1994年に単行本が発売され、長年多くの人々に愛されてきたベストセラー小説『西の魔女が死んだ』。生きる力を身につけながら成長してゆく主人公の姿が、性別や年代を問わず感動を与え続けています。その名作が2024年、リーディングドラマとして上演されることになりました。今回は、作品のあらすじやキャストの方々をご紹介していきます。

累計発行部数は260万部以上!『西の魔女が死んだ』とは?

小説『西の魔女が死んだ』は、梨木香歩さんのデビュー作。主人公は、中学生の少女まいです。

中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなってしまったまいは、季節が初夏へと移り変る約1ヶ月を、森で暮らす「西の魔女」のもとで過ごすことになります。「西の魔女」とは、ママのママのこと。本物の魔女である英国人のおばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受けることになります。

早寝早起き。ごはんをしっかり食べて、よく運動し、規則正しい生活を送ること。まいは戸惑いながらも、料理、掃除、洗濯、庭づくり……と、毎日懸命に励んでいきます。そこでの生活には、他とは全く違う時間が流れていました。

命は、単純で素朴な法則のもと、淡々と生きています。その時間の中で、まいは命の再生を感じるように。そして魔女修行の肝心かなめは、「何でも自分で決める」ことだと気づきます。

喜びも希望も、幸せも。自分の生きる道は自分で決めることも。おばあちゃんとの魔女修行を通じて、少しずつ、しかし力強く成長してゆく、少女の心の物語です。

置かれた場所で咲く花はたくましい。でも、咲く場所を求め続ける花も尊いはず。大切なのは、どこで咲くかではなく、どのように咲くか。そのことを伝え、そっと包み込んでくれる、あたたかな作品となっています。

2人の実力派女優が初共演!

今回、「西の魔女」こと、まいの祖母を演じるのは前田美波里さん。そして主人公まいを、生駒里奈さんが演じます。

芸歴60年のミュージカル女優であり、第49回菊田一夫演劇賞では特別賞を受賞した前田美波里さんは、意外にも本作が初めての朗読劇。今までは「朗読の誘いがあっても断ってきた」彼女は、アメリカ人の父と日本人の母との間でミックスとして生まれたことや、自然豊かな場所で育った背景から、「この作品が自分と重なるところがたくさんあった」と話しています。

また、生駒里奈さんは、女性アイドルグループ・乃木坂46においてセンターを6度務めた方で、卒業後は多くの舞台で活躍されています。朗読劇にも多数出演し、近年では『逃げるは恥だが役に立つ』(2019年)、『秒速5センチメートル』(2020年)、『あきた朗読おとぎ芝居』(2024年)など、活躍の幅をさらに広げています。

生駒さんは、幼少期の辛い経験が、学校へ行けなくなったまいに対する感情移入に役立っていると話します。

「学校に行けないまいちゃんの気持ちはわかります。私は母親を悲しませたくなくて、学校へは毎日行ったけれど、自分の感情を消して過ごしていましたから…」そんな彼女がまいを演じるのは、演劇の神様がくれたサプライズなのかもしれません。

人生が重なり合う舞台が幕を開ける!

リーディングドラマ『西の魔女が死んだ』で台本・演出を務める笹部博司さんは、本作についてこのようにコメントしています。

「1994年の発売から時代を超えて読み継がれている特別な作品である。その特別をどう説明すればいいのか。一編の小説を超えた何かとでもいえばいいのだろうか。その作品に出会うことによってその人の人生が変わる、『西の魔女が死んだ』には確かにそんな力がある。」

「演劇とは、今起こっていること、ドキュメンタリーであると思っている。前田さんと生駒さんの『西の魔女が死んだ』お二人の人生が重なり合う、特別な舞台になる。そんな予感がする。」

それぞれのバックグラウンドを持って朗読劇に挑む、前田さんと生駒さん。このお2人でしか実現できない『西の魔女が死んだ』の世界が、劇場で待っているはずです。「最近何だか元気が出ないな」「誰かに背中を押してもらいたいな」そんな方はぜひ、あたたかいエールを受け取りに行ってみてください。

リーディングドラマ『西の魔女が死んだ』は、2024年6月25日(火)から27日(木)まで東京の草月ホール、6月29日(土)に秋田の由利本荘市文化交流館カダーレで上演される予定です。詳しい情報は公式HPをご覧ください。

さよ

キャストのお2人はもちろんですが、個人的には舞台で流れる音楽にも注目しています!演奏はヴァイオリニスト髙木凜々子さんが担当され、最終日は生演奏が楽しめるとのこと。音楽やコンサートが好きな方も、この機会に演劇の世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか?