2025年4月、待望の再演を迎えるミュージカル『ウェイトレス』。2021年の初演はコロナ禍ながら満席の大盛況で、主演の高畑充希さんは第46回菊田一夫演劇賞を受賞しました。2025年の再演に出演する高畑充希さん、森崎ウィンさん、ソニンさん、LiLiCoさんが製作発表会見に臨みました。

キャッチーな楽曲と身近なキャラクターで、女性の人生の岐路と社会問題を描く

アメリカ映画『ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた』(2007 年)をベースに製作された、ブロードウェイミュージカル『ウェイトレス』。キャッチーな音楽と共に、妊娠・出産・離婚・自立・養育など女性の人生の岐路を描いた作品です。作詞作曲のサラ・バレリスさん、脚本のジェッシー・ネルソンさん、振付のロリン・ラタローさん、演出のダイアン・パウルスさんとブロードウェイ史上初めて主要クリエイティブ4つ全てを女性が務めたことも話題に。トニー賞ではミュージカル作品賞、オリジナル楽曲賞、ミュージカル主演女優賞、ミュージカル助演男優賞にノミネートされました。

ブロードウェイ、ウエストエンドで本作を観劇し、作品の大ファンでもある高畑さんは魅力について「私の口では説明しきれないんですけれど、最初は圧倒的に楽曲の魅力が凄かったなと。全編ポップスで作られていて、とてもキャッチーで耳に残る、1回観ただけで口ずさみながら劇場を後にできるような楽曲ばかりで。楽曲は明るいナンバーも多いんですけれど、ストーリー自体は女性が生きていくにあたっての辛いことや悲しいこと、悩みを全部混ぜ込んでジェナが美しいパイにしていくので、特別じゃない人たちが作り上げる特別な物語だなと思って、凄くグサッと刺さりましたし、何度も観たくなりました」と語ります。

ミュージカル『ウェイトレス』は高畑さん演じるジェナが、卵を割ったり、小麦粉を振りかけたり、生地をこねたりとパイを作りながら歌うシーンも魅力の1つ。作業をしながら歌唱するという難しさもありますが、「作業によってリズムが生まれるというのは、やってみて不思議でした。ただ歌っているよりも、粉を振ったり生地をこねたりすることで体の動きがあって、歌のリズムに合うように動きが付けられているので、その作業に助けられるというのが意外だったし嬉しかったこと。しんどかったのは、小麦粉が喉に入るととにかくむせる(笑)」と語り、攻略法は「とにかく遠くに飛ばすのと、吸っちゃいそうになるところで息を止める」と明かしました。

再演にて本作に初参加となるポマター医師役の森崎ウィンさんは、初演を観劇し、「翻訳ミュージカルは日本に住んでいる身からすると遠い国の話だと感じる作品もあるけれど、この作品は1人の女性の人生の葛藤や、崖の淵を歩いていて踏み外しそうになる感覚にとても共感できるし、男性の僕でも持ち帰れるものがたくさんあります。楽曲の魅力もとてもあって…熱く語ってしまうくらい凄く好きな作品です」と語ります。

本作の好きな楽曲についてはポマター医師とジェナが歌う「Bad Idea」を挙げ、「2人で歌ってはいるんですけれど、それぞれ個々の想いが吐露される旋律になんとも言えない美しさと危うさが入り込んでいて、これから稽古で作り上げていってどう表現していけるかが楽しみ」と話しました。

ドーン役・ソニンさんは本作をブロードウェイで観劇し、日本上演を待ち望んでいたそう。日本初演も観劇し、再演での参加に「あの世界に入れるんだという喜びでいっぱい」と笑顔で語り、本作の魅力について「(ブロードウェイ版では)劇場に入った瞬間にパイの香りがするんです。私たちってレストランやケーキ屋さんに行くと“わぁ良い匂い!”ってなるじゃないですか。もうそこから、自分たちの生活、私たちの世界の中のストーリーなんだなと感じさせてくれる。ミュージカルというと劇的な人の話だったり、歴史上の人物だったりを演じることも多いですけれど、私達の生活の中にすごく近い登場人物がたくさん出てきて、お客さんたちがジャンプしなくても共感できる部部分がたくさんあるストーリーです。『ウェイトレス』はみんなの物語であり、希望も持てるし、そして自分の人生も見つめ直せる。自分たちに近い物語ということが魅力」と語りました。

さらに好きな楽曲についてはジェナの歌う「She Used to Be Mine」を挙げ、「ジェナの全てが詰まっているから、もう思い出しただけで泣きそう」と言うと高畑さんも顔を見合わせ「私も今もらい泣きしそう」と目を潤ませます。

「ジェナの置かれている環境っていうのが結構ダークな部分もあって、その悩みを彼女が全部背負って、命と環境と自分の立場と現実と、色々なものがごちゃごちゃになって歌う歌なので。大好きすぎて、この前ライブで歌っちゃいました。自分が演じる役じゃないのに(笑)」と思い入れを語りました。

