2026年、ノエル・カワードの傑作ラブコメディ『プレゼント・ラフター』が、待望の日本本格上演を迎えます。華やかなスターの裏側と、予測不能な人間模様を、ウィットに富んだ会話劇で描き出す、痛快で心温まるコメディの魅力をご紹介します!

ノエル・カワードのウィットに富んだ会話劇

『プレゼント・ラフター(Present Laughter)』は、イギリスのマルチアーティスト、ノエル・カワードが1939年に執筆し、1943年に初演された傑作コメディです。シェイクスピア『十二夜』の引用からタイトルが取られ、「刹那的な喜び」という意味合いも持ちます。

舞台は高級アパートの一室。人気絶頂のスター俳優ギャリーの自宅です。華やかな生活を送る一方で、極度の自己愛の持ち主であり、常に自分が世界の中心でなければ気が済まないギャリー。さらに人気だからこその孤独感と老いへの恐れから、私生活でも演技をしてしまうことに悩んでいました。

物語は、ギャリーが海外ツアー出発する直前を描いています。彼の元には、なぜか彼の人生に深く関わろうとする、あるいは依存しようとする「個性的な訪問者たち」が次々と現れます。しかし、情熱や依存心、勝手な行動に巻き込まれ、翻弄されながらも、持ち前の傲慢さとユーモアで乗り切ろうとします。

本作の最大の魅力といえば、カワード特有のウィットに富んだ会話劇だと思います。登場人物たちのやり取りはテンポがよく、皮肉とユーモアが巧みに織り交ぜられています。ギャリーが自己陶酔し、大袈裟に苦悩し、また自己肯定に戻る一連の流れに、思わず笑みがこぼれてしまうことでしょう。

スター俳優という「虚像」と、そこに群がる人々の「現実」が交錯することで生まれる、人間の滑稽さが存分に描かれた『プレゼント・ラフター』。自己中心的なのに憎めないギャリーの姿を通して、わたしたちは笑いながらも、人間のエゴや愛情のあり方について考えさせられる。そんなラブコメディの金字塔です。

シリアスからコメディまで演じ分ける、稲垣吾郎の真骨頂へ

主人公ギャリーを稲垣吾郎さんが演じます。長年にわたり、映像や舞台で数多くの役柄を演じ、近年では舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』やミュージカル・コメディ『恋のすべて』など、演劇人としてのキャリアを精力的に積み重ねています。ギャリーという役は、稲垣さんのエレガンスと、時折見せるシニカルな表情、そして舞台上での存在感とぴったりマッチすると感じます!

主人公は絶大な実力とカリスマ性がある一方、自分の感情や周囲への依存心を隠しています。自己愛の強さゆえの不安定さと、それを隠すための振る舞いを繰り返すのです。つまり、シリアスな演技で内面の葛藤を深く掘り下げつつ、コメディではその落差で笑いを生み出さなければいけないため、かなり高い演技力が要求されるのではないでしょうか。

稲垣さんは、これまでもシリアスなサスペンスから人間ドラマ、そして軽妙なコメディまで幅広く演じ分けてきました。特に、彼ならではの「孤高の美しさ」は、大衆に愛されながらも、どこか孤独なギャリーの内面を表現する上で大きな武器になるはずです。

稲垣さんの演劇キャリアにおける「真骨頂」とも言える、「最も魅力的で大人げない」スター俳優像が、2026年の舞台に誕生するのが待ち遠しいですね。

2026年を華やかに彩る、辛口でハートフルな極上の笑い

舞台『プレゼント・ラフター』の面白さを何倍にも引き上げるのが、「個性豊かな訪問者」たちを演じる豪華キャスト陣です。

ギャリーの妻役には、透明感と芯の強さを合わせ待ち、リアルな感情表現が持ち味の倉科カナさん。さらに、黒谷友香さん、桑原裕子さん、望月歩さん、金子岳憲さん、中谷優心さん、白河れいさん、浜田信也さん、広岡由里子さんが、ギャリーを取り巻く個性的な人々を演じます。

演出を手掛けるのは、登場人物の心情を精巧に描くことで評価されている小山ゆうなさん。本作が稲垣さんとの初タッグになります。

名声や欲望、孤独や葛藤が描かれた、深みある大人のラブコメディ。でも、軽妙な会話シーンが満載なので、小難しい考察抜きに、登場人物たちの「困った可愛らしさ」に魅了されてしまうはずです。演劇初心者の方も心配せず楽しめる、そんなコミカルな舞台となっています。

辛口なユーモアと、ハートフルな人間愛が絶妙にブレンドされた本作は、日常の疲れを吹き飛ばし、観劇後にはきっと心が温かくなる、誰もが気軽に楽しめる極上のエンターテイメントです。2026年の始まりに、おしゃれで心躍るこのラブコメディをぜひ劇場でご堪能くださいね。

PARCO PRODUCE 2026『プレゼント・ラフター』は、2026年2月7日(土)から28日(土)まで、東京のPARCO劇場で上演予定です。また、京都・広島・福岡・宮城にて地方公演が実施されます。詳しい情報は公式サイトをご覧ください。

さよ

実は、2022年の映画『窓辺にて』で、稲垣さんの、寂しそうだからこそ触れてみたくなる、そんな演技に心を奪われ、大ファンになりました。本作では自己陶酔型のスター俳優を演じられると聞き、期待は最高潮です!必ず観に行きたいと思います。