世界中で愛されているブロードウェイミュージカル『王様と私』。代表曲の「Shall We Dance?」は、フレーズやメロディに聞き覚えのある方もいるのではないでしょうか?日本でも数々の名優たちによって演じ継がれてきた名作が、新たなキャストと演出のもと、2024年4月に日生劇場で開幕します。

ミュージカル『王様と私』の輝かしい歴史

『王様と私』は、1951年にブロードウェイにて初演されたミュージカル作品です。1860年代のシャム(現在のタイ)を舞台に、国王とイギリス人の家庭教師アンナが次第に心を通わせていきます。

脚本と歌詞はオスカー・ハマースタイン二世、音楽はリチャード・ロジャースが担当。2人は、『オクラホマ!』『回転木馬』『サウンド・オブ・ミュージック』といった名作の生みの親として知られています。

そんな黄金コンビによるミュージカル『王様と私』は、1952年の第6回トニー賞で、作品賞と主演女優賞を含む5部門を受賞しました。その後、何度もブロードウェイで再演されるとともに、ツアーで世界各地を巡演しています。

また、1956年には、ブロードウェイの舞台と同じくユル・ブリンナーが王様を演じた映画版も公開。第29回アカデミー賞において9部門にノミネートされ、主演男優賞を含む5部門を受賞と、こちらも高く評価されました。

日本における『王様と私』の初演は、1965年。王様を市川染五郎(現 二代目松本白鸚)さん、アンナを越路吹雪さんが演じました。また、1990年から1991年にかけて、日本初演時に王様役だった九代目松本幸四郎(現 二代目松本白鸚)さんがイギリスに招聘され、200回以上も王様役を務めています。

さらに、2015年に行われたニューヨークのリンカーン・センターでのリバイバル上演では、渡辺謙さんが王様役に。第69回トニー賞の9部門にノミネート、再演ミュージカル作品賞他4部門を受賞して話題となりました。このプロダクションは、2019年に日本の東京でも公演を行っています。

東宝製作による公演としては、2000年1月の博多座公演以来で約24年ぶり。日生劇場での公演から数えると、1996年9月以来、なんと28年ぶりになるんです。

物語と音楽が伝えるテーマとは

ミュージカル『王様と私』では、立場や文化の異なる男女が惹かれ合っていく姿を描いています。19世紀後半、シャムの王に招かれて王都バンコクにやってきた、イギリス人将校の未亡人アンナ。王は欧米列強の脅威に晒される国を守るため、近代化の一環として子どもたちに西洋式の教育を受けさせようと、アンナを家庭教師として雇ったのです。

出会った当初、2人はなにかと対立を繰り返していました。しかし、お互いの内面に触れるにつれ、愛情が芽生えていきます。有名な楽曲「Shall We Dance?」が流れるのも、王とアンナが心を通わせるシーンです。アンナが王にダンスのステップを教えるなかで、やがて2人は手を取り合い、踊り始めます。

このほかにも、美しいバラードや愛に満ちたデュエットなど、どれも印象的な楽曲ばかり。たとえ国や身分が違っても、互いにわかり合えるという希望を込めたストーリーを盛り上げます。

新しい演出で描かれる『王様と私』

今回の公演では、ミュージカル初出演となる北村一輝さんが、国の未来を背負う王様役にキャスティング。また、家庭教師のアンナ役は、元宝塚歌劇団花組トップスターの明日海りおさんです。宝塚歌劇団の退団後も『エリザベス・アーデンvs.ヘレナ・ルビンスタイン-WAR PAINT-』『精霊の守り人』など、精力的に舞台で活躍されています。

そして翻訳・訳詞・演出を担当するのは、演出家の小林香さん。数々の海外ミュージカルを手がけた実績を持ち、明日海りおさんの20周年記念コンサートの演出にも携わっています。

今なお争いの絶えない世界だからこそ、『王様と私』の持つテーマは、私たちの心に深く響くのではないでしょうか。

フレッシュなカンパニーによる2024年版『王様と私』、ぜひ劇場へと足を運んでみてくださいね。(関連記事:北村一輝×明日海りお×小林香、新演出で「勇気」を持って不朽の名作に挑む。ミュージカル『王様と私』製作会見リポート

ミュージカル『王様と私』は、2024年4月9日(火)から4月30日(火)まで、日生劇場にて公演。その後、5月4日(土)から5月8日(水)に梅田芸術劇場で公演されます。2月17日より、チケットの一般前売が開始。詳細は公式HPにてご確認ください。

もこ

筆者も観劇予定の『王様と私』。70年以上前に初演されたとは思えないほど、作品のテーマには現代に通じるものがあると思います。2024年版としてどんな演技、演出がなされるのか、今からとても楽しみです。