現在絶賛公開中のミュージカル映画『イン・ザ・ハイツ』。じりじりと日射しが照りつける季節ですが、この暑さが愛おしくなる作品でした。猛暑を吹っ飛ばすパワフルな登場人物たち、そして彼らを突き動かす陽気なラテン音楽。泣いたり笑ったり体を揺らしたりしながら楽しめる、真夏のミュージカル映画です。
「ハイツ」の住民たちを巡る物語
舞台はニューヨーク州マンハッタンのワシントン・ハイツ地区。ラテン系移民が多く暮らす地域です。移民一世のウスナビは雑貨店を営みながら、いつか両親の故郷であるドミニカ共和国で暮らすことを夢見ています。
日々の暮らしに追われながらもそれぞれの夢を描くハイツの住民達。真夏のニューヨークに押し寄せる歴史的な熱波。数々の苦難を創意工夫で乗り越える、地域コミュニティの絆が輝く作品です。
ハッピーなダンスナンバーは必見!
ヒップホップ、サルサ、ソウルなどのラテン音楽を基調としている楽曲は、ダンスナンバーとしても効力抜群!いわゆる王道ミュージカルとされる『レミゼ』などの重々しい楽曲は苦手…という方でも親しみやすいのではないでしょうか。歌詞はラップ調で、物語をテンポよく進めていきます。
「故郷」とはどこなのか
『イン・ザ・ハイツ』は、大人気の劇作家、リン=マニュエル・ミランダのデビュー作。本作で一躍有名人となったミランダ氏はその後『ハミルトン』や『モアナと伝説の海』を手掛け、次々に社会現象を引き起こしています。
本作の作詞・作曲・舞台版主演を担ったミランダ氏は、自身がプエルトリコ系の移民二世であり、主人公のウスナビ同様、ワシントン・ハイツ地区で生まれ育ちました。本作はミランダ氏にとって「地元に向けたラブレター」。移民一世としてのリアルな暮らしが反映されています。
日本にいる私たちには一見縁遠いように思えますが、地元への愛着や故郷に恋い焦がれる気持ちは世界共通でしょう。自分のルーツは一体どこにあるのか。その土地は「故郷」と呼べる場所なのか。そう問いかけてくるような映画でした。
映画版の監督を務めたのは、『クレイジー・リッチ!』で知られるジョン・M・チュウ。自身も移民一世であるチュウ監督は、本作を「『クレイジー・リッチ!』の個人的な続編」と称しています。ブロードウェイとハリウッドの最前線を走る二人の強力タッグも注目ポイントの一つです。Amazon Primeでの視聴はこちら
原作である舞台版は2008年にブロードウェイで上演され、最優秀作品賞を含む4つのトニー賞を受賞しました。日本でも2014年と2021年春に上演されるなど、世界中で愛され続けている作品です。長らく映画化の噂が絶えませんでしたが、13年の時を経て、ようやく実現されました。