初演に引き続きベッキーを演じるLiLiCoさんは、初演時に50歳で初めてミュージカル作品に挑戦。「興奮して凄く楽しみにしていたのに、外でずっこけてひざの皿を割るという大怪我をしてしまい、釘とワイヤーを入れてやらせて頂いて、まだ膝が痛い状態で演じたんですけれど。今回は(釘とワイヤーは)抜けたので、ベッキーらしく堂々とみんなをまとめていけたら」と意気込みます。

FNS歌謡祭で『ウェイトレス』の楽曲を披露し、すでに相性の良さが垣間見えた高畑さん、ソニンさん、LiLiCoさん。高畑さんは「初めてマイクを通して3人の声が重なったのを聞いて、“なんか良い感じじゃん!”ってなって。本番に向けて一緒に歌う機会が増えるといいハーモニーなっていく気がするし、みんなそれぞれ声質も違うので、それがとても良いなと思えました」と語ります。

それぞれの印象について問われると、高畑さんは「ソニンちゃんは、ソニンちゃんの舞台をめちゃくちゃ観ているし、ソニンちゃんがやっていた役を引き継がせてもらうことも多いので、勝手にずっと後ろを追いかけているような感じがあって。強い女性の役をよく演じられていますが、実際に会うと本当にハッピーな方だし柔らかくて温かい人で、共演は初めてなので楽しみ。LiLiCoさんは歩く太陽みたいな人。でも繊細なところもある方で、不安そうだったり寂しそうだったりすると寄り添ってあげたいと思わされる。そこをみんな好きになっちゃうんだと思います」と語りました。

LiLiCoさんは高畑さんソニンさんについて「本当に2人ともミュージカルの大スター。50歳でミュージカルデビューした時、あまりにも初めてのことばかりで、何もできない中で、充希ちゃんの姿をずっと見ていました。ソニンさんともFNSのために先にリハーサルをさせて頂いて、歌声が本当に素敵なのでここからが楽しみ」とコメント。

ソニンさんは「充希ちゃんは私がミュージカルデビューの作品を観に来てくれて、ちょうど充希ちゃんもミュージカルを始める頃で、当時は同僚のような感覚があったんですけれど、そこから充希ちゃんはドラマや映像作品に出るようになって、私はミュージカルに専念していたので、少し距離が空いた感じがしていて。共演はないのかなと思っていたので、15年以上経ってこうやって共演できるのは凄くエモい感じがして嬉しいです」とお二人の関係性を明かします。

またLiLiCoさんについては「FNSでメイク・支度部屋が一緒で、ずっと喋っていらっしゃって、私は聞いている方が好きなので、とても嬉しかったし場が和んで凄く助かるなと。コメント撮りでもバランスよく3人がまとまったので、3人の相性が良いんだなと実感しました」と語り、会見でも3人の和やかな関係性が伺えました。

撮影:蓮見徹

最後に高畑さんから「初演の時は観に来てくれた方に、すごく楽しかったけれどポスター詐欺だよって言われて。ポスターやビジュアルイメージだと凄くポップで明るいガールズミュージカルみたいに見えるかと思うんですが、実際の内容は、家庭内暴力とか、望まない妊娠だったりとか、女性がどう生きていくかっていう話だったり、介護の問題だったり社会問題がすごく盛り込まれている話…って説明すると観たくなくなっちゃうのかな(笑)。目を背けたいような出来事、でもみんなのいつも隣にあるような出来事をパイのように混ぜ込んで甘く焼き上げたような作品です。テーマパークに行ったみたいに楽しかったって言ってくれる方もいれば、自分の人生を見直して考えたって言ってくれる方もいるし、ただただずっとサントラ聞いているよっていう方もいるし。父親世代も凄く楽しんでくれたので、門戸が広いなと思いつつも、“子連れで行って良い?”って聞かれたお客様だけは断っています(笑)。お子様がポカンとなるシーンが結構多いと思うので。でも、ある程度年齢を重ねた人たちにはグサグサ響くような作品になっています。私は初演にも再演にも参加するというのは初めての経験で、それぐらい“どうしてももう1回やりたい作品”でした。何の先入観もなく、ぜひ劇場に体験しに来て欲しいです」と想いが語られ、会見が締め括られました。

ミュージカル『ウェイトレス』は4月9日(水)から30日(水)まで日生劇場にて上演。5月にはNiterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホールでの愛知公演、梅田芸術劇場 メインホールでの大阪公演、博多座での福岡公演が行われます。公式HPはこちら

Yurika

前回はコロナ禍の上演で声を出しての観劇が出来ませんでしたが、コミカルなシーンも多数ある本作なので、再演でより作品の魅力が発揮されそうです。小麦粉が舞う美しく非日常的なシーンや、キャッチーな音楽も楽しく、高畑さんの透明感ある声もジェナにぴったりな印象が強かったので、再演を心待ちにしていました。個人的には、ブロードウェイと同じく劇場入り口でパイが販売されることを願っています…!