舞台作品を見ていて、忘れられない素敵なセリフに出会ったことはありませんか?思い出すと舞台の感動とともに人生の楽しさを教えてくれるような、耳と心に残ったセリフ。今回はミュージカル『夢から醒めた夢』より、作品のストーリーテラーである夢の配達人のセリフをピックアップしました。

「劇場は夢を創り出し、人生を映し出す大きな鏡です」

ミュージカルというと冒頭から既に物語が始まるものですが、『夢から醒めた夢』は夢の配達人の口上から始まります。その口上の1つが、「劇場は夢を創り出し、人生を映し出す大きな鏡です」。

夢の配達人と名乗る男性は、人々が寝静まると枕元に夢を配達する仕事をしています。彼は「夢は眠りの中にだけあるわけじゃない」と言います。観客が集まる劇場の中でも、夢は大きく膨らみ、花開くのだと。

「劇場は夢を創り出し、人生を映し出す大きな鏡です」というセリフには、私たち観客が舞台を通じて生きる力をもらっているのだと実感させられます。私たちは客席に座ってただお芝居を堪能しているだけではなく、登場人物に自らの意識を重ねて、一緒に喜んだり悲しんだりしているのです。

夢の配達人は、舞台上に一人の女優を召喚します。彼女は好奇心旺盛な少女・ピコの役を与えられ、人が目覚めているときには見えない超自然の世界、霊の世界で不思議な体験をします。観客は主人公のピコの肉体に自身の魂を重ね、『夢から醒めた夢』の物語を自分の人生としてたどっていきます。

劇場に優しさがあふれるミュージカル

『夢から醒めた夢』は霊の世界に興味があるピコと母親思いの幽霊の少女マコが織りなすハートフルな物語です。作品の原作は赤川次郎氏による児童文学なのですが、ミュージカルは大人も子供も楽しめるエイジレスな作品になっています。

その要因は、夢の配達人が言うように劇場が夢を創り出し、人生を映し出す大きな鏡の役割を担っているからではないでしょうか。マコを助けるために自分にできることは何でもする献身的なピコと、現世に残してしまった母を一目会って元気づけたいという家族思いのマコ。2人の少女の優しさは、劇場という大きな鏡に反射して私たちの心にキラキラと優しく輝きます。

何度見てもピコとマコのフィナーレのシーンは涙を誘い、客席からも鼻をすする音が聞こえてきますが、少女たちの優しさに自身の心を重ねたからこそ、私たちは優しくて温かい気持ちになれるのでしょう。

さきこ

夢の配達人の「劇場は夢を創り出し、人生を映し出す大きな鏡です」というセリフは、観劇する楽しさを教えてくれます。舞台は生身の役者が目の前で物語を繰り広げるので、物語をリアルに追体験することができるのです。それが楽しく、時には元気をもらったり救われたりするからこそ、「自分は観劇が好きなんだな」と実感させられます。