数多くのきらびやかな舞台を生み出してきた宝塚歌劇団が新たな題材に選んだのは、ネオンが輝く新宿の裏社会で活躍するスイーパー(始末屋)の物語。宝塚歌劇団雪組が上演している『シティハンター-盗まれたXYZ-/fire fever』は、日本を代表するハードボイルドコメディ初のミュージカル版と生オーケストラによるショーの2本立ててです。宝塚特有の優美なイメージを残しつつ、これまで見たことのないほどアツく、そしてクールな印象を受ける作品でした。東京宝塚劇場での観劇リポートをお送りします。(2021年10月・東京宝塚劇場)
世代じゃなくても夢中でGet Wild観劇!『シティハンター-盗まれたXYZ-』
主人公の冴羽獠は、美女にめっぽう弱いけれど銃の腕は超一流。裏社会では「シティハンター」と呼ばれ、パートナーの香とともに、数々の難事件を銃の腕前と情の熱さで解決しています。そんな獠と香の元に、軍事クーデターが勃発した小国から亡命したアルマ王女の護衛をしてほしいという依頼が舞い込みました。
また、新宿東口の掲示板にもシティハンターに助けを求める依頼人の「XYZ」のメッセージが。さらにアメリカから獠の元パートナーであるミックも来日し、それぞれの事件がやがて一つの大きな陰謀へとつながっていきます。
最初に感じたのは、個性的なキャラクターの多さと相関図の複雑さ。上演前はついていけるか不安になりましたが、その心配は杞憂に終わりました。冒頭では、キャストが演じるキャラクターの名前と顔を映像モニターで流しながらオープニング曲「CITY HUNTER」を全員でパフォーマンス。その後もニュース映像や宣伝広告としてモニターが巧みに使われていて、複雑に絡み合う登場人物たちの関係性を理解するのを助けてくれました。
なによりも作品への没入感を与えてくれたのは、雪組のトップとスター達が演じるキャラクターたちのインパクト。彩風咲奈さんが演じる獠は大の女好きだけどいやらしさはなく、決める時はクールに決める惚れずにはいられないキャラクター。ちなみに、原作で獠が美女に対してよく使う「も」から始まって「り」で終わる言葉は、「ハッスル」に言い換えられています。
パートナーの香や獠の良きライバルである海坊主、アメリカンスイーパーのミックなど、脇を固めるキャラクターたちも原作漫画から飛び出してきたかのような強烈さ。個人的には朝美絢さん演じるミックのかっこよさに悶絶しました。
『シティハンター』といえば、外せないのは名曲「Get Wild」。最近は”「Get Wild」出勤”という言葉が話題になり、ひと仕事終えたあとにこの曲を聴くと爽快感があると若者にも認知されています。劇中では、獠が依頼人に対して心が震えたときにこの曲をソロで熱唱。獠の台詞に誘われるようにあの有名なイントロが流れると、思わず胸が高鳴りました。バンドのSHISHAMOのギタリストである宮崎朝子さんが書き下ろした「WONDER LAND」など、舞台オリジナル曲も最高です。
ショーオルケスタFire Fever
1幕のあと、休憩を挟んで始まったのが『Fire Fever』。新トップに就任した彩風咲奈さん、朝月希和さんを中心に、新生雪組が妖艶かつエネルギッシュに歌い踊るレビューショーです。
タイトルの通り、ショーのテーマは「炎」。熱帯雨林やオペラハウス、コンクリートジャングル、スペインのフィエスタなど、次から次へと様変わりするきらびやかな舞台は、まさに形を変えて燃え続ける炎のようです。
1幕では対等なパートナーとしての関係性が濃厚だったトップの二人は、こちらのショーでは互いに寄り添いあって踊る姿がロマンチック。火の鳥と病弱な娘のブランカのラブストーリーには、彩風さん演じる火の鳥の一途な愛に心を打たれました。
そしてやはり、2幕でも目で追いかけてしまったのが朝美絢さん。ドン・ジョバンニやエスパニョールなど、女性たちを虜にする情熱的な歌とダンスに目が釘付けになってしまいました。
ショーをさらに盛り上げているのは、フルオーケストラの大迫力の演奏。タンゴやフラメンコのリズムを聞いていると、自分が日本にいることを忘れてしまうほどの異国情緒を味わえました。
正直なところ、ショーよりもお芝居への期待が強かったのですが、いざ見てみるとショーもお芝居に負けず劣らず面白い!宝塚歌劇団のすごさを改めて実感できる素晴らしい演目でした。
宝塚雪組による『シティハンター-盗まれたXYZ-/Fire Fever』は、11月14日まで東京宝塚劇場にて上演中。お芝居もショーも熱気に満ちていて最高潮の盛り上がりでした!千秋楽の14日には映画館でのライブ中継やRakuten TV、U-NEXT、dTVにてライブ配信もあるので、ぜひご自宅でも楽しんでみてはいかがでしょうか?【U-NEXT】ライブ配信はこちら