髙地優吾(SixTONES)、内気な青年からプレイボーイへ豹変？！舞台『Come Blow Your Horn ～ボクの独立宣言～』ゲネプロ＆初日前会見リポート

アメリカを代表する劇作家ニール・サイモンのブロードウェイデビュー作『Come Blow Your Horn ～ボクの独立宣言～』。SixTONES のメンバーとして音楽活動も行いながら、舞台『夏の夜の夢』など俳優としての活躍も目覚ましい髙地優吾さんを主演に迎え、10日3日から新国立劇場中劇場にて開幕しました。初日を前に行われたゲネプロ・初日前会見の様子をお届けします。

兄弟の成長を描いた、ハートフルな上質ドタバタコメディ

アメリカの劇作家で『裸足で散歩』『おかしな二人』『23階の笑い』など数々の名作コメディを生み出し、三谷幸喜さんも影響を受けたと公言している劇作家ニール・サイモン。彼のブロードウェイデビュー作が、『Come Blow Your Horn ～ボクの独立宣言～』です。

控えめで自分に自信がなく内気な弟バディと、プレイボーイで独身生活を謳歌する兄アランの対照的な性格や行動が、劇の後半に入れ替り笑いを呼ぶというニール・サイモンらしい作品。アランのアパートの一室を舞台に、ワンシチュエーションでコメディが繰り広げられます。

出演は、内気な主人公バディ・ベーカー役に髙地優吾さん、プレイボーイで独身生活を謳歌するバディの兄アラン役に忍成修吾さん、アランの本命の恋人コニー役に岡本玲さん、女優志望でバディを誘惑するペギー役に松井愛莉さん。そして、バディとアランの母ベーカー夫人役に高岡早紀さん、父ベーカー氏役に羽場裕一さんです。

父の会社で働いているバディとアラン。アランは本命の彼女コニーがいながら、複数のガールフレンドと付き合い、仕事をサボって上の階に住む女優志望のペギーとのスキーを満喫してきた様子。彼の部屋はおしゃれな壁紙が貼られ、夜景の見える“モテる部屋”。そこに大きなトランクを抱えたバディがやってきて、実家を出てきたと宣言します。

過保護な両親に逆らえずに生きてきたバディは、意を決して実家を飛び出してきたものの「パパを傷つけたくない」と悩みます。しかしアランはバディの決心を喜び、自由を楽しめと、ガールフレンドのいないバディにペギーを紹介します。髙地優吾さんと忍成修吾さんは、正反対の性格ながらも強い絆で結ばれた兄弟を好演。圧巻のテンポ感で心地よく会話を展開していきます。

バディが戸惑いながらもペギーを待っていると、訪ねてきたのはなんと母・ベーカー夫人。バディの家出を知って父が怒り狂うことを心配する母を、なんとか宥めながら追い返そうとするバディ。実家に送り返すためにタクシーを拾っている間、母はアランにかかってきた電話に出るものの、メモが取れず、誰にも内容を伝えられないまま帰ってしまいます。高岡早紀さんは情緒不安定ながらも愛らしい母をコミカルに演じていきます。

女優志望のペギーはアランの嘘によってバディをハリウッドの映画プロデューサーだと思い込み、自分を売り込もうとします。女性とのやり取りに慣れないバディはてんやわんや。

更に今度はバディを連れ戻そうと父が訪ねてきます。ペギーを帰し、父と言い争っていたところ、アランが帰ってきてますます口論に…。その上、行き違いでアランが顧客を失ったことが判明し、父はバディとアラン2人にクビを言い渡し、去っていってしまいます。

父の言うことは理不尽なことも多く、実家で横柄に振舞ってきたであろうことが分かります。今の時代では“完全アウト”な父ながらもどこか憎めないのは、羽場裕一さんによってマイルドに、コミカルにキャラクターが創り上げられているからでしょう。

