恥ずかしさや怒りのあまり「顔が赤くなる」という表現は、英語でも日本語と同じように「Turning Red」と言います。そんな「Turning Red」を原題にしたディズニー・ピクサーの最新作が、『私ときどきレッサーパンダ』。ディズニープラスで独占配信されている長編アニメーションです。

中学生の女の子がモフモフのレッサーパンダに変身してしまうという可愛らしいストーリーなのですが、見た目とは裏腹に大人の心に刺さる作品になっています。

優等生が突然レッサーパンダに変身

主人公のメイは、13歳の中国系カナダ人。中学校では勉強に励み、放課後は家のお寺を手伝う真面目な女の子です。一方で、友人3人組と居る時はボーイズアイドルとかっこいい男の子の話に夢中になっているのですが、しつけに厳しい母親の前ではそれを隠しています。

ある日、思いつきで描いた男の子の落書きを母に見られてしまい、それがきっかけでメイはかなり恥ずかしい思いをすることに。ショックを受けた翌朝、メイが目覚めると、なんと大きくて赤いふわふわのレッサーパンダに変身していたのです!

果たしてメイの身体には何が起こったのでしょう?優等生のメイがレッサーパンダになった姿を見た両親と友人達の反応は?可愛らしくも奇想天外なストーリーで、思春期に誰もが経験する葛藤と感情の爆発を描いています。

思春期を思い出して恥ずかしくなる大人が続出?

これまで大人の視点からでも楽しめる名作映画を生み出してきたピクサー。そのなかでも『私ときどきレッサーパンダ』は、10代の頃にアイドルを推しいていたいわゆる「オタク女子」がターゲットとしてロックオンされているのではないでしょうか。

メイがベッドの下でにやけながら男の子との妄想を絵に描くシーンや、アイドルグループの推しをまるで自分の恋人のように友人と語るシーンは、多くの大人に思い当たるふしがあるはず。作品を見て、自身の思春期を思い出す大人が続出しているようです。

ちなみに作品の時代背景は、2003年のカナダ・トロント。この頃の中学生はまだスマホを持っておらず、メイは卵のような形の小さな育成ゲームを持ち歩いています。2000年代を感じさせる作品の世界観も、大人からの共感を呼んでいるのかもしれません。

女性リーダーたちによる革新的なピクサー映画

『私ときどきレッサーパンダ』の制作チームは、主要部署のリーダーたちが全て女性で構成されています。これは、ピクサー映画では史上初。革新的なチームの原動力は、今作で初めてメガホンを取ったドミー・シー監督です。

彼女はメイと同じ中国系カナダ人で、幼い頃から日本のアニメと漫画が大好きだったそう。監督のジャパニメーション愛は作画に活かされ、今作はフルCGでありながらも手描きのような柔らかいタッチとパステルカラーの風景が日本の80年代のアニメを連想させます。少女たちが推しを見ると目を大きくうるませて泣いてしまうという描写も、日本人には親しみやすいです。

また、キャラクターの設定やデザインにはスタッフの経験と価値観が投影されています。10代の子供の母親や妊婦、同性のパートナーと双子の赤ちゃんを育てる新米ママなど、多様性に溢れたメンバーが集まった制作チーム。だからこそ、登場人物たちをリアルに描くことができたのです。

メイのビジュアルはいわゆる「普通の子」なのですが、それも「ありのままの自分を受け入れられるように」とスタッフが意図的に設定したもの。普通の女の子が葛藤し、一喜一憂するからこそ、私たちは親近感を覚えて目が離せなくなるのですね。作品の詳細・視聴はこちら

さきこ

『私ときどきレッサーパンダ』は、子供向けかと思いきや、大人の心にグサッと刺さる今までにはなかったピクサーの意欲作。ディズニープラスでは、本編の他にも制作チームによるメイキング映像も見ることができます。映画館のように人目を気にする心配がないので、メイのように時には顔を赤らめながら、開放的な気持ちで鑑賞してみてはいかがでしょうか?