俳優・小野田龍之介さんの連載企画「小野田龍之介と春夏秋冬さんぽ」。前月に引き続き、秋風を感じながら、1歳のココくんと一緒にお散歩したお写真をお届けします。インタビューでは、『レ・ミゼラブル』開幕直後の心境を伺いました。

ご褒美をもらっているような幸せな感覚

−12月16日(月)にミュージカル『レ・ミゼラブル』プレビュー公演が開幕し、20日(金)には初日を迎えました。幕が開けていかがですか。
「今まで(アンジョルラス役として)見てきた景色とはまるっきり変わって、出演しているシーンも違いますし、視点が違うので、本当に面白いです。ある種、スピンオフに出ているような感覚にもなります。公演が続いていくにつれて今の視点が日常になってきていますけれど、開幕直後は馴染みのある作品なのに全然違う角度から見ているというのが、俳優としても、1人の『レ・ミゼラブル』ファンからしても、ご褒美をもらっているような幸せな感覚でした。これまで何度も作品を観た方にとってもだいぶ印象が変わっているところも多いんじゃないかなと思います」

−客席からの大きな拍手や歓声も感じていらっしゃるんじゃないでしょうか。
「盛り上がりは感じますし、嬉しいですね。よく“感動の嵐が吹き荒れる”とか言いますけれど、さまざまな人間ドラマが描かれていて、どこまでも深く見られるし、音楽の力も凄いし、お客様にも本当に愛されているんだなと実感します。そして帝国劇場のクロージング公演の『レ・ミゼラブル』に出演できているというのはやはり光栄ですし、これまでとは違う役に取り組めたのも財産だなと感じています」

−本初日会見では、今の心境を漢字一文字でというお題に対して気持ちが揺れ動く「揺」を挙げていましたよね。
「キャラクターにも気持ちの揺れ動きは感じるし、劇場全体が感動に揺さぶられる感じをプレビュー公演で実感したし、プレビューを終えて初日開幕を控えていて、“始まるんだな”という自分自身の心の揺れ動きもありました。出演者もスタッフもオーケストラも、みんなが心揺さぶられる作品ですし、帝劇においても特別な作品だと思います。そういった作品での揺れ動きが客席に波動のように広がって、カーテンコールでお客様の感動、心が揺れ動いたものがこちらに押し寄せてくるような感覚があるんですよね。それはプレビュー期間で改めて感じて、やっぱり凄い作品だなと思いました」

−客席に座っていても、自分だけでなく、客席全体が感動で揺れ動く感覚というのをとても感じる作品です。舞台からは遠いはずの2階の後列にいても感じて驚いたことがありました。
「そこはやっぱり音楽が根底にある作品だからなのかなと思いますね。もちろん席によって感じ方が違うことはあると思うけれども、音楽が連れていってくれるんだと思います」

“この年のレ・ミゼラブルにも残ってくれてありがとう”

−10月の連載時には「意志の強さを出そうとするとアンジョルラスの時と似てきてしまう感覚があるので、歌稽古の時は同じ声の持っていき方にならないようにしようと心がけていた」というお話もありました。観劇された方からは「いつもの小野田さんの歌声とは違うように感じた」という声も見られましたが、どのように作っていかれましたか。
「そう思ってくれた方がいたんですね、嬉しいです。歌稽古の最初の頃は色々と考えていましたが、立ち稽古に入ってからはあまり声の違いについては意識していなかったです。ただ、今回の上演ではあまり朗々としなくて良いと言われたので、今までよりは人間らしい、喋るような歌い方になっています。オーケストラレーションもだいぶ変わっているので、聞こえ方も今までのジャベールとは違って聞こえるんじゃないかな」

