『モーツァルト!』『レ・ミゼラブル』などに並ぶ、名作ミュージカル『エリザベート』。実在したオーストリアの皇后エリザベートの生涯を元に描いた作品です。2020年に新キャストでの上演が予定されていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け上演中止に。しかし2022年10月から、2020年版のキャスト(一部キャストのみ変更)にて上演が決定しました。今回は、そんなミュージカル『エリザベート』についてお届けします。
オーストリア皇帝と「死」に愛された“一人の少女”
エリザベート暗殺犯のルキーニは、100年たっても死後の世界で裁判にかけられていました。ルキーニは暗殺の理由を問われると「彼女がそう望んだ」と言いますが、裁判官は全く相手にしません。それならばと、ルキーニは当時を生きた人々を証人として呼び起こします。そして、エリザベートの生涯と、彼女を愛した「死の概念」トートの話を語り始めます。
「トートが主役」の宝塚歌劇団版と「ウィーン版」を踏襲した東宝版
ミュージカル『エリザベート』は、1992年にウィーンで初演が上演された作品。日本初演は、1996年の宝塚歌劇団版(以下宝塚版)で、2000年からは東宝版も上演されています。
宝塚版では、エリザベートが主役のウィーン版と異なり、トートが主役。各組のトップスターがトートを演じ、その相手役としてトップの娘役がエリザベートを演じています。宝塚歌劇団の代表作として名高い「ベルサイユのばら」と並び、現在でも繰り返し上演されている作品です。
東宝版は基本的にウィーン版に準拠しています。しかし、「夢とうつつの狭間に」「私が踊る時」など日本オリジナルの楽曲が存在しています。また、『エリザベート』にはアンサンブルキャストのほかに、バックダンサーがいるのが特徴的。東宝版では「トートダンサー」、宝塚版は「黒天使」と呼ばれています。ちなみに東宝初演時の「トートダンサー」には、現在も俳優として活躍している新納慎也さん(出演時はNIRO名義)、東山義久さんらが出演しています。
宝塚版と東宝版に出演したキャスト、歳月を経て役違いで出演するキャストも
日本初演の宝塚版でトートを演じた一路真輝さん。一路さんは、その後の東宝版の初演から2006年までエリザベートを演じています。また、一路さんの後にも瀬奈じゅんさんなど宝塚版と東宝版をまたいで、トートとエリザベートを演じた方が多数います。
2015年から東宝版のトートを演じている井上芳雄さんは、初演と翌年の2001年に、エリザベートの息子、皇太子ルドルフを演じています。今回新たにトートを演じる山崎育三郎さんは、2015年からルキーニを演じています。他にも歌舞伎俳優の尾上松也さんや、SixTONESの京本大我さんなどジャンルの垣根を超えた方々も『エリザベート』に出演してきました。
新キャストには、主に2.5次元作品で活躍する黒羽麻璃央さん、立石俊樹さんらが選出。黒羽さんはルキーニ、立石さんはルドルフとそれぞれ重要なポジションで期待が高まります。2020年の雪辱をはらすため、ぜひとも応援したい作品です!