死神の視点から人間の生死や愛について考えさせられるミュージカル『DEATH TAKES A HOLIDAY』が、2024年9月より東京と大阪で上演されます。宝塚版と同じ演出家・生田大和さんのもと、新キャストで綴られる物語は必見です。

ミュージカル『DEATH TAKES A HOLIDAY』とは

『DEATH TAKES A HOLIDAY』という一文を直訳するなら、「死が休暇を取る」でしょうか。ちょっと怖くて不思議なタイトルに、思わず興味をそそられます。

このミュージカルの原作は、イタリアの劇作家、アルバート・カゼッラによる1924年の戯曲『La morte in vacanza』を基に、ウォルター・フェリスが1929年に英語で戯曲化した『Death Takes A Holiday』です。

1934年には、フレドリック・マーチ主演で同じタイトル(邦題:明日なき抱擁)の映画が製作されました。その後、1998年に『ミート・ジョー・ブラック(邦題:ジョー・ブラックをよろしく)』としてリメイクされた際には、ブラッド・ピットが主演しています。

オフ・ブロードウェイミュージカル版では、ピーター・ストーンが脚本、モーリー・イェストンが作詞・作曲を担当。この2人は、世界中で高く評価されたミュージカル『TITANIC』でもコンビを組んでいます。2003年にピーターが没してからはトーマス・ミーハンが執筆を引き継ぎ、2011年にニューヨークのオフ・ブロードウェイで初演を迎えました。続く2017年には、オフ・ウエストエンドのチャリングクロス劇場で上演。日本でも2023年に宝塚歌劇団で月組公演が行われ、話題となりました。

死神が人間の姿を借りて過ごす、2日間の休暇

人類史上かつてない大戦争となった第一次世界大戦を経て、「狂乱の時代」とも呼ばれる1920年代が始まって間もない頃。

深夜、イタリア北部の山道で帰りを急ぐ一台の車がありました。乗っているのは、ランベルティ公爵一家。ヴェニスにて一人娘であるグラツィアの婚約を祝ったばかりの一家を、悲劇が襲います。

なんと、突然現れた“闇”にハンドルを取られてスピンした車から、グラツィアが投げ出されてしまったのです。しかし、とんでもない大事故にもかかわらず、彼女は無事でした。家族が安堵する一方で、自分の身に「何かが起こった」と感じるグラツィア。

同じ日の夜遅く、ランベルティ公爵のもとに死神が訪れます。死神は、人間の死せる魂を“あちら側”へと導き続ける役目に疲れ切っていました。人間が死を恐れ、生に執着するのは何故なのか。その理由を知りたいと考えた死神は、ロシア貴族ニコライ・サーキの姿を借り、公爵一家とともに2日間の休暇を過ごすことにします。

注目のキャスト陣!宝塚版の演出家も参加

今回、死神とサーキの一人二役を務めるのは、アイドルグループ「WEST.」の小瀧望さんです。2021年には舞台『エレファント・マン』での演技が評価され、第28回読売演劇大賞で新人を対象とする杉村春子賞を受賞。また、ミュージカル初挑戦となった2023年の『ザ・ビューティフル・ゲーム』では主演を果たしていて、さらなる飛躍が期待されます。「元々この作品の映画(リメイク版)が好き」と語る小瀧さんが、死神という難役をいかにして演じるのか見逃せませんね。

ヒロインのグラツィア役はWキャスト。1人は、多数のドラマや映画などに出演しながら、近年は舞台でも活動している山下リオさんです。もう1人は宝塚歌劇団の月組トップ娘役だった美園さくらさんで、退団してからはいったん大学院に進学。今作は退団後初めての舞台となります。

そのほかの配役も実力派揃いです。

エリック役は、2025年上演予定のブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』で主人公のチャーリー役を務める東啓介さん。また、コラード役に内藤大希さん、アリス役に皆本麻帆さんがキャスティング。デイジー役の斎藤瑠希さんは、ディズニー映画『ミラベルと魔法だらけの家』の日本語吹き替え版でミラベルの声優を務めました。

さらに、ヴィットリオ役に宮川 浩さん、ステファニー役に元宝塚歌劇団・娘役トップスターの月影 瞳さん、ダリオ役に田山涼成さん、エヴァンジェリーナ役に木野 花さんと、幅広いジャンルで活躍する俳優が脇を固めます。

潤色・演出は、宝塚劇団の演出家である生田大和さんが担当。生田さんは宝塚版『DEATH TAKES A HOLIDAY』の演出を手掛けているだけあって、新しいキャストとどんな物語を創り上げるのかワクワクします。

ミュージカル『DEATH TAKES A HOLIDAY』は、9月28日(土)から10月20日(日)まで東京の東急シアターオーブにて上演されます。その後、11月5日(火)から16日(土)まで大阪の梅田芸術劇場で公演予定。東京と大阪、どちらの公演もチケットの一般発売は8月17日(土)より始まります。詳しい情報は公式サイトをご確認ください。

もこ

死神が主人公という設定には驚かされますが、人生の意味を問いかける物語のテーマは普遍的ともいえます。人は何故人を愛し、生きようとするのか…劇場で思わず考え込んでしまいそうです。