2012年公開の映画『鍵泥棒のメソッド』を原作に、マギーさんが上演台本・演出を手がける舞台『鍵泥棒のメソッド→リブート』。舞台版としてコメディ要素を増量し、2024年1月から本多劇場で上演されます。主人公の売れない若手俳優・桜井役を務めるのは、映画『ソロモンの偽証』での怪演が話題となり、ドラマ『アンナチュラル』『3年A組−今から皆さんは、人質です−』などに出演、本作が舞台初主演となる望月歩さん。本作にかける意気込みを伺いました。

桜井は、役者である自分の別の世界線にも思える

−映画『鍵泥棒のメソッド』を当時中学生でご覧になっていたとのことですが、当時と今見返してみての印象の違いはありますか？
「公開当時はとにかく笑って、面白いなという印象でした。でも今見返してみると、面白さはもちろんあるのですが、このお芝居すごいな、掛け合いすごいな、カメラアングルや脚本の伏線がこうなっているから面白いんだとか、大人になって気づけたことが多かったです」

−舞台版『鍵泥棒のメソッド→リブート』の台本を読んでみていかがでしたか。
「舞台版では、街裏ぴんくさんの漫談が取り入れられています。街裏ぴんくさんの漫談は実際に観に行かせていただいたのですが、めちゃめちゃ面白くて。街裏ぴんくさんの漫談があることで、僕ら役者が客席に向かってモノローグを話しても不自然に感じにくいですし、すっと作品に入っていけるのが面白さになっていると思います。また、桜井・コンドウ・水嶋・綾子の4人の濃密な掛け合いは、舞台ならではの見どころですね」

−物語の面白さはどういう点に感じますか？
「勘違いの連続が重なっていくのですが、みんな全力で。この人にはこう見える、というのが各キャラクターにあって、それが重なっていくことが面白さになっていくのだと思います」

−桜井は映画ではかなりクズなキャラクターとして描かれていましたが、舞台『鍵泥棒のメソッド→リブート』の主人公・桜井はどのようなキャラクターだと捉えていますか？
「良い子だと感じました。役者として逃げている部分は良くないけれど、殻を破れていないだけで、こじれてはいないキャラクターなので。優しくしてくれた人をすぐに良い人だと思ってしまったり、見る目がないのに見る目があると思ってしまったりするところは自分に近いのかなと思います」

−どのように役作りをしていこうと考えていますか？
「桜井は役者を志しながら小さなエキストラの仕事がたまに来るという設定で、僕自身も“今仕事が全部なくなったらどうするんだろう”ということは考えることなので、常日頃感じることが活かせるのではないかなと思います。ある意味、僕の別の世界線のように考えていますが…セリフにある“お前は役者の端くれだ”と実際に言われたら、泣きそうになる気がしますね」

−コメディ作品への出演という点はいかがでしょうか。
「怖いですし、難しいですね。役者のエゴでアドリブを入れることで、作品のテンポが変わって面白くなくなっちゃう部分が絶対あると思うので、そこは見極めながらしなきゃいけないなという気持ちがすごくあります。ただ桜井が全力であることが面白い作品ですし、シチュエーション自体が面白いので、自分はアドリブを意識せず、全力で桜井をやることが良いのかなと考えています。マギーさんは「信じて準備しないでおいで」と言ってくださって…でもそれは無理じゃないですか（笑）。だから頑張ろうと思っています」

前回の舞台では、共演者が「アメコミのスーパーヒーロー」に見えた

−作品に入る前は、いつもどのようなことを準備されているのでしょうか。
「舞台に出演するのは2回目で、前回出演した時は高校生でした。初めてだったので、映像と同じ準備をしていたのですが、皆さんの瞬発力が凄くて驚きました。映像では段取りの段階でも、舞台稽古ではすぐに華やかな動きを付けられていたので、今回は自分もそう出来るよう、事前に気持ちの整理をしていこうと思っています」

−舞台と映像の違いはどういった部分に感じましたか？
「『真田十勇士』という作品で、武将の役ということもあって、共演者の皆さんがアメコミのようなスーパーヒーローに見えたんです。当時僕が映像で関わっていた作品は、もっと人間らしい、生っぽいものが多かったので、それと正反対のような描き方で、凄く違いを感じました」

−今回は本多劇場で主演ですが、プレッシャーはありますか。
「映像の現場でもよく“本多劇場でやるんだね”“すごいじゃん”とお声がけいただいて、日に日にプレッシャーが増えています。でもありがたいプレッシャーだとは感じていて、これは頑張らなきゃだめだという気合いがどんどん高まっていますね」

−この作品のテーマはどういったところにあると思われますか？
「笑える作品ですので、とにかく楽しんで帰っていただきたいなというのが一番です。僕が演じる桜井は挫折したところから始まるので、桜井の姿が背中を押すというところまでいかなくても、何か良い気持ちになっていただけたらと思います。僕自身、台本を読んだのが夜中で、次の日凄く早い日だったので大変だったのですが、“でもこんな面白いものを読んだから明日頑張れるわ”と思えたんです。台本だけでも前向きな気持ちになれたので、そういった力を持っている作品だと思っています」

−本作をどのように楽しんでいただきたいでしょうか。
「全員が色々なキャラクターを演じるので、別の役で出てくることで笑えるシーンも多くて、マギーさんが練られた計画がたくさんあります。それを僕らがまっすぐ演じたらとても面白くなると思いますので、ぜひ笑いに来ていただけたら嬉しいです。1人で重く受け止める作品ではなく、終わった後に色々と話したくなる作品なので、仲の良い方と一緒に見ていただけたら嬉しいです」

舞台『鍵泥棒のメソッド→リブート』は2024年1月11日（木）から1月21日（日）まで東京・本多劇場、1月27日（土）に大阪・森ノ宮ピロティホールで上演が行われます。チケットの詳細は公式HPをご確認ください。