2027年に日本初演25周年を迎えるウィーン発の人気ミュージカル『モーツァルト!』。この記念すべき年の2月より、東京・福岡・愛知・大阪にて上演されます。そこで、作品の見どころについて、日本での上演の歴史や2027年版のキャストと併せてご紹介します。
クンツェ&リーヴァイ、ゴールデンコンビの名声を高めた大ヒットミュージカル
『モーツァルト!』は、ミヒャエル・クンツェさんとシルヴェスター・リーヴァイさんのゴールデンコンビによるウィーン発ミュージカルです。作詞家・脚本家のミヒャエル・クンツェさんが脚本・歌詞を、作曲家で編曲家、指揮者、ピアニストでもあるシルヴェスター・リーヴァイさんが音楽・編曲を手掛けました。
2人は1970年代よりコンビを組んで音楽業界で功績を挙げ、やがてオリジナルミュージカルの創作に挑戦。1992年にオーストリア・ウィーンにてミュージカル『エリザベート』の世界初演を実現させると、1999年には『モーツァルト!』を世に送り出しました。
どちらも大きな反響を呼び、オーストリア国内に留まらず世界各地で上演されるように。今やクンツェ&リーヴァイの代表作として、多くのファンに愛されています。
また、2006年のミュージカル『マリー・アントワネット』や2014年の『レディ・ベス』は東宝からの依頼で製作された日本発ミュージカルであり、再演もされています。さらに、構想に10年以上の歳月を費やしたミュージカル『ベートーヴェン』が、韓国に続いて日本で2023年に初演されたことも話題となりました。
天才・モーツァルトの光と影に迫る
本作の主人公は、天才と名高い作曲家・演奏家のヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトです。18世紀にオーストリアのザルツブルクに生まれたモーツァルトは、幼い頃より音楽の才能を発揮。ヨーロッパ各地を旅して演奏を披露し、神童と称賛されました。成長して故郷を離れた後は、ウィーンで華々しく活躍。交響曲から協奏曲、オペラに至るまで、あらゆるジャンルにおいて数々の傑作を残しました。しかし、晩年は経済的に困窮していたといわれ、最後は病により35歳の若さで亡くなってしまいます。その死に関してはさまざまな説が唱えられているものの、いまだ解明にはいたっていません。
本作では、歓喜と苦悩、いわば光と影が共存するモーツァルトの生涯に注目。「才能が宿るのは肉体なのか?魂なのか?」という根源的な問いかけをテーマに、生身の人間である“ヴォルフガング”と才能の化身“アマデ”を対比させながら、モーツァルトの内面に迫ります。
この“アマデ”の存在をはじめ、史実を踏襲しつつもフィクションを巧みに織り交ぜて展開していくストーリーが、本作の魅力のひとつ。例えばモーツァルトが仕えていた大司教と決別したことやウィーンでの成功、コンスタンツェとの結婚などは、史実として挙げられます。そこから想像を膨らませ、ヴォルフガングが何を考え、どう行動するのか描き出すことで、単なる偉人の伝記ではなく“人間モーツァルト”の物語が成立しています。
<あらすじ>
ザルツブルクの宮廷楽士であるレオポルト・モーツァルトとその娘ナンネールは、錚々たる名士たちが集まる貴族の館で、今、幼い息子がピアノを弾くのを目の当たりにしている。5歳にして作曲の才能が花開いたその子ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは、“奇跡の子”と呼ばれていた。
歳月は流れて、ヴォルフガングは故郷ザルツブルクで音楽活動を続けている。傍にはいつも、奇跡の子と呼ばれた頃のままの“才能の化身・アマデ”が寄り添い、作曲にいそしんでいた。しかし、青年ヴォルフガングは、ザルツブルクの領主であるコロレド大司教に仕えて作曲をすることに嫌気がさしていた。「大司教に逆らうな」という父と意見が衝突。ついには自分を束縛する大司教に、怒りを爆発させてしまう。
ヴォルフガングは名声と自由な音楽活動を求めて、母親と共にザルツブルクを出るが、幼い時のように持て囃されることはなかった。逆に旅費を使い果した上に、旅先で母を亡くしてしまう。失意のうちに故郷に帰ってきたヴォルフガングは、幼少から彼の音楽の才能を見抜いていたヴァルトシュテッテン男爵夫人の援助を受けて、ウィーンで音楽活動をする決意をあらたにする。ヴォルフガングはウィーンに移り住み、知人のウェーバー一家の娘であるコンスタンツェとの愛情を急速に深めていく。しかし、コロレド大司教の謀略によって、演奏の機会をことごとく絶たれてしまう。ヴォルフガングは再び大司教と対決し、二人の関係はついに決裂する。
