1989年、ロンドンのウエストエンドで初演され、世界中で愛されてきたミュージカル『ミス・サイゴン』。ベトナム戦争末期のサイゴンを舞台に、“アメリカン・ドリーム”を追い求めるエンジニア、ベトナム人の少女キムと米兵クリスの姿を壮大な音楽とスケールで描きます。多くのキャストが初参加となる2026年上演に向け、製作発表会見が行われました。

劇中から8曲の楽曲を歌唱披露

製作発表会見冒頭では、エンジニア役の駒田一さん・東山義久さん・桐山照史さん、キム役の屋比久知奈さん・清水美依紗さん・ルミーナさん、クリス役の甲斐翔真さん・小林唯さん、ジョン役のチェ・ウヒョクさん・金本泰潤さん、エレン役のエリアンナさん・加藤梨里香さん、トゥイ役の岡 シモンさん・吉田広大さん、ジジ役の則松亜海さん・藤森蓮華さん、さらにアンサンブルキャストも加わり、約30分間にわたる歌唱披露が行われました。

物語の幕開けに、エンジニアが経営するドリームランドで歌われる賑やかな「火がついたサイゴン」からスタートし、トゥイ役の岡 シモンさん・吉田広大さん、アンサンブルキャストによる「時が来た」へ。

そして、キム役の屋比久知奈さん・清水美依紗さん・ルミーナさん、クリス役の甲斐翔真さん・小林唯さんは、キムとクリスの恋をロマンチックに描いたナンバー「世界が終わる夜のように」を歌唱。

続いてエリアンナさん・加藤梨里香さんが、戦争の悪夢にうなされるクリスを支える妻エレンの「今も信じているわ」を。

社会主義国となったベトナムで足掻きながらも逞しく生きるエンジニアの生き様を描いた「生き延びたけりゃ」では、まだ稽古前でありながら駒田一さん・東山義久さん・桐山照史さんがアイコンタクトを取りながらエネルギッシュに歌い上げます。

そしてキムが息子タムに対する究極の愛を歌い上げる本作きっての大ナンバー「命をあげよう」は、屋比久知奈さん・清水美依紗さん・ルミーナさんがそれぞれの歌声の持ち味を見せながら、3人での特別バージョンとして披露。

ジョン役のチェ・ウヒョクさん・金本泰潤さんは男性アンサンブルとともに、ベトナム女性との間に生まれた子どもたちに救いの手を差し伸べようと歌う「ブイドイ」を。

最後に、エンジニア3名とアンサンブルキャストによって、エンジニアの夢が語られる大ナンバー「アメリカン・ドリーム」が披露されました。

戦争の悲劇と共に生命讃歌を描く

歌唱披露後、クリス役の小林唯さんは「この後明治座に行かないといけないので」退席となり、歌唱披露について「ものすごく緊張しました。記録に残るのが辛い(笑)」と苦笑いしつつも、「『ミス・サイゴン』は初めて観た時から憧れの役と作品でした。今回このようにご縁をいただけたこと、本当に感謝しております。今この世界情勢、世の中の状況を鑑みても、改めて戦争の悲惨さ、戦争が招いた悲劇を世の中に伝えるこの作品を、上演する意味があるんじゃないかと思っております。心して臨みたいと思います」と意気込みが語られました。

2014年からエンジニア役を務める駒田一さんは本作の魅力について「ベトナム戦争を扱った非常に重いテーマの中で、戦争だけでなく人間愛など色々なことがあるんですけれども、ミュージカルということを考えると本当にトップクラスの音楽。あの頃の情勢、人間、空気、色々なことを含んでいて、少し全体的にキーが高いんですね。だからこそドーンとくる、僕も大好きな楽曲ばかりです。どのシーンが良いかを聞かれると、自分が出ているシーンが良いと言う他ないんですけれども(笑)、どのシーンをとっても絵になるし、聴き心地も良い。約3時間の中で流れる全てが大好き」と語ります。

前回からエンジニア役を務める東山義久さんは「今の時代だからこそ、2026年の『ミス・サイゴン』にとても重要なメッセージがあると思っています。曲が持っている強さ。悲惨な話ではあるんですけれども、それぞれのキャラクターの生命讃歌が大きいと個人的には思います。前回とまた違った形のエンジニアを皆さんにお届けできるように」と思いをコメント。

今回初参加となる桐山照史さんは「この作品のファンの方がたくさんいらっしゃる中で、桐山のエンジニアを観て“良かった、また観たい、これからも頑張れ”と思ってもらえるように」と意気込みながら、駒田さん・東山さんには「こういう時、“迷惑をかけないように頑張ります”と言うのが普通だと思いますが、迷惑かけます。すみません、先に謝ります!(笑)お二人に甘えながら、150%の力を出して頑張りたいと思います」と等身大に語られました。

前回に引き続きキム役を務める屋比久知奈さんは「沖縄出身で、ルーツというところも含めて自分の中のコアとして今でも強く残っている作品」と語り、「日本は平和だから、自然に“生きる”事ができているけれども、毎日毎日生きるために一歩一歩進んでいく人間のエネルギー、群衆の力というのを『ミス・サイゴン』では感じます。一人一人の声が合わさった時の力を感じた歌稽古の第一声が、とても胸に来る瞬間だったことを覚えているので、群衆の力、人間の生きる力がこの作品の魅力だと思う」と前回の公演を振り返られました。

