日々、多くの作品が上演されている小劇場演劇。どれを観たらいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。今回は、演劇を愛するAudience編集部が独断と偏見で、10月に上演している作品の中からおすすめ作品を3本セレクトしてみました!

「動物愛護」「動物福祉」リーディング劇から考える『ファミリアー』

服部貴康さんが写真を、小川奈々子さんが詩を書いた本『ただのいぬ。』を原案として、瀬戸山美咲さんが脚本を担当するリーディング公演『ファミリアー』。本作では、「動物の愛護及び管理に関する法律」が改正される前の、まだ自治体が市民から動物の引き取りを拒否できなかった頃を描いています。

​ある日動物愛護センターに預けられた犬のもなか。もなかがやってきた日に、新人獣医の山本さんもセンターに赴任してきます。施設長の川西さんの話から、仕事の内情を知らされた山本さんは、犬たちを救いたいと思い始め…。

wag.の主宰を務めている澤口渉さんは本作を上演するにあたり以下のようにコメントしています。

「「14457」
これは、現在の日本の行政における犬猫の殺処分の数です。
この数って、どうなんでしょう。
多いのか、少ないのか。ちなみに10年前に比べるとおよそ12分の1。
この「行政」が出した数字の意味、背景には何があるのでしょう。
そもそもこの国の現状は?

僕自身、この問題について、漠然とは知りつつもまだまだ知識が浅く、想像の範囲も狭い。
猫、飼ってるのに。

今回はこの「動物愛護」「動物福祉」について、瀬戸山美咲さんの「ファミリアー」を上演させていただきながら、考えてみたいと思います。

まずは知ることから。

会場でも少しだけ工夫を織り交ぜつつお待ちしたいと思ってます。
あなたにもちょっと立ち寄っていただけたらうれしいです」

choi wag. 01リーディング劇『ファミリアー』は、10月13日(金)~10月15日(日)に東京・新宿眼科画廊にて上演です。日程により一部の配役で出演者が異なります。詳細は公式HPをご覧ください。

大正時代の女学生たちが未来に託した夢『フートボールの時間』

大正時代に撮影された、女学生たちが笑顔でボールを蹴っている様子が収められた写真。

その写真を元に、女学生たちのドラマを丸亀高等学校演劇部が『フードボールの時間』として舞台化。2018年の全国高等学校演劇大会で最優秀賞を受賞しました。

今回は演劇界気鋭の演出家の一人である瀬戸山美咲さんが戯曲を潤色、そして演出を務め、装いを新たに上演します。瀬戸山さんは、『スラムドッグ$ミリオネア』の上演台本・作詞・演出、そして『ザ・ビューティフル・ゲーム』の上演台本・演出で第48回菊田一夫演劇賞を受賞しています。

良妻賢母になることが女性の理想とされ、男尊女卑が当たり前だった大正時代。本作は、時代の潮流に抗い、女性が活躍できる未来に夢をつなぐ物語となっています。『フードボールの時間』は、10月18日(水)〜10月22日(日)まで岐阜・可児市文化創造センター ala 小劇場にて上演。10月26日(木)〜11月1日(水)まで東京・吉祥寺シアターにて上演です。10月26日(木) 14:00、10月28日(土) 14:00回の終演後には、アフタートークがあります。その後、三重、愛知、栃木、埼玉で上演を予定しています。詳細は公式HPをご覧ください。

清水邦夫の傑作戯曲が甦る『狂人なおもて往生をとぐ』

1969年に発表された清水邦夫さんの戯曲『狂人なおもて往生をとぐ』をTAACが現代に甦らせます。

TAACは、脚本家・演出家のタカイアキフミさんが公演ごとに俳優・クリエイターを集めて活動している劇団です。日本社会が抱える問題を背景にして、人々の「営み」を描き、微かな希望や愛を掘り起こす作風が特徴となっています。
物語の舞台はピンクの照明が妖しげに光る娼家。
大学教授と名乗る初老の男・善一郎は、ここ娼館の女主人・はなの客です。青年・出は女主人のヒモでここから逃げようとしていますが、彼女の優しさから逃れられません。

この娼家には若い娼婦・愛子もいて、彼女の客である若い男・敬二もやって来ます。しばらくして彼らは、善一郎が父親、はなが母親、出が長男、愛子が長女、敬二が次男と、まるで家族であるかのように家族ごっこを始めます。

しかし、敬二の婚約者のめぐみが家を訪れたことにより、家族ごっこはごっこではなく、彼らが本当の家族であることが徐々に明らかになっていきます。青年・出は精神を病み、妄想に取り憑かれており、その妄想に他の家族はつきあっているのでした。

なぜ、彼は狂気に追いやられたのか。そして、この家族が抱える秘密とは…。

舞台『狂人なおもて往生をとぐ』は10月27 日(金) ~ 11月1日 (水)に下北沢​ 小劇場B1にて上演です。詳細は公式HPをご覧ください。

ミワ

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