大司教との決裂後、ヴォルフガングはウィーンの社交界で話題を呼んでいた。コンスタンツェとも結婚、仕事も精力的にこなし、ヴォルフガングにとって故郷に残してきた父と姉の存在がどんどん薄くなるのだった。レオポルトは息子の成功を誇りに思う反面、その思い上がりを感じ取る。しかしヴォルフガングは父の苦言を聞き入れようとしない。二人はついに心を通い合わせることなく、レオポルトはウィーンを後にする。
そして、オペラ『魔笛』を成功させ音楽家としての頂点を極めるヴォルフガングの前に、謎の人物が現れ『レクイエム』の作曲を依頼するのだが…。
「僕こそ音楽」ミュージカルコンサートでも定番の名曲の数々
ストーリーと並んで心揺さぶられるのが、クンツェ&リーヴァイの生み出した楽曲です。とりわけ「僕こそ音楽」は、音楽に愛され音楽を愛したヴォルフガングという青年を鮮烈に表現した名ナンバー。曲調こそ軽やかですが、「このままの僕を愛してほしい」という率直な歌詞には周囲に理解されないことへの孤独や葛藤が滲み、聴いていて切なくなります。
また、1幕と2幕のラストを飾る「影を逃れて」は、作品のテーマを象徴する代表曲。ヴォルフガングが“アマデ”という自らの才能に縛られ、自由に生きられないと歌い上げる様子は、まさに魂の叫びそのものといえます。
さらに、コンスタンツェの「ダンスはやめられない」もドラマチックで印象深い1曲。一見奔放に振る舞っているようで、愛する人とすれ違う現実に悩み苦しんでいる彼女の本音に、胸が痛くなります。
愛についての楽曲といえば、1幕でヴァルトシュテッテン男爵夫人が歌う「星から降る金」も外せません。「愛とは解き放つことよ、愛とは離れてあげること」と父・レオポルトに諭し、なりたいものになるようヴォルフガングを励ます歌詞が、心に深い余韻を残します。
2002年日本初演、アップデートを経て進化
本作は、2002年に日生劇場で日本初演を迎えました。以来、2005年と2007年、2010年、2014年、2018年、2021年、2024年と度々再演される大人気作となっています。
演出・訳詞を担ったのは、宝塚歌劇団を中心にミュージカル界の第一線で活躍し続ける演出家・脚本家の小池修一郎さんです。小池さんはクンツェ&リーヴァイ作品の日本初演に深く関わっており、ミュージカル『エリザベート』の宝塚版では潤色・演出、東宝版では演出・訳詞を手掛けました。また、2026年2月に『レイディ・ベス』のタイトルでブラッシュアップして上演された『レディ・ベス』でも、初演時より演出・訳詞を担当しています。小池さんのキャリアにおいて代表作といえる日本版『モーツァルト!』は、再演を重ねながら進化してきました。
2018年には舞台装置や振付、照明などビジュアル面を大幅にリニューアル。併せてヴォルフガングとコロレド大司教のデュエットナンバー「破滅への道」も追加され、登場人物の感情の機微を一層丁寧にすくい上げています。
そして日本初演25周年となる2027年、3年ぶりに本作の上演が決定。奇しくも初演と同じ日生劇場での公演を皮切りに、全国各地を巡演します。
中川晃教・井上芳雄から始まった、日本版ヴォルフガングの歴史
初演から通算8回の上演歴を誇る本作では、これまで5人の俳優がバトンをつなぎ、主人公のヴォルフガングをWキャストで演じてきました。
2002年、2005年、2007年にタイトルロールを務めたのは、中川晃教さんと井上芳雄さんです。中川さんは2001年に歌手デビューした翌年、本作の主役に抜擢され、素晴らしい歌唱と演技により数々の演劇賞を受賞。以降、伸びやかで力強い歌声と柔軟な表現力を武器に、ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』や『フランケンシュタイン』など、多彩な作品で唯一無二の存在感を放っています。
井上さんは、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役で初舞台を踏んだ2年後に、本作で主演を果たしました。卓越した歌唱力と演技力に年々磨きをかけ、海外ミュージカルからオリジナル作品まで幅広く出演。今や日本のミュージカル界を牽引する俳優として、確固たる地位を築いています。
