東京・渋谷にあるPARCO劇場の開場50周年記念シリーズのラストを飾るのが、12月7日より開幕する舞台『海をゆく者』です。登場人物は、せっかくのクリスマスイブを酒とポーカーで過ごす冴えないダメおやじたち。小日向文世さん、高橋克実さん、浅野和之さんら日本演劇界の名バイプレイヤーが集結する本作が、2014年ぶりに再演されます。

アイルランド発の傑作悲喜劇、2014年ぶりに待望の再再演

『海をゆく者』は、アイルランドの劇作家コナー・マクファーソン脚本の舞台です。2006年に、ロンドンのナショナル・シアターで初上演。ローレンス・オリヴィエ賞のBEST PLAY、トニー賞4部門にノミネートされ、「21世紀のクリスマスキャロル」と称されています。

日本では2009 年、2014年に日本劇界トップクラスの演出家である栗山民也さんの演出により、PARCO 劇場にて上演されました。そしてPARCO 劇場50周年の記念すべき今年、満を持しての再再演です。

「文学の国」と呼ばれているアイルランド。数多くの詩人や作家が生まれ、作者コナーの故郷である首都・ダブリンは、ユネスコの文学都市に指定されています。文学作品の発達から、演劇もアイルランド文化の形成には欠かせない芸術となったのです。

そんなアイルランド演劇の特徴は、ケルト文化の神話的な要素やイギリス文学の要素を含む「悲喜劇」。本作も、どこかうまくいかない年老いた男たちが集まり、冴えない暮らしを楽しく過ごそうとする姿と、一夜に与えられた奇跡を描いています。

ダブリン郊外。海沿いの古びた家には、最近目が見えなくなった兄のリチャードと酒癖の悪さから人生に行き詰まり、兄の世話のために帰ってきた弟のシャーキーの老いた兄弟が暮らしています。

クリスマスイブの夜、友人のアイヴァンと、シャーキーの元恋人と付き合っているニッキーを家に招くリチャード。ニッキーの登場に腹を立てるシャーキーですが、さらにもう一人、ニッキーが連れてきた謎の男ロックハートは、シャーキーにとっては忘れがたい人物でした。

リチャード、シャーキー、アイヴァン、ニッキー、ロックハートの5人は、ポーカーに興じることに。聖夜に勝利するのは、果たして誰なのでしょうか?

目が離せない豪華共演!実力派俳優5人の名演を刮目せよ

出演するのは、日本の演劇界には欠かせない5人の名バイプレイヤーたちです。14年前の初演から出演している小日向文世さん、浅野和之さん、大谷亮介さん、平田満さんは、古希を迎える年代。今年は高橋克実さんを新たなメンバーに迎え、平均年齢70歳目前の名優たちが、舞台にて豪華共演を果たします。

男たちの集まりに偶然居合わせ、何故かシャーキーの過去を知り尽くしている謎の男・ロックハートを演じるのは小日向文世さん。気弱な善人から非情な悪人まで多岐に演じる小日向さんだからこそ醸し出せる謎めいた存在感が、物語を怪しい展開へと導きます。

陽気で人付き合いの良いリチャード役は前回公演・前々回公演は吉田鋼太郎さんが演じていましたが、今回は高橋克実さんが初参戦。大騒ぎをして弟を困らせながらもどこか愛情深いリチャードは、包容力のある高橋さんの演技にピタリとハマりそうです。

リチャードの家の近所に住む友人のアイヴァンは、三谷幸喜作品に数多く出演し、存在感のある脇役に定評がある浅野和之さん。浅野さんの演じるアイヴァンはすぐに眼鏡を失くしてしまい、抜けている姿が物語の緊張感を緩和させますが、そんな彼の何気ない行動がどんでん返しを引き起こします。

シャーキーの元恋人の現恋人で、リチャードの飲み仲間であるニッキー役は、80年代の演劇界を牽引し、時には女形も務める大谷亮介さん。

リチャードの弟シャーキーは、本作の2014年公演において第49回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した平田満さんです。

彼らが演じる飲んだくれた男達は、時には少年のように無邪気に笑い、時には卑屈な笑みを浮かべて観客の心をざわつかせることでしょう。複雑な思いが幾つも浮かび上がる名優達の演技は、セリフと表情だけではなく空気感で刮目したいものですね。

『海をゆく者』は、2023年12月7日から27日まで東京・PARCO 劇場にて上演。2024年1月7日から29日にかけては、新潟、愛知、岡山、福岡、広島、大阪を巡演します。各公演の日程、チケットの詳細は、作品公式サイトをご覧ください。

さきこ

個々の活躍を見ることはあっても、一堂に介し、しかも飲んだくれながらポーカーをする姿を見ることは早々にないであろう名優5人組。彼らの真剣勝負が繰り広げられる本作は、ちょっぴりファンタジックな要素もありクリスマスシーズンにはうってつけです。最後に笑うダメおやじはいったい誰なのか?その結末を、劇場でお見逃しなく!