1962年にトニー賞7冠を達成、2011年にハリー・ポッターシリーズで知られるダニエル・ラドクリフが主演を務めたミュージカル『ハウ・トゥー・サクシード』。2020年9月に増田貴久さん主演にて上演された本作が、2021年早くも再演!再演ならではの新演出や作品の魅力についてお届けします。(2021年11月・東急シアターオーブ)取材会の様子はこちら

新キャストで実現したキュートすぎる新演出

「努力しないで出世する方法」という本を読んだ窓拭き清掃員のフィンチ(増田貴久さん)。本に従って大企業であるワールドワイド・ウィケット社への入社に成功します。社長のビグリー(石川禅さん)や人事部長ブラッド(黒須洋嗣さん)、社長秘書ミス・ジョーンズ(春野寿美礼さん)の信頼を獲得し、順調に出世街道を登っていくフィンチ。秘書のローズマリー(唯月ふうかさん)との恋も進展し、全てが順調だったある日、重大なアクシデントが起こってしまって…。

1960年代アメリカのビジネス社会を描いた本作。“努力しないで出世する”フィンチの人物像はもちろん、“コーヒーがないなら、仕事なんてできない”と歌う「コーヒーブレイク」や、長年郵便室長を務めるトゥインブル(ブラザートムさん)がクビにならないよう会社に従順に生きてきたことを歌う「会社の望むまま」など、楽曲もコミカルで風刺的です。

中でもコミカルに描かれているのが、ローズマリーとフィンチの恋模様。2020年はローズマリーを笹本玲奈さんが演じており、仕事熱心なフィンチを結婚相手として選んでいる印象でした。再演である今年、ローズマリーを演じるのは唯月ふうかさん。唯月さん演じるローズマリーは、より恋にまっしぐらで、可愛らしさと欲深さを兼ね備えたフィンチへの想いが常に溢れ出ています。演出でも可愛らしさの増したローズマリーとフィンチのラブシーンは必見です。

自信と実力を兼ね備えた新・フィンチと圧巻のダンスシーン!

全国ツアーや新曲「未来へ/ReBorn」リリースなど、NEWSとして音楽活動も活発だった増田貴久さん。柔らかで繊細な歌声に力強さが加わり、昨年から更に魅力的に進化した歌声でフィンチを演じます。いつも順調なフィンチが初めてピンチに追い込まれ、自分を鼓舞する楽曲「君を信じてる」では、“何があっても自分は自分の味方でいる”という強い想いを表現。たくましく成長した新・フィンチに圧倒されました。

取材会では「フラフラだった」と語るほど激しいダンスシーンでも、アンサンブルとの息はぴったり。カンパニー全体で魅せるパフォーマンスは、まだ不安の多い世の中に大きなエネルギーを与えてくれます。ミュージカルは明日を生きる活力をくれる。それを改めて思い出させてくれる作品です。

Yurika

筆者が観劇した日は大雨の影響で急遽、ミス・ジョーンズを代役・丹波麻由美さんが務めることに。急遽の変更とは思えない素晴らしいパフォーマンスに、カーテンコールでは客席・キャスト陣からも割れんばかりの拍手が巻き起こり、カンパニーと観客の愛を実感するひとときとなりました。ミュージカル『ハウ・トゥー・サクシード』は12月7日まで東京公演、12月14日から16日まで大阪公演が行われます。