歴史上で死んだといわれている人物が、実は生きていたら?そんなifの噂話が生んだロシアの「アナスタシア伝説」を元に制作されたのが、ミュージカル『アナスタシア』。記憶喪失の少女アーニャの旅を描いた『アナスタシア』は、2020年に梅田芸術劇場と宝塚歌劇団によって上演されました。世界中で注目されている『アナスタシア』の魅力に迫ります。
ロシアの「アナスタシア伝説」を題材にしたミュージカル
アナスタシアは、ロシア帝国最後の皇帝ニコライ2世の末娘である皇女の名前です。ロシアでは1917年に革命が勃発し、アナスタシアは17歳のときに両親や姉弟とともに革命軍によって銃殺されました。しかしその後「皇帝の末娘が生きている」という噂が流れ、我こそはアナスタシアだと名乗る「偽アナスタシア」が数多く現れます。20世紀最大の謎とも言われる「アナスタシア伝説」は多くの創作物にインスピレーションを与えました。
そうして生まれたのが、ミュージカル『アナスタシア』。パリへ渡っていたアナスタシアの祖母マリアは、皇帝一家の訃報にひどく絶望します。マリアはアナスタシアの噂を聞き、懸賞金をかけて彼女を探すことにしました。その話を聞いた詐欺師のディミトリは、偽アナスタシアを連れてパリに渡り、懸賞金をもらおうとたくらみます。
そこで出会ったのが主人公のアーニャ。彼女は昔の記憶をなくし、繰り返し夢に現れるパリの街に憧れていました。実はその記憶は、アーニャがアナスタシアだったころにマリアと交わした「いつかパリで会おう」という約束に基づいたものでした。こうしてアーニャはディミトリと一緒にパリを目指し、本当の自分を探す旅に出ます。
ブロードウェイで大ヒット!世界各国へ広がる『アナスタシア』旋風
『アナスタシア』がブロードウェイで上演を始めたのは、2017年4月24日。1997年公開のアニメ映画『アナスタシア』に着想を得たこの舞台には、トニー賞を受賞した脚本家と演出家、映画版の作詞作曲を担当した音楽チームが集結しました。
アーニャがロシアからパリへ旅する様子は、美しい音楽や舞台と連動するLEDスクリーンの演出によってロマンチックに展開されます。ブロードウェイでは2019年3月まで2年にも及ぶロングランを記録し、大ヒット。2018年からはスペインやドイツなど世界各国でも開幕し、2020年には満を持して日本に上陸しました。
2つのカンパニーで上演されたのは日本だけ!
世界中で注目を集める『アナスタシア』は、日本では2つの異なるカンパニーで上演され、さらなる話題を呼びました。最初に日本公演を開始したカンパニーは、梅田芸術劇場。ブロードウェイ公演のクリエイティブスタッフが来日し、本家そのままの重厚で豪華絢爛なアーニャの記憶の旅の世界を作り上げました。
次に公演を行ったのが、宝塚歌劇団の宙組。宝塚版のオリジナル要素を加え、アーニャとディミトリのロマンスがより鮮明に描かれました。梅芸版と宝塚版、2つの公演を比べて楽しめるのは、日本版『アナスタシア』ならではの贅沢です。
「アナスタシア伝説」をベースにした歴史ロマンあふれるミュージカル『アナスタシア』をご紹介しました。実在のアナスタシアは、姉弟とよく遊ぶ明るいお転婆な少女だったようです。無邪気な少女が革命の犠牲になってしまったと思うと心が痛みますが、だからこそ『アナスタシア』が描く夢のような冒険は、世界中の人々を虜にしています。