劇場全体が赤い世界に包まれ、右手には象、左手には風車のオブジェ。音楽は約70曲のポピュラーミュージックを、日本を代表するアーティストたちが訳詞。圧倒的な世界観で魅了する『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』が今年も帰ってきます。20日の初日を前に、囲み取材にメインキャストが登壇しました。
ドラマ性を深め、パワーアップした再演に
囲み取材には、サティーン役の望海風斗さん・平原綾香さん、クリスチャン役の井上芳雄さん・甲斐翔真さん、ハロルド・ジドラー役の橋本さとしさん・松村雄基さん、デューク役の伊礼彼方さん・Kさんが登壇し、昨年の手応えと今年の意気込みを語りました。
望海風斗さんは「去年は日本で初めて上演するということで、セットも音楽も壮大で、追われていた部分もありながらも、公演を重ねるにつれてお客様と一緒に作っていった感覚がありました。こちらがエネルギーを出し切るというより、お客様も一緒にエネルギーを出して一緒に熱く盛り上がる作品なんだなと感じて。今年はそれを知った状態でお互いにスタートできるので楽しみ」と本作ならではの観客との一体感を語ります。
平原綾香さんはまだ開幕前ながらも「来年はないんだなという寂しさが強くて」と語り、キャストの皆さんから「早いよ!」とツッコミが。平原さんは昨年、『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』のオーストラリア公演とニューヨーク公演を観劇したそう。「それぞれの良さがあったのですが、日本の良さもあるんだなと。海外作品を日本でリメイクしただけじゃなくて、日本でやるための、日本での演出もあるのだと感じました。ギリギリまで細かく演出をしてくださっているので、今年はまた去年とは違う日本だけの公演ができるような気がしています」と日本版ならではの魅力を語ります。
海外での『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』については「お客さんのノリが劇に参加しているような感じなんです。例えば誰かがちょっといけないことを言ったら、“あぁー”と言ったりとか」と観客の反応の違いを語りました。
井上芳雄さんは「去年は初めてだったので、みなさんどんなものなんだろうと思っていたと思うんです。豪華な分、チケット代も上がっていっちゃうし。今年はちょっとだけまた上がったんですけれど…こういうのは言っていったほうが良い(笑)。ただ僕たちはそれに見合うもの以上のものをお届けしようと頑張っていますし、結果、去年はすごく盛り上がって嬉しかったです。今年は落ち着いて稽古もしましたし、深められていると思います。華やかな要素はもちろんありながらも、今はノート(演出家やクリエイティブチームからの言葉)はお芝居のことばかりで。ドラマも深まってパワーアップしてお届けできると思うので、この夏、思う存分、僕たちも楽しく味わいたい」と今年の進化を語りました。
甲斐翔真さんは昨年の公演について「日本でこれだけ大きな作品を成功できたこと、千穐楽を迎えられたことが大きな手応えでしたし、クリスチャンとして物語を届けきれたことが、僕にとって財産になりました」と振り返ります。また公演後に実際にパリの街並みやムーラン・ルージュに訪れたことに触れ、「去年は想像でやっていたことが、五感で味わって具体的になったので、よりこのパリの物語を鮮明に届けられると思う」と意気込みました。
橋本さとしさんは「大体2年後とか3年後に再演することはあっても、次の年に再演するというのは経験したことがなくて。だから不思議ですね。1年ぶりとはいえ、ずっとやり続けていたような感じ。稽古でも一緒に色々なことを乗り越えた仲間たちと再会して、ファミリー感があります。ただ1年経って僕は体型がグレードアップしまして、衣装もサイズアップしていただきまして(笑)。脂身たっぷりのこってりしたジドラーをお届けできたらと思います」とチャーミングにご挨拶を。また「何よりも、日頃のストレスを発散して、僕たちと一緒に盛り上がってCAN!CAN!しましょう!」と呼びかけられました。
松村雄基さんはこれを踏まえて「僕は還暦を迎えてもう61歳になりましたので、人生一回終わったと思って。さとしさんのようにこってりとはいかないんですけれどあっさりめのジドラーを(笑)。でも去年よりは、ムーラン・ルージュらしいエロい部分を出していけたら」と意気込みました。
伊礼彼方さんは昨年の公演を「歓声がたくさん聞こえるというのが嬉しかった」と振り返ります。「この作品が日本に上陸したことで、新しいミュージカルの観劇の仕方が根付いてくれたら嬉しい」と語り、「1年後に再演できるというのはなかなかないので、皆さんも忘れないうちにもう一度この真っ赤な世界に浸っていただけたら」とアピールしました。
Kさんは昨年、出演者ながらも何度か本作を観劇したそうで、Kさん自身も「ミュージカルのイメージが変わりました。ロックコンサートのようなお客さんのノリと、音響の大きさと、アレンジが楽しめる」と本作の魅力を体感されたことを語ります。また韓国版のスタッフとお話しされたそうで、「帝国劇場でこの作品を観て、すごく感動されたそうなんです。歴史が刻まれた劇場ですし、椅子の色もマッチしていて、まるでムーラン・ルージュそのものみたいだって。そのステージに立てることを誇りに思います」と日本版、帝国劇場での上演ならではの魅力を語りました。
キャストが口々に語った通り、再演は華やかなダンス・歌はもちろんのこと、ドラマ性を深めた印象に。コミカルさも増したことで緩急がより付き、演劇としての幅広さが感じられます。サティーンが歌う「Firework」では彼女の境遇のやりきれなさと、それでも自分たちの居場所と未来を守るために立ち向かう強さが切々と込められています。
クリスチャンとサティーンによるElephant Love Medleyは、そんなサティーンがクリスチャンの真っ直ぐで、全てを包み込む温かさによって変わっていき、愛を信じようとする姿を丁寧に描きます。
一方で圧巻のオープニングナンバーはもちろん、2幕で一気に惹き込まれる「Backstage Romance」での迫力もパワーアップ。カンパニー全員の力強いエネルギーによって、観ている側もさまざまなことから解放されていく感覚が味わえるはずです。
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』は6月20日(水)から8月7日(水)まで帝国劇場、9月14日(土)から28日(土)まで梅田芸術劇場にて上演が行われます。公式HPはこちら
サティーンが大切な人たちを守ろうとする生き様と、クリスチャンが貫いた愛、ロートレックが何よりも重んじた自由。それぞれのメッセージがとても深められた再演となっています。