2024年4月22日より東京のシアタークリエにて、ミュージカル『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ』が開幕します。ミュージカルとしては2022年に続き2年ぶりの再演。今作に登場するヴァイオリニストのニコロ・パガニーニは19世紀のヨーロッパに旋風を巻き起こし、人々を熱狂させました。今回は作品の解説と共にパガニーニの人物像について紹介します。
藤沢文翁オリジナル作品の朗読劇をミュージカル化!
ミュージカル『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』は、2012年に上演された同名の音楽劇を2022年にミュージカル化した作品。2024年4月に約2年ぶりの再演となります。
人々が音楽に魅了された19世紀、ヨーロッパを熱狂の渦に巻き込んだ天才ヴァイオリニストのニコロ・パガニーニ。彼には、悪魔と契約し魂と引き換えに音楽を手に入れたという噂が流れていました。
天才と呼ばれながらも自分の才能に限界を感じ周囲からの期待に追い詰められていたパガニーニは、ある日街外れの十字路で悪魔のアムドゥスキアスと血の契約を結びます。それは、命と引き換えに最高のメロディー100万曲を演奏できるというもの。パガニーニは美しい音楽を奏でながら、少しずつ死へと向かっていくのでした。
『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』は、音楽朗読劇『VOICARION』シリーズの原作・脚本・演出を手がけた藤沢文翁さんのオリジナル作品。藤沢さんは2022年に上演されたミュージカル版の原作・脚本・作詞・演出も担当しています。今回は藤沢さんのスケジュールの都合上、末永陽一さんに演出を託したとのこと。末永さんは、ミュージカル『エリザベート』や『モーツァルト!』の演出助手も担当しており、今作の演出にも期待が膨らみます。
ヴァイオリニストのパガニーニを取り巻くキャスト陣!中川晃教・相葉裕樹・山寺宏一・畠中洋が続投
音楽の悪魔アムドゥスキアスを演じるのは、ミュージカル『モーツァルト!』の日本初演で主演を務め、2016年の『ジャージー・ボーイズ』で演じたフランキー・ヴァリ役で第24回読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞した中川晃教さん。悪魔と契約する天才ヴァイオリニストのニコロ・パガニーニ役にはWキャストとして共に『レ・ミゼラブル』でアンジョルラス役を演じた相葉裕樹さんと木内健人さん。
ジプシーの娘アーシャ役にWキャストとして加藤梨里香さんと有沙瞳さん。ナポレオン皇帝の妹エリザ・ボナパルト役に元榮菜摘さん。パガニーニのヴァイオリン教師コスタ役、エクトル・ベルリオーズ役の2役を坂元健児さん。パガニーニに仕える執事アルマンド役にWキャストとして山寺宏一さんと畠中洋さん。そしてパガニーニの優しい母テレーザ役に春野寿美礼さんが出演。
中川さん、相葉さん、畠中さん、山寺さんは2022年からの続投キャストとなります。中毒性が高く、「追いチケ」をしたという方も多く見受けられた話題作。パガニーニだけでなく、私達観客もどこまで中川さんが演じるアムドゥスキアスに操られるのか。見応えがあり、心に刻まれる作品となりそうです。
パガニーニの人生。父親から虐待に近いレッスンを受けた少年時代
ニコロ・パガニーニは1782年10月27日に北イタリアの港町ジェノヴァで、父アントニオと母テレーザの3番目の子供として誕生。父は港で荷下ろしの仕事をしながらマンダリン弾きをしていましたが、パガニーニは父が持っていたもうひとつの楽器ヴァイオリンに興味を持ちます。
偶然パガニーニの演奏を聴き才能に気付いた父は、パガニーニの演奏でお金を稼ごうとヴァイオリンのレッスンを開始。父はパガニーニを一日中練習漬けにして、ミスをすると暴力をふるったり食事を与えなかったりなど虐待とも言える日々が続きました。元々病気がちで貧弱だったパガニーニは、十分な栄養を摂取できなかったことでさらに健康を損なうことになります。
一方でパガニーニは父以外にも多くの講師からヴァイオリンを学びました。父の友人であるジョヴァンニ・セルヴェット、ジェノヴァトップのヴァイオリニストで大聖堂聖歌隊の指揮者でもあるジャコモ・コスタ、フェルナンド公の室内楽奏者ガスパーロ・ギレッティなど。14歳の頃にはその驚異的なテクニックから「まるで悪魔の幻影を見ているようだ」と言われたことが記されています。
イケメンで女性好き、ギャンブル依存。観客を熱狂させる魅力的な演奏
パガニーニは父親譲りの大のギャンブル好き。コンサートで稼いだお金をつぎ込むだけでなく、公演前日に全財産とヴァイオリンを賭けて負けてしまい、ヴァイオリンを失うという事件もありました。その場に現れたフランスの商人がパガニーニにヴァイオリンを譲り、ピンチを切り抜けたというエピソードが残されています。
また若い頃のパガニーニは色白なイケメンでヴァイオリンの才能もあったため、女性からとてもモテました。ナポレオン・ボナパルトの妹であり今作にも登場するエリザ・ボナパルトとその妹のポーリーヌ・ボナパルトは、姉妹でパガニーニを取り合ったとも言われています。
プライベートでは自堕落な生活をしていても、ひとたびヴァイオリンを演奏すると人々はパガニーニの魅力に取りつかれます。ウィーンでのデビュー公演後にはパガニーニブームが巻き起こり、パガニーニグッズの販売やパガニーニヘアの流行など大旋風が巻き起こりました。
パガニーニが悪魔のヴァイオリニストと呼ばれた理由!風貌や演奏テクニックとミステリアスな雰囲気
ミュージカル『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』では、悪魔という存在を架空のキャラクターであるアムドゥスキアスで表現。パガニーニが悪魔と契約して100万曲のメロディーを奏でるという設定になっています。
実在したヴァイオリニストのパガニーニも、演奏テクニックや風貌などから「悪魔のヴァイオリニスト」と呼ばれていました。幼い頃から病弱で色白だったパガニーニは手足が長くやせ細っており、ステージではマントに黒ずくめの衣装を着用。さらに無口でミステリアスな雰囲気が悪魔のような印象を抱かせました。
超絶技巧で観客を惹きつける演奏と、悪魔ブームであった19世紀の時代背景もあり、悪魔に魂を売り渡したという伝説のようなエピソードが残されているのです。
ヨーロッパの市民だけでなく多くの音楽家たちに影響を与え人生をも変えたパガニーニは、1840年5月27日に57歳で生涯を終えました。パガニーニについてはここでは語りきれない壮絶なエピソードが数多く残されているので、観劇前に深く知るのもおすすめです。(参考文書:『悪魔と呼ばれたヴァイオリニストパガニーニ伝』著者 浦久俊彦、『哀しみのヴァイオリニスト人間パガニーニ伝』著者 スティーヴン・サミュエル・ストラットン、訳角英憲)
ミュージカル『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』は2024年4月22日から5月12日まで東京のシアタークリエにて上演。その後5月17日から19日まで大阪の新歌舞伎座、5月24日から26日まで福岡の博多座にて上演されます。詳細については公式サイトをご覧ください。
パガニーニが悪魔と血の契約をしてしまうという興味が惹かれるストーリー、悪魔のイメージがない中川晃教さんが演じるアムドゥスキアスなど期待しかない作品。どっぷりと世界観に浸れそうな予感がします。