父と和解できないままクビを言い渡された挙句、アランは恋人コニーに結婚を迫られますが、独身生活を捨てる勇気が出ず、コニーは怒って出ていってしまいます。

3週間後。両親に逆らえずに右往左往していた青年バディはすっかりとプレイボーイに変身。毎日女の子と出かけ、自由な生活を謳歌しています。

髙地さんは内気で気弱な青年がハマり役に見えたのに、プレイボーイなバディも生き生きと楽しんでいるよう。しかし髙地さん演じるバディは父がやってくるとチャラいジャケットを気まずそうに脱ぎ、家族を愛する心優しさが垣間見えます。

一方でアランはすっかり元気をなくし、1日中どこかに出かけている様子。バディはかつてのアランに重なり、遊び呆けるバディを嗜めるアランは父そっくりです。

父の横暴ぶりにうんざりした母は、再びアランとバディの部屋にやってきます。そこに母を追いかけて父が、更にはコニーまでやってきて…。コミカルな中にも各キャラクターに愛らしさがあり、カンパニーにチームワークを感じられる本作。テンポよく物語が駆け抜けていく、ハートフルなワンシチュエーションコメディとなっています。

「お調子者の方が得意だなと…新しい自分に出会いました」

初日前会見には、髙地優吾さん、忍成修吾さん、岡本玲さん、松井愛莉さん、高岡早紀さん、羽場裕一さんが登壇しました。

今作が初の単独主演となる髙地優吾さんは、「正直、僕で大丈夫かなと最初は不安でしたけれど、脚本を読んだ時に、本を読んでいるだけでめっちゃ面白いなというのがあったので、自分が創り上げるのも大切ですけれど、お話が面白いから大丈夫だろうという、本に支えられる部分が大きかった」と心境を明かします。

また内気な青年からプレイボーイに様変わりする役どころということで、「本を読んだ時は最初の内気な方が自分の中で得意かなと思ったんですよ。でも蓋を開けてみたらお調子者の方が得意だなと思っちゃって。役としてギアが入りやすいというか。台詞もするすると出てくる感じがしたので、新しい自分に出会いました」と俳優・髙地優吾さんの新境地となったよう。ご本人の仰る通り、生き生きとプレイボーイを演じる2幕は必見です。

忍成さんはアランという役柄を創り上げるのに非常に苦労されたそう。「アランは凄くユーモアがあるけれど、僕は全然冗談が言えなくて、家では奥さんに“お前の冗談は笑えないから冗談じゃない”って言われるくらいなので（笑）。アランのキャラクターになるというのは、不器用な人間が頑張って器用になる必要があった」と稽古を振り返りつつ、「自分が出ていないシーンは本当に楽しく観ていたので、それを皆さんに観て頂けるのが楽しみ」と笑顔でコメント。

アランとバディに怒ってばかりの父を演じる羽場さんは家で台詞の練習をしていると「どうしても家の中が暗くなって、奥さんに“なんか最近言い方キツイよね”と言われて家庭不和がありまして、あまりよろしくない状況です（笑）」と家庭にも影響があったよう？！

高岡早紀さんは「毎日毎日稽古するのが凄く楽しくて、皆さん（髙地さん、忍成さん）が苦しんでいるのを見るのも楽しかったですし（笑）。段々と仕草や台詞の言い方が似ていって、ファミリーになっていくのを楽しんで稽古していました」と優しく髙地さんと忍成さんを見守っていたそうです。

岡本玲さんは「1960年代を舞台にした作品ということで、女性が社会進出していく狭間と伺いまして、女性らしくいる喋り方だとか、今ではぶりっこに見えるくらいの方が面白いし魅力的というのが、現代の作品ではあまり求められないことなので、そのギャップは、愛莉ちゃんと一緒に悩みながら…“もうちょっと可愛くいて”と言われるのが大変でした」と本作の女性キャラクターならではの苦労を振り返ります。

松井愛莉さんも可愛らしいキャラクター作りに苦戦したと明かしつつも、初の舞台にも「不思議と緊張していなくて、それが逆に怖いです」とリラックスして臨めていることを語りました。

初日前会見でも和やかで楽しい空気が漂っていた皆さん。髙地さんからも「仲良く楽しく作品を創り上げています。作品自体が凄く面白いので、ふらっとした気持ちで劇場に遊びに来ていただいて、笑って帰っていただけたら」という言葉で会見が締め括られました。