜さん。W キャストで演じます。

クララの大切にしているウサギの人形キャロル役には、中村屋の部屋子として幼い頃からキャリアを重ね、本作が現代劇初挑戦となる中村鶴松さん。

物語の案内人役に、近年では音楽劇 『クラウディア』への出演や、『フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜』では青年ラオウ役を、人気漫画の初の舞台化となった舞台『鋼の錬金術師』では主人公エドワード・エルリック役を務めた一色洋平さん。

強くなったクララ役に、数々のコンクールで受賞歴を持つ振付師・ダンサーで、女性アイドルグループ METAMUSE(旧・ZOC)の雅雀り子としても活躍する山之口理香子さんと個性あふれる魅力的なキャストが揃いました。

音楽劇『くるみ割り人形 外伝』は、8月5日(土)~8月13日(日)にKAAT 神奈川芸術劇場・大スタジオにて上演。その後、8月19日(土)愛知・穂の国とよはし芸術劇場 PLAT 主ホール、8月26日(土)・27日(日)長野・まつもと市民芸術館 小ホール、9月10日(日)福岡・北九州芸術劇場 中劇場にて上演です。

KAAT キッズ・プログラム2023」上記3作品を通しでご覧いただける特典付きセット券を販売!
お子様はチケット料金が3,000円というとてもお得なチケットとなっています。チケットかながわの電話・窓口・WEBで取り扱いがされています。(※前売りのみ、枚数限定での発売です)詳細は公式HPにてご確認ください。

チケットぴあ
ミワ

3作品どれもタイプが違い、大人も子どもも創作意欲が刺激されるような作品群。この観劇が、舞台への興味や親子のコミュニケーションのきっかけになったら嬉しいですね!