演劇は、作家が書いた脚本があって初めて成立するもの。俳優は「言葉」を生業にしながら、作家から「言葉」を与えられないと何も話せないのだ。では、作家が本番までに脚本を書けなかったら?そんな劇団のドタバタを描いた江古田のガールズ『遺作』を観劇してきました。(2020年12月15日〜20日・下北沢「劇」小劇場)

本番まで1週間!作家が行方不明に…

本番まで1週間という、ギリギリのタイミングで劇作家が書けたのはオープニングだけ。LINEに応じず、現場にも来ない。いつまで経っても台本は送られてこない。ゲスト出演する俳優たちがピリピリしだし、頭を下げ続ける劇団員たち。

小劇団である江古田のガールズが上演するからこそ、なんともリアルなストーリーです。きっとエンターテイナーというのは、人生そのものをエンターテイメントにしてしまうのだな。そんなことを思いながら観劇しました。

劇中劇のマトリョーシカ!?物語は衝撃の展開へ

「楽しく面白く分かり易く」をテーマに掲げている江古田のガールズ。確かに、笑える瞬間は多い。しかし彼ら、確実に策士ではないかと思うのです。まず本作は、イギリスの密室殺人事件が発覚する場面からスタートします。首を吊った男が発見され、驚く貴族たち。そこに名探偵と警官が登場。「これは自殺ではない、他殺だ」と、よく聞くような殺人事件が始まる。「あれれ…?こんな話だっけ?」と思ったところで、「カット!」と物語がストップ。これは逃亡した劇作家が描こうとしていた作品のオープニング部分だったのです。

劇の中で別の劇を演じることを、劇中劇と言います。劇だと思っていたら、それは劇中劇だった。そんなサプライズをいくつも用意することで、作品は思わぬ展開へと進んでいきます。まるで劇中劇のマトリョーシカ。どれが本物の「劇」で、どれが「劇中劇」なのか。(そもそも劇自体が「本物」ではないのですが)段々と、演劇とリアルの境目が曖昧になっていきます。気づいた時には衝撃の結末に辿り着いていた。笑顔で踊る役者たちに手拍子を送りながら、「どこがどうなっていたのかもう一度観たい!」という気持ちに駆られていたのでした。

Yurika

「夢は、新生PARCO劇場公演」と銘打っている江古田のガールズ。今後の公演も楽しみです!公式HPはこちら