日々、多くの作品が上演されている小劇場演劇。どれを観たらいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。今回は、演劇を愛するAudience編集部が独断と偏見で、10月に上演している作品の中からおすすめ作品を3本セレクトしてみました!

事実をもとにした、壮大な ”感動ラブストーリー” 劇団ミュ Op.2 ミュージカル 『추락-墜落-』

劇団ミュは、劇作家の岡本貴也さんが2024年1月に旗揚げしたミュージカル劇団です。作・作詞・演出を務める岡本さんは、2000年糸井重里賞受賞作で脚本家・監督デビュー。朗読劇の金字塔『私の頭の中の消しゴム』が大ヒットし、現在15年連続で再演されています。

作曲を務めるのは、鎌田雅人さん。アーティストへの楽曲提供、CM音楽、ドラマ、お笑い、舞台の音楽など幅広く手掛けています。近年の主なミュージカル作品に、『日中合作 音楽劇 李香蘭-花と華-』などがあります。

「東京で、オフオフブロードウェイ」を標榜し、マイクなしの「生声・生音」のミュージカルを上演しています。ストーリーも、史実を元にした壮大なラブストーリーに特化し、日本発のオリジナル・ミュージカルを創作しています。旗揚げ公演『Liebe シューマンの愛したひと』では、公演期間の10日間、連日超満員の大好評を博しました。

劇団ミュの第2弾公演は『 추 락  -墜落-』(チュラク)。​​​実際に起きた出来事に着想を得た作品で、韓国の飛行機を爆破した北の工作員ヨンヒと、彼女の取り調べを担当した韓国CIAの捜査官ソンミンという2人が、“墜落”するように惹かれ合う禁断の愛の物語が描かれます。

劇団ミュ Op.2 ミュージカル 『추락-墜落-』は、10月17日(木)〜10月28日(月)にウッディシアター中目黒にて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。

「愛にまつわるささやかな物語」 イエデイヌ企画『エリカによろしく』

イエデイヌ企画とは2014年に発足した、演出家の福井歩さん主宰の演劇プロジェクト。「他者の存在があって、初めて上演が可能になる」という考えの下、集団名を掲げ作品ごとにメンバーを集め創作を行っています。上演を通じて現代社会における既存の価値観や感覚をみつめ直し、言語化し難いものを捉えることを目的に活動中です。

主な上演作品として『左ききの女』(2019)、国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2020 TPAMフリンジ参加作品『イマジナリーピーポー イン トーキョー』(2020)、『エリカによろしく』(2023)などがあります。

『エリカによろしく』は、別れを予感している恋人たちの物語。圭一は恋人との旅行中、唐突に、そしてほとんど確信を持った形で、関係の終わりを予感します。言葉にできない不信と不和を抱えながら、2人は圭一の祖父母が暮らした家にやってきます。2人はこれから広い空き家の空気を入れ替え、掃除をしなくてはなりません。

『エリカによろしく』再演に向けて演出の福井さんは以下のように意気込みました。
「再演すると決めたのは私だが、そもそも一度上演した作品をもう一度上演するとはどういうことなのだろうか、と考えている。再演の目的は、初演よりうまくやることではない。「初演と同じ」を目指しても全く同じにはならないし、仮に初演を再現できたとしても、そんな上演はきっとつまらない。
距離と配置を慎重に探る。戯曲のことばを信じて動き、何かが起こったら考える。このような暗中模索は初演時と同様ですが、初演とは異なる力が生まれるよう、再演の稽古に励みます」

劇作家の魚田まさやさんは昨年の上演を踏まえて、以下のようにコメントしています。

「去年の初演を見た時、上演は去っても、そこで発された声は戯曲に確かに染みこんで残るのだと感じました。再演では、その場で発される声と、テキストに染みこんだ過去の声、二重の声が立ち上がると言えるのかもしれません。それは作家としてとてもとても嬉しく、感動的な出来事です。
悲しく虚しい気持ちになるニュースや出来事はやまず、こんな世の中いっそ壊れてしまえと思ってしまう時もありますし、ほとんど全ての人にその冷たいやけっぱち心が住み着いているとすら思います。しかしだからこそ、愛にまつわるこのささやかな物語が、より豊かな力を持ってみなさんの前に現れることを心から願っています。初演をご覧いただいた方も、そうでない方も、ぜひお越しください」

イエデイヌ企画『エリカによろしく』は、10月18日(金)〜10月20日(日)に三鷹・SCOOLにて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。

エリィジャパン『大正元禄ロックンロール家族 1926』

エリィジャパンとは、2019年に俳優の石垣エリィさんが下北沢にて旗揚げした団体。「街と生きる演劇ムーブメント」をテーマに、新進気鋭のアーティストやクリエイターとコラボするプロデュースユニットです。

俳優部は、従来の劇団員制度を取らず、作品毎のイレギュラーメンバー「スタメン」制度を導入。
2022年に発表したミュージカル映画『オジキタザワ』は京王電鉄や小田急電鉄等、下北沢街の全面協力の元で製作。シモキタエキマエシネマK2で満席御礼の好評を博し、2022年下北沢映画祭の招致作品に決定。2023年には、ドイツのハンブルクにて上映されました。

『大正元禄ロックンロール家族 1926』は、​2024年4月下北沢駅前劇場にて好評を博し、満席動員を記録した音楽劇が満を持して吉祥寺シアターに進出!北海道夕張で食堂を営む家族が「ロックンロール」に巻き込まれていく音楽劇となっています。

物語の舞台は大正、巨大な炭鉱を有し、日本各地から集まった労働者達で大層な賑わいを見せる北海道は夕張、登川村。そこにとある夫婦の営む食堂「八尋」がありました。八尋にはドラムセットと古いピアノが置かれた小さなステージがあり、夜になると女将やどさ回りのミュージシャン達によって店内は陽気な音楽で満たされています。炭鉱夫達は夜毎八尋に集っては、大いに飲み、大いに踊り、過酷な労働の疲れを癒すのでした。

そんな中、夫婦の娘である志津香は、炭鉱夫達の慰労会に向けて友人達とドゥーワップグループを結成する事になるのですが…。

エリィジャパン『大正元禄ロックンロール家族 1926』は、10月18日(金)〜22日(火)に吉祥寺シアターにて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。

ミワ

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