2025年4月25日(金)~5月4日(日・祝)まで、東京・墨田区の「すみだパークシアター倉」にて上演される、フライングシアター自由劇場『そよ風と 魔女たちと マクベスと』。フライングシアター自由劇場の第5作目となる本作は、ウィリアム・シェイクスピアの四大悲劇のひとつ『マクベス』を原作としています。妻と共に主君を殺して、王位についた将軍・マクベス。玉座に上り詰めたはずの彼が、次第に重圧に錯乱していき、暴政の果てに貴族や王子らの復讐に倒れるという、スリリングかつ悲しい物語です。その悲劇性ゆえに多くの観客に愛される名作を、脚色・演出・美術を手がける串田和美さんは、どのように再構築するのでしょうか。
串田和美が再始動させた「フライングシアター自由劇場」とは
串田和美さんは、1966年に「アンダーグラウンド自由劇場」として劇団活動を開始しました。その後、1975年には劇団名を「オンシアター自由劇場」に改名し、1996年には30年間続いた劇団の歴史に幕を閉じました。
そして2023年、27年の時を経て新たに生まれ変わったのが「フライングシアター自由劇場」です。
劇団の名前の由来は、ワーグナーのオペラ『彷徨えるオランダ人』(フライング・ダッチマン)。年間2公演を目指し、新作や再演の試みを続けています。
串田十二夜×大空ゆうひ、魅力のタッグと豪華な共演陣
本作品でマクベスを演じるのは、串田和美さんのご子息で、2021年から俳優活動を開始した串田十二夜(じゅうにや)さん。そして元宝塚歌劇団宙組のトップスター・大空ゆうひさんが、マクベス夫人、魔女、そよ風の3役を務めます。

そのほか、劇団唐組で活躍中の福本雄樹さん、劇団柿喰う客の原田理央さん、ビッグバンド「渋さ知らズ」のメンバー・反町鬼郎さんなど、豪華俳優陣が名を連ねています。
なんとマクベス以外の全員が「魔女であり、“そよ風”でもある」とのこと。
「そよ風は、一見優しく心地よい。しかしその得体の知れない囁きは、やがて嵐を巻き起こす。魔女たちーーそよ風――に誘われ、マクベスは次々に王や親友を殺し、玉座に上り詰める。だが悪事が悪事を呼び、後戻りはできない。その姿は現代社会そのものなのではないだろうか」
脚色・演出・美術を手がけ、自身も出演する串田さんは、「古典劇として原作があるものを、現代の私たちの感性や 意識とつながるように脚色し直し、新たな言葉や物語を“ないまぜ”にして創り上げます」とコメントしています。
串田さんは、1972年から6回にわたって『マクベス』の演出を重ねてきました。時代や自身の思考に合わせてさまざまなアプローチを行ってきたなかで、今回の『マクベス』はどのように生まれ変わるのでしょうか。
フライングシアター自由劇場×名作で魅せる新たな視点
フライングシアター自由劇場では、過去の公演でも名作を原作に再解釈・脚色した上演を行い、大きな反響を呼んでいます。
2024年10月にすみだパークシアター倉で上演されたのは、『ガード下のオイディプス——スフィンクスの謎解き』。原作は「ギリシャ悲劇の最高峰」として名高い、ソポクレスの『オイディプス王』。オイディプスを串田十二夜さんが演じました。
観客からは「とても自由で楽しい『体験としての演劇』だった」「串田さんの脚本・演出が驚異であり、脚色をしているのにしっかりソポクレスの『オイディプス王』だという不思議な感じ」などの感想が上がっており、作品へのリスペクトはそのままに、斬新な視点で再構築した点が高く評価されているようです。
2024年6月には新宿村LIVEで『あの夏至の晩 生き残りのホモサピエンスは終わらない夢を見た』が上演されました。本作品は、シェイクスピアの名作『夏の夜の夢』を原作とし、8名の俳優とともに、独自の発想で原作を解体してその世界観を新たに表現した作品です。
観客からは「人間の世界と妖精の世界の、幻想的で独特な世界観に引き込まれっぱなし」「シンプルだけど豊かな表現の世界に、想像力が搔き立てられた」「“目から鱗”な解釈と現代口語への落とし込みがナチュラルでよかった」など高評価の声が多くあがっていました。
いずれの作品にも、大空ゆうひさん、串田十二夜さんなどおなじみのキャストが登場しており、公演ごとに違った役柄で観客を楽しませてくれるのも、魅力のひとつです。
フライングシアター自由劇場『そよ風と魔女たちとマクベスと』は、4月25日(金)からの東京公演に加え、5月9日(金)から11日(日)まで松本公演を予定しています。公式HPはこちら

古典演劇の魅力は、解釈次第で多様な表現ができること。この名作を何度も手がけてきた串田さんだからこそ生み出せる、新しい『マクベス』の世界が楽しみです。