俳優・小野田龍之介さんの連載企画「小野田龍之介と春夏秋冬さんぽ」。季節を感じる場所をお散歩しながら、ミュージカルのことはもちろん、小野田さんの近況やこれまでについて様々な視点で掘り下げていきます。今月は夏をめいっぱい感じられる海辺をお散歩!7月12日に33歳のお誕生日を迎えた小野田さんに、33歳の抱負と近況を伺いました。

「大人の階段」を登り始めた33歳

−お誕生日おめでとうございます!33歳になってみてどんなことを感じられましたか?
「子どもの頃から芸能の仕事をしてきて、10代20代を経て、いよいよ大人の階段を登り始めたなという感覚です。役柄としても、ミュージカル『ピーター・パン』のフック船長や『レ・ミゼラブル』のジャベールなど、大人の男性の役が増えてきました」

−年下の俳優さんも増えてきたのではないでしょうか。
「増えましたよね。年下の俳優さんに何かを伝える、という機会も増えてきたので、どう伝えるべきなのか考えるようになったのが、ここ1年くらいだったと思います。芸歴が長い分、演劇の伝統を伝えたいという思いもあるし、先輩を見て感じたエネルギーも渡していきたいと思うけれど、どう手を差し伸べたらそれが伝わるのか。世代や生きてきた環境が違えば考え方が違うこともあるので、そういうことに悩むようになりましたね」

−33歳、最初の作品はミュージカル『ピーター・パン』になりますね。昨年に引き続きの出演となりますが、いよいよ本番を目前にいかがでしょうか。(取材時は開幕前)
「昨年、全国で公演を行ったので、一度台本に立ち返って、余計なものを削ぎ落としたもので、どう新たなインスピレーションが生まれるかを意識して稽古したので、非常に面白く稽古できたんじゃないかなと思います。演出家の長谷川寧さんとの信頼関係も出来上がっていたので、“前回はこうだったけれど、今年はこういう見せ方もトライできるかな”と色々なことをブラッシュアップできました。
あと、フック船長はウェンディの父親役も演じるので、昨年はどうやったらお父さんに見えるかなと考えていたのですが、今年はなんだかしっくり来ていて。“お父さん像”を意識しなくても、このままいれば良いんだなと思えるようになってきました」

−年齢による変化もあるかもしれないですね。そして今年は子どもたちを招いての稽古場披露もありました。昨年の公演を観てミュージカルを始めたという子もいましたよね。
「いましたね。そういう夢を与える作品ってそうないと思います。まず0歳から観られるミュージカルが少ないですし、夏休みの時期に毎年やっているというのも含めて、皆さんの生活に近い作品として輝き続けたら良いなと思います。稽古場に来るという機会もなかなかないだろうから、良い刺激になってくれていたら嬉しいです」

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『レ・ミゼラブル』ジャベール役に挑む心境は?

−そして33歳は『レ・ミゼラブル』にジャベール役で出演されます。アンジョルラス役からの役替わり、そして久しぶりの『レ・ミゼラブル』出演となりますね。
「帝国劇場の作品に関わり続けてきた俳優として、やっぱり帝国劇場の一時閉館前、最後の『レ・ミゼラブル』というのは特別でした。実は今までやってきたアンジョルラス役で最後に出られるチャンスはないだろうか、ということも考えたんです。でもジャベール役で出演することになって、帝劇のクローズというのは終わりではなく、始まりなんだなと今は感じています」

−新キャストや役替わりキャストが多く、ものすごく“始まり”を感じるキャスト陣だなと思いました。
「それはオリジナル・プロダクションのキャメロン・マッキントッシュのチームの意向もあります。世界的に見ても、キャメロンは今、若い俳優のエネルギーがどうスパークするかを楽しんで見ている感じがします」

−ジャベール役に決まった今の心境はいかがですか。
「発表された時は正直、“発表されちゃったよ、もう逃げられないな”という怖さもありました。歴史のある作品に新しい役で出る最初の年というのは、やっぱり手放しにやったー!と喜べる感じではないんです。でもそれを乗り越えた時に俳優は輝くわけだから、正面からぶつかって行こうと思っています。
祈りによって解放されたバルジャンと、祈りによって悲劇的な結末を迎えるジャベールの二面性が表現できたら良いですね。悪役というよりは、自分の使命を全うし、祈り続けた男として演じたいです」

−小野田さんが演じることで、新たなジャベール像が見えてくると思うと楽しみです。
「何度も『レ・ミゼラブル』を観ているお客様が見ても、新鮮なジャベールを生きられたら良いなとは思います。世界でも公演を重ねるごとに、さまざまなジャベールが生まれているんですよ。「スターズ」を歩きながら歌うアクティブなジャベールもいますし。今回は特にガラッとキャストが変わり、衣装も新しくなると思うので、新たな『レ・ミゼラブル』を楽しんでいただけたら嬉しいです。
僕もオーディションでは「自殺」を、今までの日本版ではないような歌い方をしたのですが、海外ではそういう歌い方をするキャストもいるようです。そういうトライが出来たので、オーディションも楽しかったです」

『オールスター合唱バトル』では番組史上初の満点に

−そして先日は、フジテレビ『オールスター合唱バトル』にミュージカル合唱団として出演。番組史上初の満点を達成しての優勝となりましたね。合唱でありながら、楽曲に込められた物語が伝わってきて感動しました。
「それは俳優が歌うからこそ出来たことかもしれないですね。さまざまなジャンルの方々が一つの音楽というものに向き合って過ごしたので、心揺さぶられる一日でした。チームのみんながいたので楽しかったけれども、採点されるというのはなかなか心臓に悪いですね(笑)。審査員には新妻聖子さんがいたので、楽屋まで行って“審査してないで一緒に歌ってよ”とみんなで言っていました(笑)」

−演歌やものまねなどさまざまなアプローチがありましたよね。
「僕はものまね合唱団が好きでしたね。目の前で見て、ものすごく楽しくて。ものまね合唱団が優勝するんだろうなと思っていました。最高でした」

−練習も大変だったのではないでしょうか。
「僕はちょうどミュージカル『20世紀号に乗って』の本番中だったので、なかなか練習に出来ないのも大変でした。合唱団のみんなでアイデアを出し合いながら作っていくことが多かったので、色々と試行錯誤しながら作りました」

−満点という点数はもちろん、パフォーマンスを見てミュージカルの魅力を感じられた方も多かったと思います。
「そうなっていたら嬉しいですね。普段は舞台に立ってミュージカルで歌っている人たちがテレビに出ることで、ミュージカルの歌い方を楽しんでいただけたら。そうやって才能が広がっていくのは良いことだと思います」

撮影:山本春花、ヘアメイク:野中真紀子、スタイリスト:津野真吾(impiger)
衣装:シャツ¥42,900- / アンダーザスキン サングラス¥39,600- / ロッツァ 他、スタイリスト私物

ミュージカル『ピーター・パン』は7月24日(水)から8月2日(金)まで東京国際フォーラム ホールCにて上演。その後、愛知・広島・魚津・大阪公演が行われます。公演情報・チケット詳細はこちら

Yurika

雨予報もあった撮影日でしたが、当日は小野田さんの晴れ男パワーで快晴に!夏を感じられる海での撮影が叶いました。33歳を迎えた小野田さんが演じる、新たなジャベールの誕生も楽しみです。