−イギリスの演出チームから帰国前に言われて印象に残っていることはありますか。
「ありがたいことに、レミゼカンパニーの皆さんは家族のような関係性なんです。いつも仲良く喋っているし、いつも本当に目をかけて頂いて、評価して頂いています。演出のクリスからは“この年のレ・ミゼラブルにも残ってくれてありがとう”とわざわざ言って頂きました。『メリー・ポピンズ』から付き合いのあるジェームズ・パウエルには、“(アンジョルラスから)また違う役を見事に演じ分けてくれてありがとう”と。改まってみんなが褒めてくれると、もうクビにされるのかな?と怖くなっちゃうんですけれど(笑)、伝えてもらえて嬉しかったです」

−伊礼彼方さんと石井一彰さんの公演は観られましたか?
「ゲネプロは少し見ました。ちょうど彼方くんと一緒に楽屋でかずくんのジャベールをモニターで見ていたことがあって、2人で“同じ演出を受けているとは思えないね”って話していました。同じ演出を受けてもどう噛み砕いて演じるかは俳優次第ですし、素養が違いますからね。それぞれキャストによって印象は変わると思うけれど、ジャベールは特に違うんじゃないかな。でもWキャストや複数キャストをやる時は、どうしても影響されてしまうのであまり見ないように心がけています。僕からしか出ないものを大事にしたいと思うので。だからその役にフォーカスして見るというより、作品全体や、役の周りにいる人たちの動きをよく見るようにしていますね」

ゆっくり作品に向き合える1年に

−いよいよ2024年も終わりですが、どんな1年でしたか。
「1つの作品にゆっくり向き合えたかな。バタバタと激動の年の方が多いので、それよりは緩やかだった印象があります。でもあっという間ですね。年初には『ベートーヴェン』に出演していたなんて、はるか昔に感じます」

−『20世紀号に乗って』は日本初演ですがブロードウェイらしさ満載の作品で、『ピーター・パン』『レ・ミゼラブル』と比較的クラシカルな作品が続きました。
「『20世紀号に乗って』のような楽しい作品も良いですよね。1年に1回はああいう作品が観たいよな、と思うような作品でした。ホリプロでは近年、『東京ラブストーリー』や先日上演が発表された『ある男』など新作ミュージカルも増えていますよね。2025年2月に上演される『ミセン』は駒田一さんが原作を大好きらしくて、よく作品の魅力を聞いています。今後はそういうオリジナル作品にも参加してみたいですね」

−カレンダー撮影では韓国に行かれていましたが、韓国で観たミュージカルで印象に残っているものはありますか。
「いろいろな作品を観ましたが、『レ・ミゼラブル』も韓国では久しぶりに上演されていて、韓国語のドライブ感に合うなと感じました。自分が出演した作品を海外で観るとまた印象が変わるので好きです」

−プライベートでやりたかったけれど出来なかったことはありますか。
「4月の連載でゴルフを始めたいと言ったんですけれど、結局始められませんでした。指揮者の塩ちゃん(塩田明弘さん)もゴルフが好きで誘われていたのですが、なかなか始めないので、“もう無理やりラウンドに連れていく”と言われました(笑)。あとはもっと旅行したかったですね。全くしていなかったわけではないですけれど、リゾート地やビーチでのんびりすることができなかったので、それが心残りかな。基本面倒くさがりなので、計画を立てるのが面倒なんです(笑)。読者の皆さんやファンの皆さんに、おすすめの旅行先を教えて欲しいです。あとはサウナ!ツアー公演で行けるおすすめのサウナ、教えてください!」

撮影:木南清香、ヘアメイク:野中真紀子、スタイリスト:津野真吾(impiger)
衣装:カーディガン¥14,300- / AMERICAN RAG CIE パンツ¥9,900- / HARE 他、スタイリスト私物

ミュージカル『レ・ミゼラブル』は2025年2月7日(金)まで 帝国劇場で上演中。その後、大阪・福岡・長野・北海道・群馬と全国ツアー公演が6月まで行われます。公式HPはこちら

Yurika

作品の開幕直後にお話を伺える貴重な機会となりました!