「コラボ」「タッグ」ってなんだかワクワクしませんか?たとえば、ここ数年の演劇界を盛り上げてきたコラボ企画のひとつが「ニッポン放送×上田誠(ヨーロッパ企画)」だとわたしは考えています。今回は、ニッポン放送×上田さんのタッグでお届けするエンタメ舞台シリーズ第5弾『リプリー、あいにくの宇宙ね』に詰め込まれた魅力を、余すことなくご紹介していきます!

「SFコメディの旗手」上田誠

1998年、同志社大学の演劇サークル「同志社小劇場」内で、上田誠さんは劇団「ヨーロッパ企画」を旗揚げしました。コメディにこだわった演劇公演に加え、イベント企画やテレビ・ラジオの企画構成など、劇団の枠を軽々と超えて活躍されています。

もとから関西の演劇業界では有名だったヨーロッパ企画。代表作『サマータイムマシン・ブルース』の映画化(2005年)、舞台『来てけつかるべき新世界』(2016年)での第61回岸田國士戯曲賞受賞、映画『リバー、流れないでよ』(2023年)での日本映画批評家大賞脚本賞受賞などを経て、その人気は高まり続けています。

ニッポン放送と上田さんのコラボ企画は、ニッポン放送 オールナイトニッポン50周年記念公演『続・時をかける少女』(2018年)から始まりました。原作のエッセンスを活かしながらオリジナル要素も加えた、名作タイムスリップ・ラブコメディとなっています。上白石萌歌さん、戸塚純貴さん、MEGUMIさんなど、現在も実力派として活動されている俳優をキャスティングした点も特徴です。

さて、そんなSFコメディの旗手は、今回どのような作品を届けてくれるのでしょうか?

宇宙船内は大混乱!?

『リプリー、あいにくの宇宙ね』は「宇宙船を舞台にしたスペースオペラ活劇のてんこもり集大成」の「SFアクション音楽コメディ」だそう。そこであらすじを読んでみると、宇宙船内の大混乱がくっきりと浮かび上がってくるようです。

スクランブル発生!今度は何が起きている?宇宙はつねに変化に満ちているし、いつだって射撃訓練所の中だ。たえず11人目がいるようなものだし、スタービーストは暗黒の森林で息をひそめている。それにしてもひどすぎないか、と二等航海士・ユーリは思う。量。このトラブルの量はなんだ。マザーCOMはなぜ答えない。船長はなぜ判断しない。ロボ、三原則いまはいいから。アーム、そんなポッド拾わなくていい。漂流詩人乗ってこなくていい!これどこからのスライム?石板、いまは進化させていらない!ユーリは白目で歌う。リプリー、あいにくの宇宙ね。ってハモんのやめて。

「この舞台いったいどうなるんだ!?」と好奇心を掻き立てられるわたしたちに対し、上田さんは次のようなコメントを投げかけます。

「たいへん面白そうなキャストとスタッフで宇宙船ものやります。YouTubeで、アメリカの高校生が『エイリアン』を文化祭で完コピ上演して、喝采を浴びているのを見たのです。劇とはこれだと思いました。アメリカの高校生に負けてられないマジで、と思い、全力でスペースオペラやります。そしてどコメディです。
とはいえ宇宙開発なんて冷戦下じゃあるまいし古いかな、と思いきや、最近だとIT界の巨人たちが競ってこの夢をアップデートしてますね。地球がどのくらいもつのかも怪しいですし、そして僕らはつねに未知の中を泳ぐスペースシップみたいなものです。乗り合わせたメンバーとありあわせの装備で、隕石を、漏電を、スタービーストを、やりこなさねばならぬのです。しかもこの先ずっとです。感電するほどの絶望を、せめて歌いましょう。​」

ほとんどの方は「感電するほどの絶望」を舞台で味わったことはないと思います。ほかのどの作品からも得られない刺激が潜んでいる予感です……

演技力の精鋭11名が集結!

本作の主演は、乃木坂46を卒業後、俳優やクリエイターとして活躍の場を広げ、2021年のTAMA映画賞で最優秀新進女優賞を受賞するなど、演技が高く評価されている伊藤万理華さん。上田さん脚本のテレビドラマ『時をかけるな、恋人たち』(2023年)に出演した経験があり、上田さんの舞台は初めてです。

共演には、ドラマから舞台まで幅広く好演し、NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』における小田新之助役でも話題の井之脇海さん。歌手・ドラマーとして精力的に活動しながら、俳優やモデルなど多方面で才能を発揮しているシシド・カフカさんは、本作が初舞台となります。

前作『鴨川ホルモー、ワンスモア』から連続登板となる、男性ブランコ・浦井のりひろさんと平井まさあきさん。キングオブコント2021で準優勝して以降、お笑いでも演技でも快進撃を続けています。劇団を主宰し、キングオブコント2013の王者でもある、かもめんたる・岩崎う大さんと槙尾ユウスケさんは、本舞台シリーズに3作連続で出演します。

個性的な存在感と強烈なインパクトを残す演技が特徴の野口かおるさんは、上田誠作品に初登場です!そしてヨーロッパ企画からは石田剛太さん・中川晴樹さん、新劇団員の金丸慎太郎さんが出演します。

わたしが特に注目しているのは男性ブランコの浦井さんと平井さん。浦井さんは低くてやわらかい声が魅力なのですが、まさかの作業用ロイド役。一方、平井さんは科学主任役。いつも生き物や自然に対して好奇心たっぷりな彼にぴったりな役だなと感じます。お2人がどんな役作りをされるのか楽しみです!

舞台『リプリー、あいにくの宇宙ね』は、2025年5月4日(日・祝)から5月25日(日)まで東京の本多劇場で上演されます。6月3日(火)は高知県立県民文化ホール オレンジホール、6月6日(金)から8日(日)には大阪府の森ノ宮ピロティホールにて、地方公演が実施予定です。詳細は公式サイトをご確認ください。

さよ

敬愛する上田誠さんが脚本、しかも大好きな男性ブランコのお2人が出演ということで、早速チケットを取りました!あらすじだけでは内容が全然分からないのに、観終わるとすべての伏線が晴れやかに回収される気持ちよさを、ぜひ劇場で味わってみませんか?