2010年には、4回目の出演となる井上さんとともに、山崎育三郎さんが初登場。2007年と2008年にミュージカル『レ・ミゼラブル』でマリウス役を好演した山崎さんにとって、さらなるステップアップとなりました。
2014年版のWキャストもこの2人だったのですが、井上さんはモーツァルトの没年齢と同じ35歳になったのを契機に卒業を発表。12年にわたって5回も演じたハマり役だけに、寂しさを覚えたファンも多かったでしょう。
そうして2018年版でヴォルフガング役を託されたのは、3回目の山崎さんと初参加の古川雄大さんです。古川さんはミュージカルを中心に経験を積んでいましたが、本作で初めて帝国劇場での主演を達成。ヴォルフガング役を含めた演技が評価され、2019年の第44回菊田一夫演劇賞を受賞しました。
続く2021年版も、山崎さんと古川さんのコンビが続投。ただ寂しいことに、これをもって長らく本作の顔であった山崎さんが卒業しました。
直近の2024年の公演ではついに3回目に到達した古川さんと、帝国劇場初主演の京本大我さんがWキャストに選出。京本さんはアイドルグループ「SixTONES」のメンバーで、とりわけ近年は透き通るような歌声を活かしてミュージカル・舞台にも活躍の場を広げています。古川さんと京本さんは2015年のミュージカル『エリザベート』でルドルフ役のWキャストを務めた仲であり、互いに刺激を与え合いながら大役に臨みました。
こうして見ると、歴代キャストは現在の日本ミュージカル界を支える気鋭の俳優ぞろい。若手の注目株が、ヴォルフガングを演じるなかで飛躍を遂げたことが察せられます。
2027年版は日本公演初のトリプルキャストに!
来たる2027年の『モーツァルト!』では、日本における25年間の歴史で初めて、タイトルロールがトリプルキャストとなります。
1人目は、2024年版にてWキャストの1人だった京本大我さんです。(東京公演のみ)「SixTONES」での音楽活動と並行して、ミュージカルや映像作品にも積極的に挑戦。2025年に主演したミュージカル『Once』は多くの観客の心を捉えました。前回公演から3年、着実に成長してきた京本さんが2度目のヴォルフガング役とどう向き合い表現するのか、期待せずにはいられません。
残る2人は、今回から本作に参加するニューフェイスです。
2人目は、俳優として確かな実力と華やかさを併せ持つ有澤樟太郎さん。ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズで人気を博すと、2023年の舞台『キングダム』、2024年のミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』と立て続けに話題作で主要な役を務めました。さらに2025年にはミュージカル『HERO』でシアタークリエ単独初主演を果たしたほか、クンツェ&リーヴァイコンビと小池修一郎さんによるミュージカル『レイディ・ベス』のロビン役を好演。9月には主演ミュージカル『民王』が開幕するとあって、今まさに勢いに乗る若手スターのひとりです。
3人目の伊藤あさひさんもまた、次代を担う新星として注目を集めています。近年は『ロミオ&ジュリエット』や『1789 -バスティーユの恋人たち-』など、人気ミュージカルに次々と出演。2025年のミュージカル『エリザベート』でルドルフを演じた姿も、記憶に新しいところです。また、2026年8月に千秋楽を迎えたばかりの韓国発ミュージカル『ETERNITY(エタニティ)』では、日本初演のカンパニーの一員として作品を盛り上げました。
京本さんと有澤さんと伊藤さん、三者三様のヴォルフガングを見られると思うと、新楽章の幕開けが待ち遠しくなります。
ミュージカル『モーツァルト!』は2027年2〜3月に東京・日生劇場にて上演されます。その後、4月に福岡・博多座、4〜5月に愛知・愛知県芸術劇場大ホール、5月に大阪・梅田芸術劇場メインホールを巡演予定です。公式HPはこちら。
初めてミュージカル『モーツァルト!』を観た時、「こんな角度からモーツァルトの人生を考えることができるんだ」と衝撃を受けたことを今でも覚えています。2027年の公演では物語と楽曲はもちろん、タイトルロールのトリプルキャストも楽しみで仕方ありません!




















