7月8日(金)から全国順次公開予定の松竹ブロードウェイシネマ『ザ・ウィローズ』を、一足お先に観てきました!試写会の様子をお届けします。なかなか足を運ぶことのできない舞台の本場、ニューヨーク。ブロードウェイの舞台を中心に傑作を、手頃な価格で、映画館でお届けするのが松竹ブロードウェイシネマです。過去に上映された作品の記事はこちら(『プレゼント・ラフター』『キンキー・ブーツ』)。

『メリーポピンズ』制作チームなど豪華クリエイター陣で待望のミュージカル化

ⒸMarc Brenner

イギリスの小説家ケネス・グレーアムの名作児童文学「The Wind in the Willows(原題)」が、『メリーポピンズ』の脚本家ジュリアン・フェローズと、音楽家ジョージ・スタイルズ、アンソニー・ドリューによりミュージカル化。本国イギリスで大好評を博しました。
本作は、ロンドン・パラディウムでの上演を特別に撮影、日本語字幕スーパー付きでの上映となります。

楽曲は『メリー・ポピンズ』や『ソーホー・シンダーズ』の作詞・作曲で知られる、音楽デュオのジョージ・スタイルズ(作曲)とアンソニー・ドリュー(作詞)が務めています。
モグラやアナグマそれぞれの個性溢れた巣穴の中や、本物のようなお屋敷といった豪華な舞台セットは、本作の脚本を務めるジュリアン・フェローズが制作に関わっています。

ⒸMarc Brenner

演出は、『オズの魔法使い』の芸術監督や『不思議の国のアリス』などの演出を務めるレイチェル・カヴァノー。シネマ版の監督には、2012年オリンピック開会式の映像監督を務めた、ティム・ヴァン・ソメレンが起用されました。

豪華なのはスタッフ陣だけではありません。キャストもロイヤル・シェイクスピアカンパニー公演作品から『アラジン』、『ピーター・パン』、『サウンド・オブ・ミュージック』などの名作に出演経験のある実力派俳優揃い。彼らが演じるのは、人間味溢れた動物たちです。

飽き性で新しい物好き。人間の本質を捉えたキャラクターに注目

カエルのミスター・トードは、お屋敷に住むお金持ちの御曹司。移り気で、新しいものが大好きです。特に“スピード”が大事で、より早いスピードが出るものに心惹かれており、今はレースボートを乗り回しています。飽き性で流行を追い求める人の特徴をよく捉えているキャラクター。

ⒸMarc Brenner

トードを筆頭に、動物たちはそれぞれ人間の様々な一面をよく表現しています。モグラのモールは心優しく、どんな時でも「友情」を忘れません。ネズミのラッティーは、しっかり者で、まとめ役。賢く物事を解決しようと、仲間を導いていきます。モールの仲間を大事に思う気持ちや、幼馴染のトードのことも気にかけていて、心優しい頼れる兄貴です。カワウソのミセス・オッターはいつも娘のことを心配しており、家族想いの強い母親として描かれています。

ある日、ミスター・トードのお屋敷に招待されたネズミのラッティーとモグラのモール。

好奇心旺盛なモールは、ミスター・トードが用意した馬車に大興奮。3匹で馬車に乗って旅に出ます。すると、ミスター・トードを狙う影が。森に住むイタチのチーフ・ウィーズルたちが、ミスター・トードの住むお屋敷を奪おうとしているのでした…。


一方ミスター・トードは、レーシングボートよりも、馬車よりも速い、自動車に心を奪われてしまいます。早速手に入れたはいいものの事故を起こしてばかり。そこで、ラッティーとモールは、博識なアライグマのバジャーに助言を貰いにいきます。

しかし全く聞く耳を持たないミスター・トード。さらに、カワウソのミセス・オッターが娘が帰ってこないと言い出して…!?ミスター・トード、ラッティーとモール、パジャーにミセス・オッターは降りかかる様々な危機を乗り越えられるのでしょうか。「仲間」たちも加わり、動物たちが繰り広げるスリリングな冒険の旅が待っています。

“どんな時も、友達は友達”。動物たちが伝える真っ直ぐなメッセージ

動物たちがメインのポップなデザインのポスターを見て、子供向けの作品のように感じていたのですが、実際に観てみると大人が充分に楽しめる、そして考えさせられる内容となっていました。

ⒸMarc Brenner

トードは、傲慢さから彼を助けようとしてくれた人から見捨てられてしまう場面も。それでも、モール、ラッティー、パジャーは「欠点があっても、それは一部に過ぎない。みんな欠点を持っているのだから、違う部分を見るのではなく、共通点を大切に。愛を信じて進もう」と歌い、手を差し伸べます。欠点があったとしても、その人の一面にすぎません。そして欠点は誰もが持っているもの。欠点があっても、周りから疎まれていても、友達を見捨てないことの大切さを改めて感じました。

ⒸMarc Brenner

また、モールは、故郷のあたたかさを教えてくれます。ラッティーとの冒険に夢中で、家に長い間帰っていなかったのです。久々に戻った故郷の巣穴に、“帰る場所”はここだと気づきます。巣穴の暖かさが照明などの舞台装置によって表現されていました。

人間社会では少し説教臭くなってしまう可能性もあり表現しにくいことも、動物たちの世界では、歌と踊りと共に真っ直ぐなメッセージとして届けることができます。子どもたちにもわかりやすく、大人たちにも刺さる、様々なテーマが物語の中に散りばめられていました。

また、物語は1年間の話。春が来た喜びを、身につけているマフラーやカーディガンといった冬服を脱ぐことで表現していたり、四季を通して変化していく動物たちの様子も必見です。

物語を彩る楽曲は、1幕2幕を通して、なんと25曲!

シネマ版だからこそ、舞台を上から映したり、後ろからや、キャストを間近から撮っていたりと、普段の客席からは観られない角度からの様子が見れるのが、松竹ブロードウェイシネマの魅力。なかなか足を運べない海外の公演を、こうして映画館でお手頃な価格で観ることができるのは有難いですね。

2022年7月8日(金)から東劇(東京)、なんばパークスシネマ(大阪)、ミッドランドスクエア シネマ(名古屋)ほか全国順次限定公開です。公式ホームページはこちら

ミワ

衣装や舞台セットがポップで豪華で惹きつけられました。あたたかな物語を夏休みに是非!