新国立劇場 中劇場で12月3日(火)から開幕する『白衛軍 The White Guard』。ロシア革命後、敗れゆく者たちを描いた群像劇を村井良大さん、前田亜季さん、上山竜治さんらが演じます。初日を前に、公開フォトコールと囲み取材が行われました。

「過去の先人たちが生きて培ってきたものが今に繋がっている」

ロシアを代表する作家ブルガーコフが1926年に戯曲化した本作を、2010年に英国のナショナル・シアターで上演されたアプトン版に基づいて上演する『白衛軍 The White Guard』。革命直後のウクライナを舞台に、革命に抗う白衛軍に所属するトゥルビン家の人々を描いた作品です。

公開フォトコールでは本作冒頭の1幕1場と、トゥルビン家に人々が集い宴を始める1幕2場が披露されました。舞台面が10列目手前まで迫り出し、客席と地続きになったオープン形式での上演。舞台スペースが広大なだけでなく、客席とシームレスな舞台空間は、思わず呼吸を止めてしまいそうな臨場感です。

真っ暗な舞台空間からニコライ(村井良大さん)が現れると、舞台奥からぼんやりとトゥルビン家のセットが現れ、ググッと客席手前まで迫り出してきます。舞台の世界・過去が目の前に迫り来るような演出は、大迫力かつ新感覚。

村井さんの歌声とギターが鳴り響く中、物語の幕開けに期待が高まります。

1幕2場ではニコライの姉レーナ(前田亜季さん)、兄で大佐のアレクセイ(大場泰正さん)、従兄弟で学生のラリオン(池岡亮介さん)らトゥルビン家と、白衛軍のヴィクトル砲兵二等大尉(石橋徹郎さん)、アレクサンドル大尉(内田健介さん)、ゲトマン軍の副官レオニード(上山竜治さん)が集い、ウォッカやワインを酌み交わします。戦いが控える“明日”を気に掛けながらも、陽気な空気が漂うシーンです。

囲み取材には、村井良大さん、前田亜季さん、上山竜治さん、大場泰正さん、池岡亮介さんと、演出の上村聡史さんが登壇しました。

村井さんは「ギターを9月下旬くらいから練習をしてきました。人前で弾くのは本当に初めてなので、結構緊張しているんですけれども、生活の中に音楽があるトゥルビン家と、柔らかいニコライの性格を表現できるシーンだと思います。音楽がいかに人々の心を救ってくれるかということを、お客様と共有したい」と意気込みます。

前田亜季さんは「厳しい状況の中で生きている人たちですが、ユーモアも忘れず、みんなで励まし合いながら、明るいシーンもたくさんあります。ブルガーコフが未来に託した願いや祈りも台詞の中たくさん含まれています。それを丁寧に届けていきたい」と語りました。

ゲトマン軍の副官であり、オペラ歌手でもあるレオニードを演じる上山竜治さんは「歌や詩など、芸術と寄り添いながら物語が紡がれていきます。普段ミュージカルをやらせて頂くことが多いのですが、ストレートプレイで歌の威力って凄いなと本当に思います。情熱や感情が湧き出す感覚があって面白いなと思いました」と演じる中での感触をコメント。

大場泰正さんは、帝政ロシアが崩壊した翌年を描いた本作について「帝政ロシアはバレエや文学といった文化を生み出した時代なんですけれども、そういったものが家庭に溢れている(トゥルビン家)というのは、実はそうでない階級の上にあるわけですよね。こちら側の人々はその生活を守りたいと思っていて、民衆が動き出した時、私が演じるアレクセイは(民衆を)“敵”と呼ぶんですけれども、本当はみんなを巻き込んで良い国を作りたかったはず。支配の上に安定や文化が成り立っているという奥行きをアレクセイは自覚している人間だと思っていますし、そういったことが今にも繋がっているということを思いながら演じています」と思いを語りました。

トゥルビン家に突如やってくる従兄弟のラリオンを演じる池岡亮介さんは「軍人ではなく、今を生きる若者として、愛されるキャラクターになるように頑張ります」と意気込みます。また見どころとして「舞台美術が凄いです。距離感の近さも楽しんでいただける作品」と語り、上山さんも「新国立劇場の機構をフルに使った演出が凄くて、セットがぐわーって来たり、上に上がったり回ったりするんです!」と興奮気味に語ります。

演出の上村聡史さんは、「地続きになっているということを非常に念頭に置きました。何もない暗闇からある劇世界が現れて、過去が現れて、それが今にも繋がっているんだという思いを込めました。ぜひラストシーンも楽しみにしてもらいたいです。今起きていることと100年前というのは、短絡的に結びつけて良いものではないっていうのは重々わかってはいるんですけども、過去の先人たちが生きて培ってきたものが今に繋がっているということを、一番コンセプトとして大きく置きました」と語りました。

最後に村井さんから「ロシアとウクライナを題材にしている作品なんですけども、家族愛や人間模様、群像劇として色々なシーンを観ることが出来ます。非常にキャラクターが生き生きと楽しいエネルギーに溢れていて、それを見ていただけるだけでエネルギーをもらえると思います。僕は舞台機構も含め、ここまで立体感のある素晴らしい舞台を見るのは初めてです。見て後悔しない作品ですので、みんなの懸命に戦う姿を観ていただければ」と熱い思いが語られ、会見が締め括られました。

撮影:鈴木文彦

『白衛軍 The White Guard』は2024年12月3日(火)から22日(日)まで新国立劇場 中劇場にて上演されます。公式HPはこちら

関連記事:村井良大×上山竜治『白衛軍』インタビュー!芸術を愛し、敗者となっていく貴族階級の人々の「心」を感じてほしい

Yurika

地鳴りのような音と共に迫り来る舞台に息を呑みました。2024年の最後に、これからの人生で何度も思い返すような作品との出会いとなりそうです。