日々、多くの作品が上演されている小劇場演劇。どれを観たらいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。今回は、Audience編集部が独断と偏見で、8月に上演している作品の中からおすすめ作品を3本セレクトしてみました!

“恐怖”を探求するSF作品。若手注目劇団・南極ゴジラ『怪奇星キューのすべて』

「南極ゴジラ」は2020年に誕生した、9人+1台の劇団。インスタライブを活用した生配信劇や、写真家やバンドが舞台上で俳優とセッションするなど、演劇を観たことがない人でも楽しめる作品を発表。2022年には小劇場の若手団体が多く参加する佐藤佐吉賞において、「最優秀作品賞」「最優秀賞演出賞」など異例の5部門での受賞を果たした注目の劇団です。

新作公演『怪奇星キューのすべて』は、「こわい」が生活必需品の地図に載っていない不思議な惑星が舞台。そこにやってきた宇宙飛行士たちと、“こわい”を貨幣のようにやりとりし生活している異星の住人たちが、奇妙なできごとに巻き込まれて…。

人間が持つ根源的な”恐怖”を探求するSF作品。音楽の生演奏や、即興での詩作など、セッションワークも盛り込まれています。

脚本・演出を担当しているのは、こんにち博士さん。SF的なモチーフで奇妙奇天烈な世界観と私的・詩的な人間賛歌が融合する作風が特徴。佐藤佐吉賞2022では、最優秀演出賞、優秀脚本賞を受賞しました。

こんにち博士さんは本作について、「大人になったら怖いものはなくなると思っていたんですが、むしろ年を重ねるにつれて怖いものが増えてきているような気がします。恐怖感情と共生していく毎日の中で「こわい」に立ち向かう力をつけたくて、この物語を書きました」とコメントしています。

南極ゴジラ『怪奇星キューのすべて』は、8月3日(木)〜8月6日(日)に北千住BUoYにて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。

かつて日本で活躍した“活動弁士”たちの栄枯盛衰の物語。あやめ十八番 『六英花 朽葉』

元花組芝居所属の俳優の堀越涼さんが脚本・演出を務める演劇ユニット「あやめ十八番」。歌舞伎や能、浄瑠璃など、様々な日本の古典芸能を基礎とし、古典のエッセンスを現代劇の中に組み込み、現代人の感覚で古典演劇を再構築しています。歌舞伎の下座音楽や落語の囃子に影響を受け、劇中音楽は全て生演奏で上演されます。

『六英花 朽葉』では大正・昭和時代を舞台に、無声映画の活動弁士たちの栄枯盛衰が描かれます。
「活動弁士」とは、無声映画(活動写真)の上映中に、その傍で内容を説明する映画説明者のこと。無声映画が全盛の時代の日本では「活動弁士」が大活躍していました。しかし、映画の技術が発展してトーキー映画が登場すると、彼らの活躍の場は徐々に少なくなっていきました。

本作では、数々の栄誉を手にしてきた郡司葉子という女優が、死に瀕し、何者でもなかった頃の自分を思い出すところから物語が始まります。大正末期から昭和初頭に、活動弁士をしていた葉子。自らを荒川朽葉と名乗り、実兄・荒川木蘭と共に弁士の黄金時代を駆け抜け、トーキーに追い立てられ、“芸”を手放したのでした…。

座・高円寺 夏の劇場11 日本劇作家協会プログラム あやめ十八番 第十五回公演『六英花 朽葉』は、8月5日(土)〜8月9日(水)に座・高円寺1にて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。

真夏にふさわしい“悪い汗”が止まらない濃密なショートストーリーが連発?!劇団かもめんたる『S.ストーリーズVol.2』

岩崎う大さんと槙尾ユウスケさんによるお笑いコンビ・かもめんたるが、個性豊かな俳優陣とともに、ロングコントな演劇世界を開拓する劇団かもめんたる。もりももこさん、土屋翔さん、野口詩央さん、そして2023年6月に加入した宮下雄也さんら個性豊かな俳優たちが所属しています。(関連記事:「粉雪は加藤」で話題沸騰中!ドラマ『ブラッシュアップライフ』の愛され俳優・宮下雄也インタビュー)

演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチさんに「演劇ファンにこそ観てもらいたい」と高く評価されている劇団。シニカルな笑いの中に、人間愛が滲む作風が特徴です。(関連記事:板尾創路×岩崎う大、初対談で語った「演劇とお笑い」の関係性とは?)

2022年1月に上演された劇団かもめんたるオムニバス公演『S.ストーリーズ』は、サスペンス、サッド、スウィート、スキャンダラス、セクシャル、シリー、シリアスと、様々な愛すべきショートストーリーの数々が生み出されました。現在、S.ストーリーズ公演 vol.1『S.ストーリーズ』より「今、西暦何年ですか?」がYouTubeに公開されています。

今回はその『S.ストーリーズ』の第二弾。
脚本・演出を務める岩崎さんは「今回は真夏の公演ということで、皆さまの脳に気持ちの悪い汗をかいていただくような、濃厚なお話を連打したいと考えております。僕は、やっぱりお話というものが大好きなんですね。ですから、「お話マニア」の方々にぜひ劇場にお越しいただきたいです」とコメントしています。

出演者には、かもめんたるの岩崎さん、槙尾さん。劇団かもめんたるから、もりももこさん、土屋翔さん、野口詩央さん。そしてゲストにマギーさん、成松修さん、石井亜早実さん、高畑裕太さん(ハイワイヤ)、犬山イヌコさん(ナイロン100℃)を迎えます。

座・高円寺 夏の劇場12 日本劇作家協会プログラム 劇団かもめんたる S.ストーリーズ公演『S.ストーリーズVol.2』は、8月12日(土)~8月20日(日)に座・高円寺1にて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。

ミワ

夏に相応しい「怖い」物語が演劇作品でも多く見受けられました。溶けそうに暑い日々、劇場に涼みに出かけてみてはいかがでしょう?