清水美依紗さんはニューヨーク留学時、初めて授業の課題曲で歌った楽曲が「命をあげよう」だったそう。出演を「夢のよう」と語りながら、「初めてこの作品を観たのはワシントンD.C.だったんですけれど、その時に感じたのは、1人1人の愛の強さと、弱さの力強さ。弱さが強いというのが本当に不思議で人間らしく、そういうものが音楽や俳優の表情に現れていると感じました。人間くささや、愛のため、子どものために命をあげるとはどういうことなのかを深掘りしながらやっていきたい」と意気込みます。

ルミーナさんは10数年前に本作を観劇した際、キム役について「いつか自分が絶対にやりたい役」と記していたと言います。「観劇後、心がすごく重くなるとは思うんです。決してハッピーな気持ちで劇場を出られる作品ではないと思うんですけれども、それぞれが正しさを持って、それぞれの最善を尽くして選択をしている人生だと思います。壮大な音楽、壮大な世界観からその人生と生々しさが見えてくること自体が魅力ではないかと思います」と語られました。

小林唯さんと共にクリス役をWキャストで務めるのは、甲斐翔真さん。「初参加ということで、新しい風を吹かせられるよう、誰よりもこの作品を理解したい。作品を分析し、役を分析し、作者のメッセージを分析し。昨年は実際にベトナムにも視察に行きました。リアルに、『ミス・サイゴン』を表現できたら」といつも情熱的かつ冷静に作品を深掘りされる甲斐さんらしい意気込みが。

ジョン役を務めるチェ・ウヒョクさんは『フランケンシュタイン』のアンリ/怪物役でデビューを果たし、『ダーウィン・ヤング 悪の起源』韓国オリジナルミュージカル初演のタイトルロールを務めるなど、韓国ミュージカル界で活躍中。「日本語で歌うのは本当に難しいですね。今も日本語の勉強を一生懸命続けていますから、皆さんご期待ください」と日本語でコメントしました。

Wキャストでジョン役を務めるのは、劇団四季で『ノートルダムの鐘』カジモト役や『美女と野獣』野獣役、『ゴーストアンドレディ』グレイ役などを務めた金本泰潤さん。「今ここにいるのが不思議」と語りつつ、「平穏に過ごしている僕たちがこういう作品をやるのは本当に難しいこと。作品の中では緊急事態の有事であるということ、兵士の皆さんへの敬意、ジョンへの敬意を忘れずにやっていきたいと思います。日本語はウヒョクさんをサポートしますが、軍隊のことは色々と教えていただけたら」と語ります。

エレン役を務めるエリアンナさんは「客席で何度も観たことがある作品で、観ていて本当に心がたくさん揺れ動きました。どんな時代でも揺るがないのは愛だと感じたので、エレンなりの愛を込めて、(Wキャストの)梨里香ちゃんと一緒にパッションを込めて届けたい」と意気込みます。

加藤梨里香さんは「大学3年生の時にゼミ発表で『ミス・サイゴン』について発表したことを、昨日の夜に思い出しました。当時の資料を引っ張り出して、1から作品と向き合っていこうかなと思います。この世界情勢の中で、この作品を届けるという責任感をしっかりと持って、作品と、そしてエレンと誠実に向き合っていけたらと思っております」とコメント。

トゥイ役も今回が初参加のお二人。岡 シモンさんは「高校生の時に初めて帝国劇場で『ミス・サイゴン』を観て、すぐに作品の虜になりました。受験勉強の合間を縫っては、音楽を聴いたり、音楽室で大声で歌ったりしていました。こうしてこの作品に参加させていただけること、皆様とご一緒できることを、本当に光栄に思います。Wキャストの吉田広大さんと共に、トゥイという役を深く深く追求していけたら」と意気込みます。

吉田広大さんはお仕事の都合で楽曲披露のみの参加となり、コメントが代読されました。「初めて、この作品に携わらせていただけることに、とても興奮しているとともに、偉大な作品に関われることも、光栄に感じています。実直に作品と向き合い、トゥイとして、ただただ、全力で生きていけたらと思います」。

ジジ役を前回に引き続き務める則松亜海さんは「昨年12月に子どもを産み、新たなライフステージで初めて挑戦する舞台となります。この世界情勢の中で、子を持ち、母となり、『ミス・サイゴン』を新たな一面、違った見方で見る事ができると思うので、1から作り直すつもりで心を込めてやっていきたいと思います」とコメント。

撮影:晴知花

今回ジジ役で初参加となる藤森蓮華さんは「『ミス・サイゴン』という世界中から愛され続ける作品の一員としてこの場に立っていること、心の底から感謝が溢れてきています。同時に、非常に身の引き締まる思いです。この時代に、この作品を届ける意味を、自分の中に宿しながら、ジジとして、誠実に、まっすぐに、そして力強く生き抜きたいと思います」と語られました。

1992年の日本初演から34年、次世代へと受け継がれたミュージカル『ミス・サイゴン』。劇場も帝国劇場から東急シアターオーブへと移り、新たな歴史が紡がれます。

ミュージカル『ミス・サイゴン』は2026年10月・11月〜東京・東急シアターオーブ、12月〜大阪・梅田芸術劇場 メインホール、福岡・福岡市民ホール 大ホール、2027年1月〜静岡・アクトシティ浜松 大ホール、北海道・札幌文化芸術劇場 hitaruにて上演されます。公式HPはこちら

https://youtu.be/7kcUw_pqukw

Yurika

多くのキャストの皆さんが『ミス・サイゴン』を客席から観た時や作品と出会った時の想いを語られていて、次世代にこの作品が受け継がれたことを実感しました。また、今の世界情勢の中、この作品を上演する意義について皆さんが深く考えられていることが伝わってくる製作発表会見でした。私たちAudienceも本作のメッセージをお届けできるよう、真摯に作品と向き合っていきたいと思います。