ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』のワールド・ツアー版が、2023年7月より日本で開幕。今回、筆者は来日公演のラストを飾る、大阪公演を観劇しました。(2023年8月6日・オリックス劇場)

ニュー・バージョンの『ウエスト・サイド・ストーリー』にわくわく!

ブロードウェイ発のミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』は、1957年の初演以来、世界各地で再演されてきた名作です。

『ウエスト・サイド・ストーリー』では対立関係にある男女が惹かれ合う様子を描いており、まさに現代版の『ロミオとジュリエット』。一方で、人種差別や青少年の非行といった社会問題を提起し、観客の心に深く訴えかける作品でもあります。

この夏来日したワールド・ツアー版は、2022年12月にドイツのミュンヘンで開幕して高評価されたニュー・バージョンです。ブロードウェイで活躍するクリエイターたちが、オリジナルの演出・振り付けに敬意を表しながらどんな物語を紡ぐのか、観劇前から期待せずにはいられませんでした。(関連記事:2023年夏、ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』が来日!日本でブロードウェイの舞台を体感しよう

『ウエスト・サイド・ストーリー』来日公演の見どころは?

筆者にとっては初観劇となる、『ウエスト・サイド・ストーリー』の舞台。全編を通して感動したのは、キャストによる歌の素晴らしさです。トニーが「Something’s Coming」の曲を高らかに歌い上げたシーンでは、何かが起こりそうだという期待感を肌で感じられました。また、今住んでいるアメリカが1番と歌う「America」には、移民女性たちの力強い生き様が表現されています。

さらに、トニーとマリアがお互いの気持ちを確かめ合う「Tonight」のデュエットでは、男性と女性の美しい歌声が重なり、ロマンチックの極み。「One hand,One heart」で、トニーとマリアの恋がより強い愛へと結びついていくシーンも、心揺さぶられました。このほかにも、キャスト陣が自らの心情を歌で雄弁に語ってくれます。筆者は胸がいっぱいになって、最後には涙してしまうほどでした。

ミュージカルの感動は、言語の壁を超える

キャストの歌はもちろんのこと、ダンスにも圧倒されました。ダンスはジェローム・ロビンスによる振付を忠実に再現したといい、ダイナミックな体の動きにバレエの所作が織り交ぜられています。しなやかで躍動感に溢れるダンスは鮮烈な印象で、60年以上も前に考案されたものとは思えません。また、キャスト一人ひとりの動きが伸びやかなので、舞台の限られた空間も広く感じられました。

空間といえば、衣装や舞台セットの演出も見どころのひとつです。対立する不良グループのテーマカラーを設定することで、人間関係の構図をわかりやすくするとともに、舞台を華やかに演出。また、女性陣のドレスはどれも色鮮やかで、目を奪われます。

さらに舞台セットを変形・回転させて、屋外や室内といった場面の転換をスムーズに行っているところにも驚かされました。

何よりも今回の来日公演は、字幕表示があるとはいえ、全て英語で上演されています。しかし、言語の壁なんて全く気にならないくらい、筆者は『ウエスト・サイド・ストーリー』の世界に引き込まれました。こんな感動体験を味わえることこそ、ミュージカルを観劇する醍醐味ではないでしょうか。

もこ

オーケストラの生演奏のもと、キャストのしなやかで力強いダンスや伸びの良い歌声に魅了されっぱなしだった筆者。映画の新旧版とは異なる演出もあり、改めてその違いや意味についても考えてみたくなりました!