日々、多くの作品が上演されている小劇場演劇。どれを観たらいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。今回は、演劇を愛するAudience編集部が独断と偏見で、5月に上演している作品の中からおすすめ作品を3本セレクトしてみました！

“ケア関係”の相手と「結婚」できるようになった世界では、「結婚」はより便利で幸福になりうるのか 趣向『べつのほしにいくまえに』

趣向は、2010年にオノマリコさんの1人ユニットとして発足しました。2015年の1月〜2月に『奇跡の年 ANNUS MIRABILIS』、『解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話』と連続公演を行い、注目を集めました。また、『THE GAME OF POLYAMORY LIFE』は、第61回岸田國士戯曲賞最終候補作にノミネートされています。

2023年には俳優の大川翔子さん、前原麻希さんが加入して、劇団化。今作『べつのほしにいくまえに』が劇団化してから初めての新作公演となります。

『べつのほしにいくまえに』では、少し未来のとある国を舞台として、哲学者エリザベス・ブレイクの『最小の結婚』を参考に、成人間の恋愛関係ではなく、成人間の“ケア関係”によって「結婚」が行われるようになった世界を描きます。

徐々に下がる婚姻率に危機感を覚えた政府は「互助・共助のための結婚法」を立案、施行しようとします。それは、性別や人数、恋愛関係の有無に関わらず、ケア関係にある人間たちが「結婚」できることになる法律。

これにより恋愛関係にある男女はもちろん、同性カップルの結婚も可能になり、友情関係から結婚を選ぶ人々も増加し、婚姻率は15年ぶりに上昇します。家制度や恋愛から解き放たれた「結婚」はより多くの人生を生きる方へ導くのか。

ヘレナとハーミア（『夏の夜の夢』）など、シェイクスピア作品から名を借りた登場人物たちによって語られる「結婚」についての物語となっています。

「結婚」によって配偶者に与えられる、在留や居住、扶養制度、手術時の同意や、刑務所での面会などの特別な権利を、友だち同士やケアを約束した関係で使うことができるようになったら、「結婚」はより便利で、人々の幸福に貢献する制度になるのでしょうか。それとも、周囲に恵まれた人間しか利用できないものなのでしょうか。

出演者には、梅村綾子さん（文学座）、海老根理さん、大川翔子さん（趣向）、納葉さん、KAKAZUさん、かとうしんごさん、小林春世さん（演劇集団キャラメルボックス）、多賀名啓太さん、箱田暁史さん（てがみ座）、前原麻希さん（趣向）、松村ひらりさん、村松えりさん、和田華子さん（青年団）、渡邉とかげさんが名を連ねています。

趣向『べつのほしにいくまえに』は、5月23日（木） 〜 5月26日（日）に、神奈川県横浜市のスタジオHIKARIにて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。

ONEOR8が若手俳優10名と作り上げる青春群像劇『かれこれ、これから』

ONEOR8は、1998年に旗揚げした劇団。作・演出を田村孝裕さんが、座長を恩田隆一さんが務めています。日常に起こりうる可笑しみや痛み、少しの毒気を持ち合わせた物語で、切なくも笑える、しばらくあと味の残る作品を目指して創作を行っています。

ONEOR81年半ぶりの公演は、作・演出を務める田村さんの「若手俳優と芝居を作りたい」という熱望により集まった10名の若手俳優たちが出演します。

出演者には、恩田隆一さん、冨田直美さん、山口森広さん、保倉大朔さん、異儀田夏葉さん、富川一人さん、オツハタさん、田久保柚香さん、佛淵和哉さん、山科連太郎さん、岡田帆乃佳さん、金井美樹さん、大城智哉さん、小林桃香さん、小笠原遊香さん、中野亜美さんが名を連ねています。

『かれこれ、これから』とあるシェアハウスに住む10数名の男女が織りなす、必然的に生まれた恋愛にまつわる悲喜交々の物語です。人生を賭けたかれこれ、その岐路に立つこれから。生きる活力に満ちあふれたキラキラとした群像劇をぜひご覧ください。

ONEOR8『かれこれ、これから』は5月31日（金）〜6月9日（日）に東京・新宿シアタートップスにて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。

100万年前に生きた彼らは、どのように生き、なぜ滅びたのか 劇団あはひ『ピテカントロプス・エレクトスーあるいは私たちはどこから来たのか、私たちはどこへ⾏くのか？ー』

劇団あはひは、2018年に旗揚げされた1998年生まれの6名によって構成されているアーティストグループです。劇団公演の全ての作品の作・演出を大塚健太郎さんが手がけています。能やシェイクスピア劇といった東西の古典をリミックスし、現代の新たな演劇として提示する手法が高く評価されています。

新作公演『ピテカントロプス・エレクトスーあるいは私たちはどこから来たのか、私たちはどこへ⾏くのか？ー』は、過去から現在を見つめ、未来を照射する喜劇四幕の物語。

百万年前の地球。端々にまだ猿の名残を感じさせますが、二本の足で立ち、道具や火も楽々と扱いこなす者たちが繁栄しています。彼らは、直立(Erect)する猿(Pithekos)と人間(Anthropos)の間、という意味の、ピテカントロプス・エレクトスと、かつて呼ばれていた者たち。

現在では私たちの直系の祖先ではないとされている彼らは、百万年前の地球でどのような暮らしや文化を育んでいたのでしょうか？そして彼らは、なぜ滅びてしまったのでしょうか？

出演者には今村航さん、小川清花さん、上川拓郎さん、川添野愛さん、すずき咲人心さん、鈴木翔陽さん、外山史織さん、野口千優さん、長谷美里さん、美都さん、山上晃二さん、山田健太郎さん、松尾敢太郎さん、踊り子ありさんが名を連ねました。
劇団あはひ『ピテカントロプス・エレクトス』は、5月24日（金）〜 6月2日（日）に、東京・東京芸術劇場シアターイーストにて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。